特集 スクールスポーツウエア(1)/需要変化捉えた開発へ
2026年08月20日 (木曜日)
スクールスポーツウエア市場を取り巻く環境が変化している。猛暑への対応や機能性向上への需要が高まる一方、原材料価格の高騰によるコスト負担も増している。メーカー各社は、素材提案やブランド力を生かした商品開発を進め、新たな需要の掘り起こしを図る。
〈変化する体育衣料需要〉
スクールスポーツウエアにまつわる事業環境が変化しつつある。変化を促す要因の一つが、常態化する夏の暑さだ。最高気温35℃以上の「猛暑日」は、1990年代以前は都市部でも珍しい現象だった。2000年代以降になると、猛暑日が全国各地で頻発。近年では、40度以上の「酷暑日」も観測されるようになった。
一部の学校では、登下校時に体操服の着用を許可するなどの対応を進める。制服の選択肢の一つとして、ポロシャツやハーフパンツを導入する学校も増えており、スクールスポーツウエアのラインアップから採用する事例も少なくない。
スクールスポーツウエアに使われる素材は技術革新が進み、通気性や伸縮性、吸湿速乾、遮熱、紫外線防止などの暑さ対策につながるさまざまな機能を備えるようになり、これを活用する動きが加速している。
体操服のトレンドも変化している。以前は、厚みのある生地で綿の混率が高く、ゆとりあるシルエットが主流だった。近年のスポーツウエアの進化に伴い、体操服も薄くて軽く、伸縮性の高い素材が採用されるようになった。
素材以外にも需要の変化は起きている。従来、体操服では刺しゅうなどによる個人名の記入が一般的だったが、登下校や校外活動でも着用されるようになると、防犯上の理由から表側に名前を入れることが少なくなった。名入れを担う刺しゅう加工工場の減少も、名入れ需要の縮小に拍車をかけている。
昨今の物価高を受けて学年色の採用も減少している。“おさがり”をしにくくなることに加え、生地の生産ロットが分かれるため全学年同じ色に集約する動きが加速している。
〈原材料高騰の影響必至〉
中東情勢の緊迫化などを背景に、原油由来の材料価格が高止まりしている。いわゆる「ナフサショック」の影響が、ナフサを原料とするポリエステルを多く使用するスクールスポーツウエアにも及んでいる。
原材料価格は、新型コロナウイルス禍を上回る上昇幅との見方が出ている。品目によってばらつきはあるものの生地は約10%、服飾資材は30~40%の価格上昇が進んでいるという。
スクールスポーツウエアメーカーとしては、コロナ禍からの需要回復期に、ロシアによるウクライナ侵攻や原油高、円安などが重なり、原材料高を受けた値上げがようやく一段落しそうなタイミング。価格情勢については、難しいかじ取りを求められる中、中小メーカーの一部では、やむを得ず今年から即時値上げを実施する事例もあった。
各社、生産性の向上などのコスト削減努力を加速させる一方で、早くて27年度から、遅くとも28年度から値上げに踏み切る可能性が高まっている。
〈変化が活性化の契機に〉
需要や原材料価格の上昇といった事業環境の変化が、スクールスポーツウエア市場の活性化の契機となる可能性もある。
制服のブレザー化に伴うモデルチェンジ(MC)が都市部を中心に一段落しつつある中で、次の活性化として各社はスクールスポーツウエアのMCに注力する方針を打ち出す。
制服と比べ、短いサイクルでMCが行われることが多いスクールスポーツウエアでも、中には20年以上にわたり同一の体操服を採用している学校もあり、機能性が向上した素材への置き換えが進むとみられる。
素材メーカーは、原材料の高騰を受けて糸や生地の集約を進めているため、廃番となった生地を採用している学校に対して、新たな素材への置き換え提案も増えている。
暑熱対策としてラインアップに追加されるポロシャツやハーフパンツによる売り上げ拡大も見込まれる。
〈独自性高め採用校拡大へ〉
大手学生服メーカー各社は変化する需要に対応した商品開発に注力し、市場活性化につなげる。独自ブランドと知名度の高いライセンスブランドを武器に需要を取り込み、採用校の拡大を目指す。
スクールスポーツ市場で高いシェアを持つ菅公学生服は、「カンコー」ブランドの提案に引き続き注力する。紫外線防止や透け防止などの機能を備えた素材「ミエンヌ」など、機能素材を訴求する。ライセンスブランドでは「リーボック」を展開。部活動用のウエアとしても利用できる商品開発に注力し、採用拡大を目指す。
トンボは、昇華転写プリントによるデザイン提案力を強みに販売を広げている。自社ブランド「ビクトリー」は、デザインを自由に表現できる昇華転写プリントが評価され、採用校の増加につながった。ライセンスブランドの「ヨネックス」「アンダーアーマー」も採用校を拡大した。
明石スクールユニフォームカンパニーは、自社ブランドの「FEEL/D.」(フィール/ディー)とライセンスブランドの「MoveSport」(ムーブスポーツ)がけん引した。立体裁断による動きやすさなどの機能性と、スポーツブランドの知名度を両輪に需要を取り込む。
通達貿易(大阪市中央区)は、「プーマ」ブランドの体育着事業の拡大を図る。4月の入学商戦はユニチカメイト(同浪速区)からの移管時期と重なり、新規提案は限られたものの、引き継いだ在庫も活用しながら既存校への供給をおおむね維持し、自社生産品も一部納入した。





