全国テキスタイル産地特集Ⅰ(1)/環境悪化の中、模索続く/生き残れたのには理由がある

2026年07月30日 (木曜日)

〈北陸ですら軟調に/活況はデニムの三備のみか〉

 全国に散らばる生地産地のほとんどが今、苦境に立たされている。昨年まで堅調ぶりが目立っていた北陸産地ですら、好調だったアウトドア用途に一服感が漂うほか、カジュアルでの大型アイテムの海外シフト、中東民族衣装用の減速、ファッションやインテリアの停滞、自動車業界の減産などその他の分野も軟調となった。中東情勢の変化で原燃料価格は高騰し、人手不足の問題も続く中、需要量が減速しても安価で受けることは難しい状況にある。

 さまざまな産地から、こうした需要の減退だけでなく、経済の低迷が続く中国の生地が安価かつ大量に市場に出回ったことによる影響を嘆く声も聞かれる。

 全体として堅調から好調と言えるのは、岡山・広島にまたがるデニムの三備産地のみか。ファッションのデニムカジュアルトレンドが続いている上、日本製デニム、特にシャトル織機によるセルビッヂデニムが国内外で人気を博している。織布工場、染色加工場、製品洗い工場など関連工場のほぼ全てが年内までスペースを埋めており、各所で設備投資も進んでいる。

 しかし三備産地の活況はまれな例といえ、各産地は需要の減退、中国生地の流入に加えて人手不足による稼働時間の短縮、後継者難、資金不足による設備投資の停滞なども顕在化しており、取り巻く環境は悪化の一途をたどっていると言わざるを得ない。

〈活況や繁忙な工場も/特色ある工場が残る〉

 産地単位で捉えると三備以外に元気はないが、個社単位では踏ん張る例も多い。そうした産地企業は、そこでしかできない技術を持っていたり、圧倒的な納期短縮を実現していたり、商工連携で受注を安定させていたりする。相次ぐ廃業によって、残存する産地企業に注文が集中するという傾向も相変わらず続いている。

 滋賀県・高島産地の厚地織布工場、駒田織布(滋賀県高島市)にはここ数年、旺盛な需要を元に注文が舞い込んでいる。他産地の帆布織布工場が廃業を決めたため同社にその織物規格の製織依頼が流れてきた。できないもの、できたものがあったという。同社のモットーは「断らない。まずはやってみる」というもの。環境変化が繁忙を呼び込んだことは事実だが、この貪欲な姿勢も繁忙の背景にあることは間違いない。

 同産地では染色加工場の高島晒協業組合(同)もここ数年ずっと忙しくしている。産地内織布工場からの発注は漸減傾向だが、産地外からの仕事が増えている。「東京テキスタイルスコープ」(TTS)への単独出展で知名度が高まったことや、元々持つ晒し白度の高さといった技術力、産地でもまれてきた低価格への対応力などが繁忙を呼び込んだ。

〈商工連携を深化させよ/各所で設備投資が進む〉

 商社や生地商社、アパレルなど産地に発注する立場の企業にも変化が見られる。その外部要因の一つが為替だ。極端な円安によって、輸入ビジネスの利益率が著しく低下している。長引く円安を受け、国産に切り替えた発注者も多い。国産見直し機運は一部とはいえ、ある。その受け皿になり得る産地企業は限定されるかもしれないが、商工連携の重要性が叫ばれる今、商社が描くサプライチェーンの一員に選ばれ続けることは自社の持続可能性に直結する。

 もう一つの変化は、直接的な設備投資が増えていること。宇仁繊維(大阪市中央区)は古くから自社で購入した織機を播州や北陸の提携織布工場に貸与・敷設してきたし、子会社に染色加工場やプリーツ加工場を持つ。蝶理も「半商半工」を掲げながら、今後は特に「工」に焦点を当てるとし、ピン仮撚り機を北陸の提携工場に貸与したのに続き、生地や染色工程でも投資を検討する。

 スタイレム瀧定大阪同浪速区)も「日本のサプライチェーンを守ることと、日本ならでは、スタイレムならではのモノ作りを追求する」という方針の下、小塚毛織(愛知県一宮市)と合弁会社カナーレジャパン(同)を、シモムラ(石川県小松市)と合弁会社WS(同宝達志水町)を設立した。撚糸・タオル製造の浅野撚糸(岐阜県安八町)と戦略的パートナーシップを結び、新たな生地ブランドも立ち上げた。

 デビス(大阪市中央区)はインクジェット捺染(プリント)工場のリーフ(京都市)と戦略的パートナーシップ契約を締結し、デビスが保有していた両面同時プリントが可能な捺染機「エアダイ」と、顔料インクジェット捺染機「プレスト・マックスS」を新工場に移設・導入した。

 多くの商社の目は依然として海外で安く作ることに向いているが、「国産をないがしろにしていては事業が成り立たない」という危機感が醸成され始めているのも事実。時既に遅しとはせず、商工連携を深化させたい。