2026夏季総合特集Ⅱ(2)/部長インタビュー/東レ
2026年07月29日 (水曜日)
〈東レ 婦人・紳士衣料 事業部 部長 金子 有紀 氏/ナイロン軸に用途拡大/「長く着る価値」提案〉
――繊維・ファッション業界で最も注目しているホットな話題は。
サーキュラーエコノミー(循環経済)です。ファッション分野でのサーキュラーエコノミーは、アウトドア分野と比べると、浸透度は低いと言えるかもしれませんが、取り組まなければならない課題の一つです。繊維to繊維リサイクルは、ハードルは高いですが、対応は必ず必要です。
個人的な意見になりますが、衣料品を長く着ることがサステイナビリティーにつながっていきます。合成繊維は洗濯しても比較的へたりにくく、衣料品を長持ちさせやすい素材です。東レの素材で衣料品を作り、長期間着用してもらう。その視点を大切にしていきたいと思います。
――そうした話題に婦人・紳士衣料事業部はどのように関わっていますか。
ナイロンに関しては、自社で解重合ができる技術を持っていますので、ケミカルリサイクルが進んでいます。次のステップは端材や残反の活用をさらに広げることです。ポリエステルは他社との連携が必要な部分がありますが、婦人・紳士衣料事業部としてできることから取り組んでいます。
――事業を取り巻く現在の環境は。
中東情勢の影響が小さくありません。生産面では、コストが驚くほど上昇し、これまでに見たことがないような糸値になっています。ナフサ価格が落ち着いてきたとの報道もありますが、タイムラグがあるため現在のような状況が数カ月は続く可能性があるとみています。
中東への販売については4月ぐらいから荷動きが止まりました。6月ごろから動き始めましたが、完全には戻っていません。新規の受注も取りにくい状況が続いています。ただ、さまざまなことを考える時間が生まれました。新しい生地を開発し、提案につなげたいと思っています。
――そうした環境下で今年度の方針は。
前中期経営課題の3年間は、ポリエステルのスーティングを中心にビジネスユース市場で存在感を示してきました。販売にも寄与してきましたが、今後は東レの強みであるナイロン生地を前面に打ち出し、スーティング以外の用途の拡大を図っていきます。
ナイロン特有の質感を生かしながら、機能性を高めた生地を市場に投入します。具体的には、「ずっと触れていたい」と思うような生地に、撥水(はっすい)や耐退色性などの機能を付与します。先撚り仮撚り糸使いで独特の風合いを表現した生地などもそろえています。
――ナイロンは海外でも評価が高い。
海外の顧客も東レのナイロン素材は優れているという印象を持っていますので、輸出拡大もナイロンがポイントになると考えています。ただ、日本の企業から購入する意味や価値のある生地の提案が不可欠です。それが先ほどお話した感性と機能の融合になると思っています。
〈東レ ウルトラスエード 事業部 部長 中島 健太郎 氏/新しい価値を提供/非自動車の出口増やす〉
――繊維・ファッション業界で最も注目しているホットな話題は。
アニマルフリーの考え方を背景にした脱本革の流れに目を向けています。メゾン系やハイファッションが本革ではなく、人工皮革を選ぶ傾向が目立ってきましたが、本革は食肉加工の際に生じた副産物を原料としています。それを廃棄するのは環境に優しいのかという議論もあります。
本革には本革の価値があります。動物福祉に対する意識の高まりによって、人工皮革市場が大きくなると単純に考えることはできません。われわれが取り組むべきことは、人工皮革「ウルトラスエード」を進化し、新しい価値を顧客に提供することです。
――ウルトラスエードはどのように進化させるのですか。
銀面調の「ウルトラスエードヌー」を市場に出した時のように二段跳び、三段跳びのようにはいきませんが、もう少し銀面調に寄せた商品の開発もラボレベルで取り組んでいます。また、これまでのウルトラスエードとは異なるピッグスキン調の素材があっても良いと考えています。
――事業部を取り巻く環境は。
中東情勢が収束に向かってほしいという願望があります。原油価格やナフサ価格は一時期と比べると落ち着いていますが、ウルトラスエードはプロセスが長く、コスト的には今が一番苦しい時期と言えます。顧客に丁寧に説明し、理解を得ていくことが重要です。
――そのような環境下でどのような施策を進めますか。
ウルトラスエードの販売は、半分以上を自動車関連分野が占め、その中でも中国の電気自動車(EV)市場に偏っていた面があります。前の中期経営課題の3年間は中国EV市場の影響を受け、繁忙期と閑散期の差が大きくなりました。現中経では不確実性や変化に対応できる強くしなやかな体制の構築を目指します。
具体的には自動車関連分野の維持・拡大を図りながら、非自動車分野を増やしていきます。目を向けている非自動車分野の一つがコンシューマーエレクトロニクスです。ただし、この分野も変化は激しく、米国と東アジア、日本の三位一体となって拡販に取り組み、柱に育成します。
ファッション分野は、現在も高く評価されているメゾン系やハイブランドのアウター用途に加え、アスレジャーなどの用途も深耕します。新しい使われ方の探索も必要になるでしょう。インテリア分野は、天然皮革が使えない用途を中心に広げていきます。
――主力の自動車関連は。
偏重というリスクを回避することは重要ですが、引き続き自動車関連は注力分野です。中国のEVメーカーは整理が進み、EV市場にも磨きがかかってきました。メーカーや市場のニーズに対してしっかりとコミットし、勝ちパターンを作っていきます。





