2026夏季総合特集Ⅱ(3)/部長インタビュー/帝人フロンティア/旭化成アドバンス

2026年07月29日 (水曜日)

〈帝人フロンティア 執行役員 衣料素材本部長 東 政宏 氏/内外の製造拠点を連携/スポーツは北米軸に〉

  ――繊維・ファッション業界で最も注目しているホットな話題とは。

 一つは、4月ごろから顕著になっているコストアップでしょう。一部は落ち着いているのですが、染料・助剤は高止まりの状況が続いています。20~25%は上がっている印象です。ユーティリティーコストも高水準にありますが、天然ガスは下がり始めており、動向を注視しています。

 ただ、タイムラグがありますので、われわれのコストは大幅に上昇しています。このため価格転嫁が不可欠で、糸については顧客に説明を行い、価格改定を進めています。生地については交渉中です。

  ――販売面への影響は。

 あらゆる物の価格が上がる中、節約志向が強まっていると言われています。われわれの生地は高価格帯を中心に展開していますので、日常的な節約志向による需要の落ち込みは少なく、足元では物価高などによる買い控えの影響はあまりないと言えます。ただ、国内のユニフォーム関連は少し影響が出ています。

  ――衣料素材本部の話題は。

 先般、東京と大阪で開催したスポーツ展で紹介した新素材「ヌヴォレア」でしょうか。特殊な立毛構造を持ち、保温性と通気性、汗処理を兼ね備えています。アウトドア分野で、開発品として先行提案したところランニングや登山のインナー用途などで好評です。一部で採用が決まっています。

  ――2026年度(27年3月期)の重点方針は。

 衣料素材本部には、国内の帝人フロンティアニッティングとフロンティアテックス、中国の南通帝人、タイのタイ・ナムシリ・インターテックスという四つの製造拠点があります。それぞれが強みを持っていますが、十分な連携が取れていませんでした。今年度は各拠点をつなぎ、全体での成長を目指します。

 新しくバーチャルのグローバル会議体を立ち上げて開発や生産状況などを共有し、最適地での生産・販売を進めます。まだ始動したばかりですが、以前に比べると連携への意識が高まってきたと感じています。現在の中期経営計画の期間中に成果を出し、実組織化できればと思っています。

  ――新たな製造拠点の構築は。

 インドネシアでの織り・編み・染めの確立にも取り組んでいます。先行している編み物は既に量産へと入っており、着実に拡大します。織物に関しては今期末か来年にかけて量産体制に持っていきます。現在は協力工場を活用していますが、将来的には資本の投下も検討します。

  ――販売面では。

 スポーツ・アウトドア分野は、北米市場に加え、欧州の中規模ブランドの需要も取り込んでいきます。同時に中国市場にも目を向けています。景気停滞がささやかれる中国ですが、好調を維持しているブランドも存在しますので、チャンスはあると思っています。

〈旭化成アドバンス 取締役兼副社長執行役員 繊維本部長 橋本 薫 氏/価値認められるモノ作り/中国を市場として考え〉

  ――現在の繊維・ファッション産業で気になる点は。

 やはりコストアップでしょう。中東情勢の悪化で一段と厳しくなっています。原燃料価格の上昇に加えて委託加工先企業の加工料金も大幅に上昇しました。当社は産地企業との取引が多いのですが、当然ながら産地企業も大幅なコストアップに見舞われていますから加工料金の引き上げを求めています。これに対して当社は、ほぼ無条件で受け入れています。このため当社も価格転嫁を進めなければなりませんが、繊維のモノ作りにはどうしてもタイムラグが生じます。上半期(4~9月)に生じたコストアップを転嫁できるのは10月以降ということになってしまいます。

  ――どういった対応が必要でしょうか。

 委託加工なくして当社の繊維事業は成り立ちません。ですからコスト削減の方法を産地企業と一緒に考えていかなければなりません。同時に値上げができるような価値を認めてもらえるモノ作りが不可欠です。その意味で中国の脅威が一段と高まりました。中国は開発や商品化のスピードが速い。そのスピード感に負けないようにしなければなりません。すぐにまねされないようなモノ作りが必要です。その上で中国にも売っていく。中国を生産拠点ではなくマーケットとして重視しています。

 もう一つ注目しているのが中東市場です。現在は中東情勢の悪化で一時的に物流が停滞していますが、それまでは新型コロナウイルス禍明けからキュプラ繊維「ベンベルグ」がアバヤ(婦人向け民族衣装用織物)向けで販売が拡大していました。中東民族衣装用織物で再生セルロース繊維の人気が高まっています。また、ベンベルグに関してはアフリカ市場も可能性があります。既にイタリアのテキスタイルメーカーがアフリカ市場でベンベルグを使った生地で積極的なマーケティング活動を進めており、旭化成グループもこれに協力しています。

 今後は当社としてもアフリカ市場について積極的に取り組む必要があります。

  ――中長期的な戦略を。

 当社は今年10月に帝人フロンティアさんと統合し、TAフロンティアがスタートします。まだ営業部署間の話し合いは始まっていませんから具体的なことは言えませんが、個人的にも非常に期待が大きいですね。帝人フロンティアさんの繊維事業は衣料だけでなく産業資材でも大きな売り上げ規模があります。また、南通帝人のように中国でのモノ作りにも成功しています。

 一方、当社はスポーツ・アウトドアに加えてファッション衣料分野も得意にしています。両社の強みや取引先で重なる部分が少ないため、統合による相乗効果を発揮できると思います。その中で当社としては、やはりベンベルグをTAフロンティアにとっても大きな武器にしていきたいと考えています。