2026夏季総合特集Ⅱ(5)/部長インタビュー/シキボウ/三共生興
2026年07月29日 (水曜日)
〈シキボウ 執行役員繊維部門繊維営業部長兼東京支社長 津田 隆 氏/新体制で繊維事業拡大へ/組織融合で価値高める〉
――繊維・ファッション業界で最も注目している話題は。
環境配慮への関心の高まりです。ユニフォームを中心に、植物由来ポリエステル「グリーンナチュレ」など、環境配慮型素材への引き合いが増えています。一般的なポリエステルも値上がりし、価格差が縮まったことで採用を検討しやすくなっています。
――その動きにどう関わりますか。
価格競争に入るのではなく、シキボウ江南(愛知県江南市)の後加工も組み合わせ、環境配慮型素材を価値のある素材として提案します。ワークウエアなどでの採用実績を生かし、カジュアル分野にも用途を広げます。
――繊維部門の新体制の強みは。
2025年12月にユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業を承継し、4月から各営業課にシキボウとUTC出身の社員を配置した新体制が始まりました。商材や顧客、生産機能について情報を共有し、互いの強みへの理解を深めながら営業効率の向上につなげています。
高遮熱素材「こかげマックス」など、当社になかった長繊維の機能素材と技術者が加わりました。短繊維を軸としてきた展開に長繊維の選択肢が広がり、提案力が高まっています。
第1四半期(4~6月)は売上高が計画通りに進み、利益は計画を上回る見通しです。採算性を意識した案件の選別が寄与しました。
――今期(27年3月期)の重点施策は。
繊維事業の拡大に向け、海外販売と高付加価値提案を強めます。中国、ベトナム、インドネシアなどの生産・販売基盤を活用し、アジアを中心に販売を広げます。
そのためには、国内と海外の連携に加え、海外拠点同士のつながりも欠かせません。7月末には海外拠点の担当者を日本に招いて、東京と大阪で社内展示会を開きます。各拠点の生産品目や販売機能を共有し、これまで培ってきた顧客基盤や得意分野を相互に活用することによって、地域を越えた案件の獲得につなげます。
中東民族衣装向け生地輸出は、3~5月に出荷が停滞しましたが、6月には出荷が進み、引き合いも徐々に増えています。不透明感は残るものの、10月ごろには例年に近い動きへ戻るとみています。
――商品面で力を入れることは。
複重層糸の展開に「パルパー」が加わりました。既存の「ツーエース」とともに開発を進め、吸水速乾性や形態安定性、耐久性を強みに、ユニフォームに加えて、スポーツやカジュアルにも用途を広げます。
織物中心に50種類以上の生機を収録した見本帳の刷新も検討しています。リードタイムの長い織物を生機で備蓄し、短納期での対応力を高めます。
コスト低減につながる設備投資も進め、付加価値提案と生産効率向上の両面から繊維事業のさらなる成長を目指します。
〈三共生興/繊維部門第8、9、10グループ ゼネラルマネージャー 若松 誠 氏/素材提案で広げる事業の可能性/既存OEMも差別化へ〉
――担当部署について。
繊維部門はOEMを主力事業とし、レディース、メンズ、スポーツ、アウトドア、雑貨、ライフスタイル関連と幅広いアイテムを扱っています。8・9・10グループは、ゴルフウエアを中心としたスポーツアパレル向けの事業を担っています。
――現在の繊維・ファッション業界で最も注目する話題とは。
猛暑が生活に大きく影響する中、〝衣〟の部分を担うこの業界も対策が迫られています。
実際、スポーツ分野では扱いが進んでいた機能性素材が、レディースのカジュアルなどにも求められるようになりました。この状況を受け、部署の垣根を越えて、機能性をいかにファッションに取り込むか、という施策に注力しています。
――具体的な取り組みとは。
〝課題解決型〟素材の提案を2027年3月期の重点施策に位置付け、本格的に取り組み始めました。このほど持続冷感素材「アイスドファブリック」を基軸に、独自性が高く気候変動に対応できる5素材を一斉に打ち出しました。
アイスドファブリックは、業務提携を結んだパートナーの特許技術から生まれた素材であり、そのパートナーとは協業による素材の開発、拡販を推進することで合意しています。
独自に行う機能性素材の提案は本腰を入れ始めたばかりですが、アイスドファブリックや芯糸に遮光ポリエステルを使った「コアベール」は、レディース向けのお客さまから好評を得ています。
接触冷感、遮熱、UV(紫外線)カット、吸水速乾と多機能を発揮する「フロズナイト」はスポーツアパレルに加え、マスクといった雑貨類にまで用途を広げ、新規顧客開拓につなげています。
これら猛暑対策に向けた機能性素材は、ペット業界でも需要が見込めますので、事業拡大の可能性は広がっていくと期待しています。
――素材提案に注力する背景について。
繊維部門の事業はOEMが9割を占めています。この偏った事業構成から脱却するため、OEMに続く事業の柱として素材提案を考えています。言わば原点回帰ですが、開発から携わることで独自性を出せる商材を持つことは、既存のOEM事業の差別化にもつながり、新たなビジネスチャンスも生まれます。
作る部分に関しては形になりつつあり、これからは出口戦略に意識を向ける必要があります。国内外の展示会への出展も一つの方法ですし、販売力を持つパートナーとの連携といった展開も生まれるかもしれません。
また、お客さまから集めた情報を素材の開発、生産に落とし込み、営業担当者にフィードバックするような仕組みを作らなければなりません。
こうした発想を持てたのも、課題解決型素材の提案を始めたためであり、独自の商材があれば事業の可能性が広がるのだと実感しています。





