中国の「ライブコマース」/KOL発の中高級ブランド台頭/市場は成熟期へ移行

2026年07月03日 (金曜日)

 中国のライブコマース(映像生配信を使った商品販売)市場が、急成長期から成熟期へと移行している。KOL(キーオピニオンリーダー)頼みの“売る力”中心のモデルは転機を迎え、中高級アパレルではブランド主導の“作る力”が存在感を増している。こうした変化の中で、短納期対応を担うODM企業や、日本素材を活用した商品開発力が競争力の鍵となりつつある。

(岩下祐一)

 現在、中国版動画投稿アプリ「抖音」(ドウイン)の中高級レディースカテゴリーで上位を占めるのは、“主理人”(オーナー)型ブランドだ。代表格の王ファンファン(ワン・ファンファン)氏は、35~40代女性を対象にコートなど単価1千~4千元のブランド「MsLime」(ミズライム)を展開し、販売を伸ばす。「アレッサンドロ・パッチューチ」「我是摩羯」「ルーカス・エミリー・ルイ」「貴姐」(グイ・ジエ)、「マリウス」も好調で、いずれも月商1億元超とされる。

 ドウインは2020年にライブコマース主体の電子商取引(EC)事業へ本格参入し、24年にはGMV(流通取引総額)が3・5兆元へ急拡大。26年には5兆元に迫る見通しで、中国EC市場で京東(JD)を抜き、第3位に浮上した。

 市場拡大に伴い、ライブコマースの産業集積地も変化が生じている。メッカの浙江省杭州を核としつつ、コスト上昇を背景に一部は河南省鄭州へ移転。さらにビッグデータセンターを抱える貴州省貴陽にも行政支援を背景に集積が進み、拠点は多極化している。

 こうした新興ブランドを黒子として支えるのが、深センのアパレル卸売市場「南油市場」などを基盤とするODM企業だ。代表格の聯合拡展製衣〈深セン〉は高度な自社縫製工場を持ち、約2万着に及ぶ欧州ハイエンドブランドのサンプルアーカイブを開発の源泉とする。紅房子商貿は、日本やイタリアの高級素材を活用した商品開発を強みに、ECブランド向けODMで存在感を高める。

 ドウインで販売するアパレルのサプライチェーンを変えたのが、予約販売の「最長15日ルール」だ。従来は受注後に生産を始める「予約販売」が主流で、発送まで30~45日を要するケースも少なくなかった。ドウインは24年、出荷期限を最長15日に制限。事前に生地を備蓄し、受注後すぐ生産・出荷できる短納期体制が不可欠となり、対応力のあるODM企業への依存が強まった。

 また品質が安定し、国内在庫を持つ生地が不可欠となる。聯合拡展製衣〈深セン〉などでは、日本製のトリアセテートやウール、デニムを積極採用。スタイレム瀧定大阪の現地法人、時代夢商貿〈深セン〉など日系生地商社は、こうしたODM向けを伸ばしている。

 一方、ライブコマースのブランド間競争は極限に達している。高い返品率や広告費の増大で、多くの業者が収益化に苦しむ。

 こうした中、ODM企業の中にはあえてドウイン向けから距離を置く動きも出始めた。杭州の「Second Sunday」(セカンドサンデー)は、15日ルールでは「本物の服作りができない」(鄭暁平代表)と判断。欧州高級ブランド向けODMや自社ブランド強化へかじを切った。ライブコマース市場は成熟期に入り、競争激化の中で淘汰(とうた)が進む新たな局面を迎えつつある。