特集安心・安全(4)/東レ/作業現場にもたらす/高通気で快適性実現

2026年08月06日 (木曜日)

 東レが販売する「LIVMOA」(リブモア)は、先端技術を生かした使い切り型の防護服だ。「作業者のことを考えて開発した商品」(機能製品事業部特需課)で、高通気による快適性と安全性を両立した。地球温暖化の影響で夏の作業現場は過酷さを増しており、防護服のクールビズを提案する商品として期待される。

〈熱中症対策にも貢献〉

 防護服は、製造工場や食品加工場、建設現場をはじめとするさまざまな場所で着用され、有害な粉じんなどから作業者を守る。防護服の需要は、感染症拡大時などの非常時を除けば安定しており、メーカー間のシェア争いは激しさを増している。

 防護服は、フラッシュスパン不織布やフィルムラミネート不織布などを使用したタイプが中心になっている。これらは気密性に優れている一方で、通気度が低いという側面も持つ。このため夏季の高温多湿な環境下では防護服内の温度が上昇し、汗による蒸れも手伝って着用者の負担は小さくなかった。

 地球温暖化の影響もあり、夏季の気温は年々高くなり、暑い期間も長くなる傾向が見られる。こうした流れを受け、2025年6月には改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策の実施が義務化された。防護服にも暑熱対策が求められるようになった。

 東レが2017年に販売を開始したリブモアは、「日本の気候や作業環境、着用者のことを考慮して作った」(特需課〈防護服グループ〉の丹羽慶樹氏)。高通気が特徴で、「リブモア3000」は1平方メートル当たり1秒間に96立方センチの空気を通しながら、防じん性を併せ持つ。そのほかに、耐水性と通気性、耐油性と通気性を併せ持つアイテムも展開している。

 ただ、17年の市場投入後すぐに受け入れられたわけではなく、浸透には一定の時間がかかった。認知度向上に加え、熱中症対策の義務化も追い風となり25年度(26年3月期)は前年を上回る販売となった。26年度も増販を計画するが、「4~6月は各月とも前年同月を上回っている」(府上忠機能製品事業部長)という。

〈先端素材が機能発現〉

 防護服に求められる性能は、日本産業規格(JIS)によって六つのタイプに分けられている。このうちタイプ4(スプレー防護)とタイプ5(粉じん防護)、タイプ6(ミスト防護)は、JISが定める防護服性能を確保した上で、通気性など着用者の負担を軽減する機能が要求される。これに応えたのがリブモアだ。

 リブモア高通気タイプは96立方センチという高い通気性を持つ。衣服内に有害な物質が侵入するのを防ぐ防護性能を発現しながら、これまでの防護服では実現が難しかった高いレベルの通気性能はどのようにして生まれたのか。

 答えは東レの先端素材である「トレミクロン」の活用にあった。トレミクロンは、ポリプロピレン(PP)の極細繊維からなるメルトブロー不織布(MB)で、繊維1本1本に特殊な方法でエレクトレット(電石)機能を付与して、不織布内部と外部に強力な電界を作っている。

 リブモア高通気タイプは、エアフィルター用途でも実績があるこのトレミクロンを、PPスパンボンド不織布(SB)で挟み込んだ3層構造の基布を採用している。トレミクロンを帯電層とすることで、空気を通しながら目に見えない浮遊粉じん(サブミクロンサイズの微粒子)から比較的大きな粒子まで広く吸着する。

 特殊な耐水層を挟み込んだ耐水圧タイプや耐水・耐油タイプなどもラインアップに加えている。これらは耐水圧と通気性を両立した商品であり、廃棄物処理現場や製造設備の定期修繕作業をはじめとする水を使用する作業現場で着用することができる。

 現在は、高通気ハイスペックタイプの「3000」(タイプ5適合)、高通気スタンダードタイプの「2000」(同)、耐水圧高機能タイプの「4000AS」(タイプ5、6適合)、同シームテープ付きの「4500AS」(タイプ4、5、6適合)、耐水圧スタンダードタイプ「1000AS」(タイプ5、6適合)、耐水・耐油の「4300AS」――を展開している。

〈難燃タイプも開発〉

 新商品の開発も進んでいる。それが難燃タイプの「リブモアFR」だ。素材には難燃加工不織布(ポリエステル/パルプ系)を使用しており、火元から離れると生地が自己消火するほか、燃え広がらず溶融しにくいのも特徴。通気度は1平方メートル当たり1秒間に20 CCを確保した。

 背中にランヤード(墜落制止用器具)を出し入れする上下開閉式のファスナーを備える。フルハーネス型を装着したまま着用でき、仮置き用ランヤードフック掛けも付けた。従来は防護服の上からハーネスを装着していたためハーネスが傷みやすいという課題があったが、新製品はこれを解消する。

 袖のずり上がりを防ぐ指ゴム、しゃがんだ時に突っ張りにくい股マチといった工夫も施している。フルハーネス型を着用しない場合でも使用できる。難燃作業着との併用で効果を発揮する。L、XL、2XL、3XLを用意する。

 まずは特定業界での浸透を目指し、徐々に一般販売へと拡大していく考えだ。

 また、リブモアシリーズは、冷却ベストとのセット提案を開始するなど、販売方法にも工夫を加えている。

 今後の課題はリブモアブランドのさらなる認知度向上にある。専用サイトでの情報発信や展示会出展などを継続する。先日、東京都内で開催された「第12回猛暑対策展」にも出展した。ブースには多くの来場者が訪れ、「認知度はまだまだ」(丹羽氏)としながらも、一定の手応えを感じている。

 将来的には海外市場も視野に入れている。地域ごとの市場特性やパートナー確保などの課題もまだ多いが、府上部長は「海外に進出している日系企業への提案から始めたい」と話している。