モノ作りの行方~事業撤退・継承~第一回/資本市場と物理的条件

2026年08月24日 (月曜日)

 素材メーカーなどで事業撤退が目立っている。事業撤退の影響や、事業譲受した企業の取り組みや課題を掘り下げる。

 近年、日本の繊維産業を取り巻く環境が大きく変化した。中国を中心とした新興国から安価な繊維素材・製品が日本を含む国際市場に流入する構造が一段と強まり、日本での汎用(はんよう)品生産は国際競争力の面でも事実上、不利な状況になっている。

 このため合繊メーカーや紡績会社など上場企業レベルでも事業の再構築など〝選択と集中〟が一気に加速し、業界地図が大きく塗り替わろうとしている。その一例が、かつては十大紡績・合繊8社の一角に数えられたユニチカの繊維事業撤退だろう。ポリエステル繊維・スパンボンド不織布事業などはセーレン、衣料繊維事業はシキボウに譲渡された。

 10月には帝人フロンティアと旭化成アドバンスが経営統合し、TAフロンティアとして新たなスタートを切る。帝人と旭化成の繊維事業会社としての役割も担うメーカー系商社同士の統合は、企業系列の枠を越えた業界再編の動きとして注目度が高い。

 業界再編だけでなく、商材や事業領域の面でも再編が進む。例えばアクリル繊維は既に三菱ケミカルグループが撤退し、東洋紡グループの日本エクスラン工業も衣料用を中心とした汎用品の自家生産からは撤退し、機能品や資材向けへの特化を進めた。クラレはクラレ西条(愛媛県西条市)でのポリエステル長繊維生産を12月末までに停止し、委託生産に切り替える。

 合繊最大手として現在もナイロン、ポリエステル、アクリルという三大合繊全てを生産する東レも、愛媛工場(同松前町)でポリエステル短繊維の連続重合設備を停止し、多品種小ロット生産が可能なバッチ式重合に集約した。ナイロン長繊維も汎用糸生産が中心だった石川工場(石川県能美市)の設備を改良し、愛知工場(名古屋市西区)と合わせて差別化糸の増産体制を整備する。

 こうした動きの背景には、中国を中心とした海外企業との競争激化に加えて、資本市場からの要請や、生産設備を維持する必要性がある。

 近年、株式市場から投下資本利益率の向上など資本効率を重視した経営が一段と求められるようになった。このため上場企業は、利益率の低い事業はたとえ黒字でも継続することが許されなくなった。

 また、日本の繊維産業は工場設備の老朽化が進んでおり、継続的な修繕・更新や新規投資が可能な利益率を確保しなければ、事業継続が物理的に不可能だ。

 このため自社での事業撤退とベストオーナーへの譲渡による事業集約によって、効率化と収益性の向上を進める動きは、今後も続く可能性が高い。