特集 サステイナビリティー(2)/東レ/「&+」で持続成長に貢献/さまざまつながりを生む

2026年06月25日 (木曜日)

 東レが展開するリサイクル繊維「&+」(アンドプラス)が広がりを見せている。販売面の拡大はもちろんのこと、参加型の取り組みの推進によってさまざまなつながりを生み出している。アンドプラスの輪をさらに広げることで、持続的発展が可能な社会の実現に貢献する。

〈資源循環のけん引役に〉

 アンドプラスは、回収されたペットボトルを利用したリサイクル繊維。ペットボトルの高度洗浄技術を持つ協栄産業(栃木県小山市)と連携し、高品位な原料の安定供給を可能にした。ここに東レの繊維生産技術を組み合わせることで、マテリアルリサイクルでは難しかった特殊な糸の生産ができるようになった。

 2020年1月に販売を開始し、販売数量は年を追うごとに着実に増加している。当初のラインアップは、リサイクルポリエステル繊維だけだったが、23年4月から回収漁網由来成分を一部使用したリサイクルナイロン繊維の販売をスタートするなど、繊維素材のラインアップを拡充している。

 用途も衣類が多かったが、遮熱・遮光・UVカット素材の「サマーシールド」にも用いられるなど、資材的な使われ方も増えてきた。東レは資源循環製品の売り上げを30年度までに3千億円に高める目標を立てている。25年度は約1800億円に達したが、アンドプラスがけん引役の一つになった。

 アンドプラスは、回収材料を利用した資源循環型リサイクル繊維だ。「回収ストーリーへの参加を促す取り組み」「トレーサビリティー」「高付加価値化」という三つの特徴を持っている。これらを反映していることがアンドプラスであると定義し、使用済み製品(ポストコンシューマー)の再利用も要件となる。

 当初は、25年度に500億円の販売規模への成長を計画していたが、「それを超える水準で推移」(繊維CE戦略室の白石肇室長)するなど、順調な動きを見せている。商品ラインアップの拡充に加え、「回収ストーリーへの参加を促す取り組み」としてのさまざまな活動がブランド認知の向上や販売拡大に一役買っている。

〈広がっていく輪〉

 回収ストーリーへの参加を促す取り組みの一つが、大学や服飾専門学校での環境関連の講義をはじめとする産学連携だ。文化服装学院は今年で3年目を数え、上田安子服飾専門学校も2年目になる。「未来の企業人に環境の重要性を伝える意義は大きい。卒業後に当社の展示会に足を運んでくれた人もいる」(白石室長)という。

 文化服装学院で行っている講義は、環境省も知ることになり、同省が講義に参加した。産学連携に官が加わり、つながりが大きくなっていく。

 講義だけにとどまらない。24年には学生からデザインを募集し、投票によって選ばれたデザインを採用した浴衣と風呂敷、シャツを制作した。生地にはアンドプラスを使用する。昨年は、アンドプラスと複合紡糸技術「ナノデザイン」を融合した生地に、学生のデザインを取り入れたウエアを作った。

 上田安子服飾専門学校との取り組みも深めている。このほど開催された学生によるトレードショー「第157回上田学園コレクションプレタポルテ2026」では、白石室長が審査員の一人を務め、「東レ資源循環デザイン賞」を贈った。同専門学校は独自の「UCFブランド」を展開しているが、アンドプラスを採用している。

 講義や授業の依頼はさまざまなところから入ってくる。アンドプラスを使って日本の伝統的な婚礼衣装である白無垢(むく)を作り、ショートムービーを制作した。ある女性から「自身の結婚式で着たい」と連絡が入り、東レは実際に白無垢を提供。結婚式は無事執り行われたそうだ。

 話はそこで終わらなかった。白無垢を着て挙式を行った女性から「環境教育の授業を一緒にやってほしい」と依頼が届く。女性は中学校教員だった。東レはこの依頼を快諾し、全校生徒に向けて環境学習を実施した。また、同校は体育祭で使用するハチマキをアンドプラス製とした。

 そのほか、24年に滋賀県立彦根東高校とニカラグアをインターネットでつないで環境学習に関する交流が実施されたが、東レも参加して意見交換を行った。湖に廃棄されたペットボトルを繊維化する実験装置の自作、アンドプラスの活動紹介などが行われた。

 アンドプラスをはじめとする東レの資源循環に賛同する学校や人は多く、白石室長は「さまざまなつながりができている。こうした輪はこれからも広げていく」とした。企業間の取り組みも同様で、川中・川下の顧客、リサイクラーを含め「チームとして強くしていきたい」と話した。

〈進展する高付加価値化〉

 アンドプラスの特徴の二つ目が、リサイクルシステムの信頼性を確保するトレーサビリティーになる。独自のトレーサビリティー付与技術を使用した「リサイクル識別システム」によってリサイクル原料使用の証明が可能であるほか、「GRS」(グローバル・リサイクルド・スタンダード)や「RCS」(リサイクルド・クレーム・スタンダード)といった第三者認証も取得している。

 第三者認証機関を講師に招いたセミナーも開催している。昨年に実施したセミナーは、東レ社内だけでなく、織物会社や染色・加工会社、リサイクラーなどにも参加を呼び掛け、オンライン視聴を含めると100人以上が参加した。今年も7月もしくは8月の開催を予定している。

 26年には東レ繊維事業における環境全体の取り組みの一つとして、繊維・アパレル業界のサステイナビリティーの向上に取り組む非営利団体「テキスタイル・エクスチェンジ」に加盟した。国内外の会員企業と意見を交換し、サステイナビリティーに関連する標準化やルール形成に参画する。

 三つ目の特徴である高付加価値化では、あらゆるステークホルダーとのパートナーシップを大切にし、高品質な回収材料を安定的に確保している。東レが持つ高い技術力を生かして高付加価値なリサイクル繊維を販売している。

 同社繊維事業の強みであるナノデザインとの融合が可能になっているほか、高感度な質感と吸水性を併せ持つ「セオアルファ」やサマーシールドなどにも用いられている。それら以外にもアンドプラスで作った高機能素材は増えており、今後さらに広がっていくとしている。

〈アンドプラスの未来〉

 アンドプラスの未来には、リサイクルアクリル繊維の展開も入ってくる。アンドプラスには組み入れていないものの、既にアクリル短繊維「トレロン」は、バイオマス由来特性や廃棄プラスチック由来特性などをマスバランス方式によって割り当てた製品の量産を開始している。

 白石室長は「アクリルはアンドプラスにはまだ入っていないが、三大合繊の全てで環境配慮の取り組みが進んでいる」とした。アクリルは混紡品も多く、アンドプラスの要件であるポストコンシューマーリサイクルのハードルは高いが、「どの素材も取り残すことがないようにしたい」と話した。

 回収ペットボトルの利用だけでなく、繊維to繊維の水平リサイクルも今後の大きな課題と捉えている。自動車内に敷くフロアカーペットマットの水平リサイクルの共同開発に乗り出しているが、衣料品の水平リサイクルはまだこれから。仕組み作り、モノマテリアル化を含めて取り組みを進める。