特集スポーツ&アウトドアウエア(2)/素材イノベーション加速/東洋紡せんい/旭化成アドバンス/クラレトレーディング/帝人フロンティア

2026年08月04日 (火曜日)

 素材分野では、機能性競争に加え、サステイナビリティーが市場を動かす最大の潮流となっている。激しい動きの際にも体に負担をかけないストレッチ性や厳しい環境下における耐久性、さらには資源循環システム構築を見据えた取り組みが求められている。

〈編み地の提案拡充/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいのユニフォーム・スポーツ事業部は、ピン方式仮撚り糸などを活用することで高付加価値な合繊編み地を拡充し、スポーツ用途に重点提案する。これら差別化生地を使用した縫製品の販売を拡大することでメーカー系商社のスポーツ事業としての立ち位置を一段と明確にする。

 同社のスポーツ事業は2026年度(27年3月期)から生地開発・販売をニットテキスタイルグループとして営業本部直轄としたうえで、縫製品などはユニフォーム事業と統合し、ユニフォーム・スポーツ事業部に再編した。25年度は国内工場の再編などでスポーツ事業も黒字化しただけに、今年度で収益基盤を一段と確実なものとすることがテーマとなる。

 そのために縫製品も自社開発した高付加価値な生地を活用した提案を軸に置く。ピン方式仮撚り糸「バウンザ」や透け防止・UVカット機能ポリエステル編み地「レイブロック」などの採用が拡大しており、特にアウトドア用途での販売拡大を狙う。

 ラグジュアリーブランド向けで豊富な実績がある高密度ナイロン織物「シルファイン」で使用する糸を活用したハイゲージ編み地「シルファインニット」も新たに投入する。また、環境配慮の取り組みも一段と重要になっていることから、縫製工程で発生する端材などをリサイクルする「T2T」をスポーツ分野にも導入する準備を進める。

〈強撥水タイプを開発/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスの機能衣料事業部は、スポーツ・アウトドア向けに主力の高密度ナイロン織物「インパクト」シリーズを軸にした提案を進める。欧州での環境規制強化への対応も進める。

 2026年度第1四半期(4~6月)のスポーツ素材販売は国内外ともに計画通りに推移したもよう。主力のインパクトシリーズが販売をリードした。このため下半期(26年10月~27年3月)に向けてインパクトシリーズを軸に提案を進める。特に透湿防水生地「インパクトΣ」は強撥水(はっすい)タイプも新たに開発した。PFASフリーでありながらブンデスマン法試験で4級の撥水性能を実現している。

 また、ポリエステル長繊維編み地「張衣」(とばり)も重点提案する。通気性、遮熱性、UVカット機能を併せ持ち、学販体育服向けで豊富な実績がある。これをスポーツ・アウトドア用途にも広げる。

 欧州市場では8月からは欧州連合(EU)の「EU包装規則」(PPWR)の適用が始まる。企業はEU域内で流通する商品の包装のリサイクル性確保や種類・使用量の最適化、情報管理整備、輸送用梱包(こんぽう)材の再利用目標への対応などが課せられる。こうした動きへの対応を急ぐ。

〈評価高まる独自素材/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングのクラベラ事業部は、スポーツ分野に向けても独自素材を積極的に提案する。得意とするラケットスポーツ用途で採用も始まるなど評価も高い。海外市場の開拓も重視し、国際的な展示会などにも積極的に参加する。

 2026年度上半期(1~6月)は主力のスポーツ用途の製品販売が堅調に推移したもよう。アウトドア分野は吸水速乾・UVカット機能ポリエステル素材を軸に順調に拡大。ラケットスポーツ分野も速乾性とドライ感に優れるシンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」が新規採用されるなど独自素材への評価が高まる。

 下半期は、中東情勢悪化に伴うコストアップの影響が本格化することから、価格改定による転嫁がポイントとなる。その上で引き続きスポーツ・アウトドア分野を中心にエプシロンなど独自素材の提案に力を入れる。海外市場の開拓を重視し、9月には中国・上海で開催される機能素材の国際展示会「パフォーマンスデイズ」に出展する。エプシロンなど独自の機能素材を中心に日系企業や現地アパレルへ提案し、新規取引の獲得につなげる。

 また、今年末でクラレ西条(愛媛県西条市)でのポリエステル長繊維生産を停止し、社外での委託生産に切り替えることを受け、委託生産先企業と連携を深め、海外アパレルに向けた共同開発・提案にも力を入れる。

〈素材力で存在感示す/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、素材力という強みを生かし、スポーツ・アウトドア分野のグローバル市場で存在感を示している。展開商材の差別化と幅の広さには自信を持ち、27秋冬向けでも特殊な立毛構造を持つ「ヌヴォレア」を開発した。

 同社のスポーツ・アウトドア向け生地は、国内のほか、北米を中心とする海外でも高評価を得ている。現在は軽量保温の「オクタCPCP」、汗処理機能に優れる「カラットX」などの販売が拡大しているほか、高質感・高撥水(はっすい)の「ポリリズム」などの採用が増えている。

 ヌヴォレアは、地組織部に低捲縮(けんしゅく)糸を、中間結節部にかさ高捲縮糸を使ったダブルラッセル生地をベースとする。中間結節部の糸を切ることで、空気を多く含む均一な粒状の立毛構造を作り、機能性、ウオームタッチ、エアリーな外観を実現した。

 この立毛構造は、高捲縮で均一なため物性が安定し、着用耐久性に優れる。再生ポリエステル原料が使用できるなど、環境にも配慮する。起毛ではないため繊維の抜け落ちが少なく、海洋へのマイクロプラスチック流出の抑制につながる。