戦略眼 次の一手/村田機械 常務繊維機械事業部長 正井 哲司 氏/ボルテックスの生産倍増/FLconeを来年上市

2026年07月09日 (木曜日)

 村田機械の繊維機械事業は、エアジェット精紡機「VORTEX」(ボルテックス)が順調に伸び、自動ワインダーも世界トップシェアを堅持する。繊維機械事業の今期(2027年3月期)は、売上高1579億円で前期比45%増を計画。ボルテックスの生産能力を2倍に引き上げ、ボルテックスと自動ワインダーの合計で月産2万5千錘とする。正井哲司常務に繊維機械事業のポイントを聞いた。

 ――繊維機械事業の前期(26年3月期)はいかがでしたか。

 増収増益でした。市場環境は厳しくなるとみて臨んだのですが、期の中盤以降、主にボルテックスが伸びました。

 ――ボルテックスの状況は。

 特に中国市場が伸びました。トルコやインドも動いていますが、一部でリング精紡機を志向する動きも出ており、少しトーンダウンしています。素材は引き続きビスコース繊維が柱ですが、ポリエステルなども動いています。

 ――自動ワインダーはいかがでしたか。

 前期はインドが落ち込み、トルコも低迷しました。ただ、案件は増えていますので、年末に向かって増産計画を組んでいます。

 ――ボルテックスが好調な要因は。

 中国の内需は堅調です。加えて経済刺激策も打たれているので、ユーザーである紡績工場の状況も上向いています。そのような背景の中で、省エネ、省人化、省プロセスを狙いにボルテックスが導入されています。

 ――粗紡、精紡、巻き取りの3工程を1台で完結するボルテックスの特徴が評価されています。

 技術者が不足し、ワーカーも採用しにくいというのは世界共通の悩みで、省人化や自動化が重要なキーワードになっています。ボルテックスはプロセスを省略できるので、省人化につながります。リング精紡機に比べてメンテナンスも容易で、新規参入で紡績の経験が少ない工場にも扱いやすいとメリットを感じてもらっています。

  ――ボルテックスの生産能力を倍増させる計画です。

 加賀工場(石川県加賀市)で建設した第12棟が、これから貢献してきます。新しいラインは5月に稼働させましたが、これから徐々に生産を上げていき、秋にはフルで稼働する見通しです。

 ――繊維機械の基幹工場である加賀工場での今後の投資について。

 加賀工場の東側に土地を拡張し、パーツの自動倉庫を建設します。従来比2倍の規模で、28年ごろに稼働させる予定です。ボルテックスの拡大とともに在庫するスペアパーツも増えていきますので、将来を見据えた規模で建設します。

 また、将来的な拡張にも対応可能な構成としています。今は生産能力いっぱいの状況なので、30年、35年を見据えてどういう形にしていくのか、次期中計で検討していきます。

 ――ボルテックスの今後のポイントは。

 長繊維を使ったコアヤーンが伸びており、さらにビジネスチャンスを広げていきたい。また、リサイクルファイバーの取り組みが増えているので、そこへの対応も重要です。今は再生ポリエステルが中心ですが、その他の新しいサステイナブル素材についても、パートナーシップを増やしながら対応していきます。ユーザーからの期待が大きい綿100%についても、粛々と開発を進めています。

 ――中国以外の市場をどうみていますか。

 中国、トルコ、インドが三大マーケットですが、今後トルコがどうなるか。トルコからエジプトへという動きも出ているので、注視する必要があります。インドは大きなマーケットで、欧州の経済が回復すれば動きが戻るでしょう。バングラデシュやベトナム、ウズベキスタンなど期待できる市場はありますが、中国とインドが大きな市場である形は変わりないとみています。

 ――中国企業との競合について。

 自動ワインダーはこれまで高い世界シェアを維持していますが、直近では変動が見られます。世界トップシェアであることには変わりありませんが、中国がシェアを高めていることは脅威に感じています。自動ワインダーだけでなく、ボルテックスの市場でも中国からの新規参入が出てくるとみられます。

 中国企業がシェアを高め、欧州企業も価格攻勢を強めていますが、シェアの数字には固執しません。今後も次の開発をし続けていくには、しっかりと採算を確保することが必要です。われわれは価格競争には参入せず、メード・イン・ジャパンで機械の品質にこだわっていきます。

 自動ワインダーの「AIcone」(アイコン)は、上市してからも新しい機能を加えて生産性を高めてきたことが奏功しています。次世代機として23年の「ITMAミラノ」で披露したノンストップワインダー「FLcone」(ファルコン)も、来年の「ITMAハノーバー」での上市を計画しています。いろいろな特許を保有していますし、性能の優位性もあります。これからも新しい技術を打ち出し、それをスタンダード化していくことを続けるのが重要です。

 ――新規事業として取り組むCNT(カーボンナノチューブ)ヤーンの状況は。

 着実に取り組みが進んでいます。今後も用途の開拓に力を入れていきます。