2026年夏季総合特集(5)/事例研究/それぞれの情熱/彩ユニオン/WILLTEX/フェイズスリー
2026年07月28日 (火曜日)
〈マネキンの表現力を追求/彩ユニオン〉
彩ユニオン(京都市)は、展示器具やマネキンの製造・販売・レンタルを行う。和装マネキン事業者として1933年に創業した同社は、時代の変遷に合わせ展示器具や店舗設備まで事業領域を広げてきた。
近年は祖業であるマネキンの製造・販売の再強化を図っている。原点回帰により、企業としての独自色を鮮明に打ち出す方針だ。
その一環として、オランダの大手マネキンメーカー、ハンスブートのブランド「ハンスブートマネキン」の国内総代理店を務める。
同ブランドは、3次元(3D)プリント技術を駆使した製法や、使用後のリサイクルシステムをいち早く取り入れるなど、先進的な取り組みで知られる。
このほど日本で提案を開始したトルソー「AERA.」も、時代のニーズが反映された先端的な商品だ。内側の大部分を大胆にくり抜き外側のみを残した形状で、製作に使用する材料の量を大幅に減らした。
彩ユニオンは自社製作のマネキンについても、常に既存商品の進化や品ぞろえの拡充を行っている。
「ライフ」シリーズは「腕ポーズ」を交換することで、さまざまな日常生活のシーンを表現する。腕パーツに木腕タイプを加え、より自在にポージングを付けられるようにした。
人間の動きの再限度を追求した「ミーツ」シリーズを新規に立ち上げた。「腰掛けスタイル」を開発するなど、表現の幅を広げている。
マネキン市場はここ10年ほど、動きのないストレートポーズが主流を占めてきたが、自然体に近いポージングをそろえたシリーズを〝次世代マネキン〟として打ち出し、明確な差別化を図る。
〈「温度で人を守る」モノ作り/WILLTEX〉
酷暑や寒さなど、暮らしは温度に深く関わる。繊維・電化製品製造卸のWILLTEX(ウィルテックス、横浜市)は、「温度で人を守る」(木村浩会長)を事業の軸に、布製ヒーターを使った加熱バッグや特殊低温保冷剤を用いた暑熱対策ウエアを展開する。その歩みは、上田彩花社長によるヒーターウエアの開発から始まった。
上田社長は、息子の部活を応援する中で冬場の寒さを感じ、体を温めるウエアを作ろうと、生地に銀ペーストを塗って発熱させる布の試作を重ねていた。
2018年の展示会で首都高メンテナンス神奈川(同)の目に留まり、発熱布を用いた製品の開発が本格化。その後、三機コンシス(東京都江戸川区)の布製ヒーター技術「ホットピア」と出会い、同技術を事業化して世界へ発信するため、同年にウィルテックスを設立した。
設立当初は発熱する布のBtoB事業を伸ばしたが、新型コロナウイルス禍で商談機会が減り、自社製品の開発に転じた。純度の高い銀をメッキした糸で編んだ布製ヒーターを使い、レトルト食品や飲料を温められる加熱バッグ「ウィルクック」を開発。被災経験を通じて、「温かい食事の大切さ」を痛感した木村会長の思いも重なり、クラウドファンディングで販路を開いた。累計販売は5万点を超える。
取り組みは冷却分野にも広がる。アトム技研(愛知県岩倉市)が開発した特殊低温保冷剤と専用ウエアを組み合わせた暑熱対策商品を販売し、今年は70万個、28年には年間200万個の販売を計画する。暑さから人を守る装備として、幅広い分野への定着を目指す。
〈日本再参入に意欲/フェイズスリー〉
インテリア繊維製品や自動車用シート製造でインド最大手のフェイズスリー(ムンバイ市)を率いるアジャイ・アナンド会長は、日本市場を「再び戦略市場として位置付ける」との考えを示した。その一環で取締役副社長に日本人(近藤忠雅氏)も名を連ねる。
日印EPAの関税撤廃効果に加え、中国における繊維産業の縮小傾向、2日に発表された日印首相の共同声明で経済安全保障や経済成長の協力が確認されたことが背景にある。
同社は1982年創業。糸から染色、製品まで一貫生産する7工場の垂直統合が強みで、2026年3月期の連結売上高は約265億円。売上構成比はインテリアが7割、自動車用シート3割で、輸出比率は9割に上る。主力のバスマットは月産500万枚規模で米国向けが約6割。ウォルマートなど米国4大小売業から高級百貨店まで顧客は幅広い。
「品質、色、リードタイムを厳格に管理することで国際競争力を確保してきた」。こうした管理手法は日本向け輸出で培われたもので、1990年代までは売上高の約9割を日本が占めていた。中国やアセアンの台頭で日本向けは現在ゼロだが、「品質要求が世界で最も高い日本市場で鍛えられた経験は今も競争力の源泉」とし、米国に加え欧州(独、仏、北欧など)への輸出拡大、日本市場再参入を今後の成長戦略に据える。
繊維産業の縮小が進む中国企業からは、繊維機械売却の提案が相次いでおり、「今後10~15年でインドが中国に代わる主要供給国になる」と見通す。
遮光、防炎、PVC代替、自動車用エアバッグ布など高機能生地も強化。「ネットゼロは企業成長の必須要件」と、サステイナビリティー投資も加速する。「常に次を考える」経営哲学を基に、技術投資と事業拡大を継続する姿勢を示した。





