特集安心・安全(3)/難燃・防炎/安全性と快適性を両立/クラボウ/村上被服/ミツボシコーポレーション/シキボウ

2026年08月06日 (木曜日)

 厚生労働省の2025年労働災害発生状況によると、「高温・低温物との接触」による死傷者数(休業4日以上)は4326人に上った。現場の安全意識が高まる中、火花の飛散や予期せぬ引火に備える難燃・防炎ウエアの重要性が増している。通気性やストレッチ性などの機能を付与し、着用時の負担を抑えながら安全性と快適性を両立する素材の開発が相次ぐ。

〈難燃生地の販売拡大/多彩な機能でニーズ捉える/クラボウ〉

 クラボウは、モダクリル・綿混中心の素材難燃「ブレバノ」と、綿100%中心の後加工難燃「プロバン」の販売を拡大している。難燃性に高通気やストレッチなどを組み合わせた生地を展開し、現場ニーズに応じたラインアップをそろえる。暑熱リスク・体調管理システム「スマートフィット」の展開を通じて現場課題を捉え、最適な素材提案で需要を取り込む。

 労働現場で安全意識が高まる中、難燃生地の採用が広がっている。ブレバノは、高通気・ストレッチ「ジェットエアー」や高制電「エレアース」を組み合わせた複合品が好調に推移。溶接作業用途に最適なプロバンでも、ストレッチなど機能を加えた素材が受注を伸ばしている。

 ブレバノを用いたインナー向けの丸編み地も提案し、内側に着る衣服にも難燃性を持たせることで、作業者の安全性を一段と高める。同社とリベルタ、今治造船(愛媛県今治市)、ハイドサイン(東京都中央区)の4社は、難燃性と冷感機能を両立したインナーウエアを共同開発しており、来年から今治造船グループ内での本格導入を予定する。

 作業者の暑熱リスクを可視化するスマートフィットは、6月時点で230社・1500カ所以上の現場で導入が進む。同システムの展開を通じて、顧客からユニフォームに関する相談を受ける機会も増えてきた。担当者が実際の現場を訪れて最適な素材や製品を提案し、難燃素材をはじめとする生地の拡販につなげる。

〈難燃アイテムが充実/トータルコーディネートも可能/村上被服〉

 ワークウエア製造卸の村上被服(広島県府中市)は難燃・防炎加工を施した綿100%のワークウエアをそろえる「HONO」(ホーノー)の商品ラインアップの拡充を図っている。作業服や電動ファン(EF)付きウエアに加え、溶接帽、腕カバーなど周辺アイテムも充実しており、トータルコーディネートも可能だ。村上泰造社長は「作業服メーカーとして、特化型の商品を作っていく」と話す。

 難燃アイテムは5年ほど前から展開する。鉄工所関連を中心に採用されている。

 物質の燃えにくさを示すLOI値の高い商品をそろえる。26秋冬では、裏フリースを採用した難燃ブルゾンとカーゴパンツを投入した。

 LOI値は数値が高いほど燃えにくく、26以上で防炎性を持つとされる。同商品は32・8を確保した。併せて、火炎伝ぱ性、耐熱性、放射熱、帯電防止など各種性能基準もクリアする。フリースの保温性と難燃性の両立によって、寒冷下でも快適な作業をサポートする。

 エプロンとパンツが一体化した難燃エプロンパンツは、足元まで守ることができるアイデア商品だ。26秋冬ではこのほか、ベルトや難燃面テープを採用した脚半なども追加したほか、腕カバーや足カバー、シャツやブルゾン類には新色として黒色を加えるなど、難燃アイテムの幅がさらに広がった。村上社長は「今後もユーザーの要望を聞きながら、ニーズに合う商品を出していきたい」と語る。

〈安全守る服飾資材をラインアップ/耐熱樹脂ホックなど/ミツボシコーポレーション〉

 服飾資材商社のミツボシコーポレーション(広島県福山市)は、作業者の安全を守るユニフォーム向けで、高機能な服飾資材を開発し、提案、供給している。

 販売が広がっている商品の一つがナイロン製の耐熱樹脂ホックだ。小さな炎に触れたときの燃え広がりやすさを調べる耐炎性試験(火炎伝ぱ性)の規格、ISO15025のA法(表面着火)に適合する。

 燃え広がりにくい素材・設計を採用した難燃作業服は鉄鋼や鋳造、造船など、火花やスパッタ(溶接時に飛散する微細な金属粒子)が発生する現場で着用される。金属製のものを使用することが多いホックだが、難燃作業服には同社の製品のような耐熱性能を持つホックが採用される。作業環境によっては作業服の劣化も早いことから、「リピートも多い」(中塚一夫社長)という。

 安全性を意識した商品として、静電気の帯電を防止する炭素でできた糸を織り込んだベルトもラインアップする。人体に帯電した静電気による引火で火災を引き起こす恐れのあるガソリンスタンドなどで採用があり、「結構売れている」。

 再帰性反射材の品ぞろえの豊富さも同社の強みだ。高視認性作業服向けに、通気性とデザイン性を高めた再帰性反射材のほか、薄型かつ軽量なガラスビーズを使用したリフレクターなども用意する。

〈難燃と高視認素材の提案強化/現場の安全へ選択肢広げる/シキボウ〉

 シキボウは、ユニフォーム向けに安全性や保護機能を備えた高機能素材「プロテクサ」シリーズの提案を強化する。昨年12月にユニチカトレーディングの衣料繊維事業を承継し、難燃性素材と高視認性素材がラインアップに加わった。用途や作業環境に応じた提案で顧客の選択肢を広げ、働く現場の安全性向上につなげる。

 難燃性素材「プロテクサ―FR」は、難燃ビニロンと綿の混紡糸を使い、安全性と快適な着心地を両立する。燃え広がりにくく、自己消火性に優れるほか、洗濯耐久性や耐薬品性を備える。衣服が接炎した際も溶融せず炭化するため、皮膚に融着しにくく、やけどのリスクを軽減する。合繊の中でも吸水性・吸湿性に優れるビニロンと綿を組み合わせることで、発汗時も快適に着用できる。

 作業者の存在を知らせ、事故防止につなげる高視認分野の提案も強める。高視認性素材「プロテクサ―HV」は、長繊維使いのほか、長繊維と短繊維を組み合わせた生地も扱う。

 蛍光イエローと蛍光オレンジを中心に展開し、高視認性安全服に関する国際規格「ISO20471」、欧州規格「ENISO20471」、日本産業規格「JIST8127」の基準をクリアする。生地、製品の双方を供給し、道路整備関係など視認性が求められる現場で採用実績を持つ。

 高遮熱性クーリング素材「こかげマックス」など長繊維の機能素材も拡充し、安全性と快適性を高める提案で働く現場の多様なニーズに応える。