天然繊維のリサイクル革新的開繊技術に注目/新規加工技術なども活用
2026年06月22日 (月曜日)
世界的に繊維産業のサステイナビリティーが問われる中、リサイクル素材の普及は合繊を中心に急速に進んだ。一方、短繊維が中心の天然繊維は、紡績など工程の物理的要因もあってリサイクル原料の活用は一部にとどまっている。天然繊維のリサイクル普及に向けて、新たな加工技術の導入や従来とは異なる用途開拓が不可欠と言えよう。(宇治光洋)
天然繊維のリサイクルは、伝統的な手法である開繊・反毛による紡績が一般的だ。ただ、反毛は繊維長が短くなるため、リサイクル原料100%糸や細番手糸の紡績には限界がある。羊毛のような繊維長の長い繊維でも反毛は紡毛糸での利用が一般的だ。生産できる糸種や物性に限界があることが、天然繊維のリサイクル普及にとってハードルとなる。
こうした中、革新的な開繊技術によって繊維長を維持し、高品位なリサイクル綿糸を実現したのが、東洋紡せんいがインドの大手紡績と協力して商品化した「さいくるこっと」。リサイクル原料100%糸や細番手糸の紡績が可能で、品質も高い。
ここにきて注目が高まっており、採用も拡大してきた。既に欧米へのテキスタイル輸出に取り組む産地企業が採用を進めているが、加えて大手アパレル企業との取り組みも進む。大手アパレル企業が回収した使用済み繊維製品をインドに送り、さいくるこっととして再生して再利用するポストコンシューマー型の繊維to繊維リサイクルの実現を目指している。
天然繊維のリサイクル普及には、物性評価や鑑別方法などの標準化も欠かせない。現在、日本紡績協会がリサイクル天然繊維の標準化事業に取り組んでおり、2026年度中にはJIS化を実現させたいとする。JIS化の後は、国際標準規格(ISO)化も進める計画だ。
学術レベルでもリサイクル天然繊維の普及に向けた取り組みが進む。日本繊維機械学会は24年に再生糸普及委員会を立ち上げ、反毛を使った再生糸の総合研究「廃棄衣料由来の再生糸の開発と普及」を推進中だ。
これまで色糸製造方法や糸の物性、織物の物性や風合いなどの分析を進めており、今年5月には同学会年次大会で再生糸による編み地の温熱特性評価、再生糸による織物の洗濯特性と変化についての分析を行った。こうした取り組みによってリサイクル天然繊維の物性が正確に評価できるようになりつつある。
また、繊維長が短いため紡績が難しいリサイクル天然繊維に関しては、複合材料の強化材など新たな用途での活用が欠かせない。ただ、強化プラスチックの成形方法として一般的な射出成型は、射出段階で天然繊維強化材の破断が起こりやすく、必要な強度を出すのが難しいとされる。
この点でユニークな研究を進めているのが日本繊維機械学会の繊維リサイクル技術研究会。京都工芸繊維大学のデザインと建築を柱とする領域横断型教育研究拠点KYOTO Design Lab(D―lab)と協力し、3Dプリンターなどデジタルファブリケーション技術を応用することでリサイクル天然繊維を強化材として利用する成形手法を研究している。3Dプリンターは複雑な成形も可能だ。こうした特徴を生かし、リサイクル天然繊維を利用した楽器筐体(きょうたい)なども試作した。
リサイクル天然繊維の普及には、革新的な開繊・反毛技術、物性などの評価技術と標準化、そしてデジタルファブリケーションなど新技術を活用することで用途の拡大を図ることが欠かせないと言えよう。





