日本労働科学学会/労働理想主義を再評価/クラボウ本社で年次大会
2026年08月13日 (木曜日)
日本労働科学学会はこのほど、第7回年次大会をクラボウ本社(大阪市中央区)で開催した。「サステナブルな経営と労働科学―百余年前の『労働理想主義』から『人的資本経営』へ」をテーマに、クラボウの第二代社長である大原孫三郎が実践した「労働理想主義」を再評価し、現在のサステイナブル経営や人的資本経営の源流として多面的に検討した。
今回の大会テーマに関して同学会の綱島康高大会実行委員長(クラボウ社友)は、「サステ経営とは、企業を中心としたものから人や社会の持続性を目指すものへと変わりつつある。そうした中、大原孫三郎が労働理想主義として掲げた『人道主義』『労力非商品主義』『資本と労働の調和』は、現代の『人的資本経営』や『サステ経営』ともいえる」と狙いを説明する。
大会では、クラボウの藤田晴哉会長もあいさつに立ち「大原孫三郎は倉紡中央病院(現・倉敷中央病院)、倉敷労働科学研究所(現・大原記念労働科学研究所)、大原社会問題研究所(現・法政大学大原社会問題研究所)、大原美術館を設立するなど時代に先駆けて社会貢献活動を実践した。『労働理想主義』は、現在もクラボウの経営理念の基盤となっている。人を大切にし、人の成長や幸せが企業の成長につながるという考え方は、人的資本経営の原点」と話した。
基調講演として、繊維産業史・企業史研究の第一人者である大阪大学の阿部武司名誉教授が「大原孫三郎の〝労働理想主義〟にみるサステナブル経営の原点」と題して報告した。阿部氏は大原孫三郎の実践を紹介しながら、特に従業員にクラボウの株式を保有させていた点に注目する。当時のカネボウのように経営者が労働者を先導する家父長的な「経営家族主義」と異なり、大原孫三郎の労働理想主義は労使を対等と見る点で現代の視点に達していたと評価した。
そのほか、シンポジウムも実施し、繊維業界からは全日本短繊維紡績協同組合の木村嘉宏監事やグンゼの平岡真澄人事総務部シニアエキスパートが参加し、「サステナブルに働ける会社・人を支援する」をテーマに討議した。一般演題では、社会科学だけでなく自然科学や歴史学の研究者、実務者による労働科学に関する研究報告がなされた。
労働者の安全や健康を守り、労働環境を改善するための方法論を科学的に研究する「労働科学」の歩みは、1921年に労働科学の創始者として知られる暉峻義等(てるおか・ぎとう)の助言により大原孫三郎が倉敷労働科学研究所を設立したことに始まる。こうした縁から、年次大会をクラボウ本社で開催することになった。





