2026夏季総合特集Ⅱ(4)/部長インタビュー/クラレトレーディング/東洋紡せんい

2026年07月29日 (水曜日)

〈クラレトレーディング クラベラ事業部 衣料大阪販売部長 曽根 孝徳 氏/インバウンドが重要に/製品まで一貫生産で〉

  ――繊維・ファッション業界で注目している動きは。

 やはり中東情勢悪化によるコストアップです。原料や燃料の価格だけでなく、委託加工先の加工料金や薬剤などいずれも大幅に上昇しました。このため現在、値上げによる価格転嫁を進めています。

 もう一つは、当社はスポーツ・アウトドア分野を得意としますが、インバウンド消費がどうなるか。今のところ比較的高額な商品の売れ行きが鈍化していますが、値頃感がありながら機能性に優れる製品は売れ続けています。

  ――対応策は。

 主力顧客であるスポーツ・アウトドアブランドが海外での販売を拡大していますので、そこに向けた製品供給の強化が重要。特に東南アジアでの供給力を強化します。ベトナムには子会社のクラレトレーディングベトナムに自家縫製工場があり、供給力を高めてきました。中国でもクラレトレーディング〈上海〉と連携して現地でのマーケティング活動に力を入れています。現地アパレルへのアプローチも強めています。また、生産拠点がベトナム一本足でいいのかという問題もありますので、東南アジアを中心に生産拠点をどうするのかという模索も続けます。

  ――中東情勢悪化の影響は。

 原燃料価格が急騰した時点で既に今上半期(2026年1~6月)の調達や商談はある程度固まっていたのでそれほど大きな影響はありませんでした。その代わり、下半期に影響が本格化するため、対策が重要になります。まずは値上げによってコストアップの転嫁をお願いするしかありません。ただ、単純に値上げするだけでなく、例えば生地の販売先に対して縫製まで当社が担うことを提案するなど事業を高度化し、収益性を高める必要があります。学販体育服のように値上げが難しい分野では、生地を海外生産品に置き換えることも選択肢になります。国内は人手不足の問題もあり、生産キャパシティーが今以上に増えることはないでしょう。やはり海外供給力の強化が避けられません。

  ――中長期的な戦略は。

 縫製品までの一貫生産・販売を拡大するという基本戦略は変わりません。また、クラレ西条事業所(愛媛県西条市)でのポリエステル長繊維生産が今年12月末で終了し、社外での委託生産に切り替わります。これを契機に委託生産先企業との連携を深め、共同開発などを強化します。繊維部門に繊維統括マーケティング部も設置されたことで素材開発力を高めてきました。

 もう一つ重要になるのは、やはり人材育成です。3年ほど前から若手を積極的に海外に行かせるなどで経験を積ませてきました。従業員のエンゲージメントも高まっています。素材力、供給力、人材の三つが中長期的な成長に向けたポイントだと考えています。

〈東洋紡せんい/取締役 営業本部長 林 英昌 氏/規模ではなく利益率を/ハイゲージニットに期待〉

  ――現在の繊維・ファッション業界で特に注目していることは。

 日本でも繊維企業の統合など業界再編が加速していることでしょう。国内の繊維市場が縮小することで、なかなか単体では繊維事業を維持するのが難しくなっているためと考えられます。

 ただ、国内市場だけを見れば確かに縮小していますが、海外市場まで含めるとまだまだ拡大の余地があります。特にスポーツ・アウトドア分野は欧米に加えて中国や東南アジアの市場が広がっていますから、これをどうやって攻略するかが問われます。

  ――どのように対応するのですか。

 国内販売は収益力をどうやって高めるか。規模ではなく利益率が重要になります。効率化を進めなければなりません。その上で海外市場での新規開拓に力を入れる。素材面で衣料用途はニット化を進めます。ストレッチ素材が定番化したことで、ノンストレッチの織物が市場に受け入れられにくくなってきました。そこでハイゲージによる織物ライクな編み地を打ち出します。当社は既にシャツやスポーツウエア、ユニフォームで織物ライクなハイゲージニットを商品化しており、学生服でもニット製ブレザーを数年前から市場投入してきた実績があります。

 やはりメーカー系商社として糸などの素材と生地を軸にします。縫製品に関しては、縫製品OEMを得意とする商社やアパレルと取り組み、そこを通じて海外での糸・生地の供給拡大を目指します。これまで縫製事業だけだったベトナム子会社の東洋紡ビンズンも2025年に内販や貿易業務の現地認可を取得しました。ASEAN市場へのアプローチが可能になります。

  ――中長期的に目指す姿は。

 これまでの戦略を着実に実行していくこと。規模拡大ではなく利益率の向上が目標です。マテリアル事業はサステイナブル商材の拡販を進めます。

 新タイプのリサイクル綿糸「さいくるこっと」などが好評です。スクール事業は、学生服の将来的な需要減退が避けられませんから、患者衣や看護衣、介護衣などメディカル分野への参入を進めます。ユニフォーム・スポーツ事業はニット化を進めています。ポイントは46ゲージ以上のハイゲージと、ピンタイプ仮撚り糸であり、ユニフォーム分野で非常に好評です。スポーツ分野では、高密度ナイロン織物「シルファイン」に使うナイロン長繊維を活用した編み地「シルファインニット」を開発しました。こちらは透湿防水生地用途で期待しています。

 輸出織物事業は、中東情勢が落ち着くまで中東民族衣装用織物が厳しいですが、この間にブランド力をさらに高め、次世代のトーブ地の開発に取り組みます。産業資材事業は商社としてのアセンブリー機能が強み。これを強化し、さらに収益力を高めます。