モノ作りの行方 ~事業撤退・継承~ 第五回

2026年08月28日 (金曜日)

承継を力に次代のモノ作りへ

 不動産賃貸業のカワボウ(岐阜市)は2025年12月、合繊糸製造のユニチカスピニング(長崎県松浦市)を承継し、ユニチカスピニングの社名をカワボウ長崎に改めた。カワボウ長崎の運営を紡績糸・生地製造卸のカワボウ繊維(岐阜市)が担い、従来の取引先への安定供給を続けている。

 今期(2027年3月期)は、既存事業の維持を徹底しながら、国内でも珍しい梳毛紡績と合繊紡績の生産基盤を生かした将来のモノ作りを見据える。

 カワボウ長崎は従業員64人の体制で、1万8千錘の紡機を持つ。フル稼働時の生産能力は月産約100㌧に上り、合繊糸を主力に、ポリビニルアルコール(PVA)・綿混糸やポリエステル・ウール混糸など幅広い糸に対応する。大阪に営業担当者も配置し、顧客との接点を広げている。

 現在の用途は官需、産業資材、ファッション向けが約3分の1ずつを占める。承継後の業績も堅調に推移し、カワボウ長崎は前期の1~3月、今期の4~6月とも単体で黒字を確保した。「まずはこれまでの事業を守り、顧客に安心して取引を続けてもらう」(カワボウ繊維の伊東健二取締役本部長)方針の下、仕入れ先や販売先、生産品種を変えず、安定運営を優先する。

 カワボウ繊維は、テキスタイル本部に36人、梳毛紡績を担う武芸川工場(岐阜県関市)に54人の体制で、自社の独自紡績糸を使った生地を中心に販売する。同工場は8千錘を持ち、“自家紡績”と呼ぶ独自技術を生かして複合糸や混紡糸、意匠糸などを生産している。協力工場で織物や丸編み地に仕上げ、ユニフォームやファッション向けに供給を続ける。

 来期以降は、受注動向を見極めながら、生産効率を高めるラインの見直しや必要な設備投資を検討する。武芸川とカワボウ長崎で設備保全を含めた技術者交流も進め、両工場の技術を組み合わせてモノ作りの選択肢を広げ、資材分野などの用途開拓を目指す。

 同社は23年3月に紡績事業を撤退した豊島紡績(愛知県岩倉市)から、トライスピン機6台と従業員8人を武芸川工場へ引き継ぎ、手芸糸向けを中心とした旺盛な受注に対応してきた。二つの事業承継で受け継いだ設備や人材、技術を生かし、国内紡績の可能性を広げる。