ごえんぼう

2026年07月27日 (月曜日)

 「衣裏繋珠(えりけいじゅ)」という言葉がある。『法華経』にあるたとえ話で、男が友人の家で酒に酔い、眠り込む。友人は用事で出掛ける際、男の衣の裏に高価な宝珠を縫い付けておく▼男はそれを知らない。目覚めた後も各地をさまよい、食べる物にも困る暮らしを続ける。年月を経て友人と再会し、初めて衣の裏に宝があると知らされる▼宝珠は、誰もが持つ仏性の象徴とされる。人は尊い価値を身に付けながら、それに気付かず苦しむ。衣は単なる布ではなく、見えない価値を包み、守る器として描かれている▼繊維の世界にも通じる話だ。服には素材、加工、縫製、機能、作り手の知恵という見えにくい価値が縫い込まれている。2025年の国内衣類市場の輸入浸透率(数量ベース)は98・9%だった。価格だけでは測れない品質や技術を、いかに伝えるかが問われる。日本製衣料にも、まだ見過ごされている”宝珠”があるのではないだろうか。