繊維ニュース

三備産地/人材確保へ地域一丸/若者が集まる産地へ

2026年08月28日 (金曜日)

 岡山県から広島県にまたがる三備産地では、人材の確保・定着に向け、さまざまな取り組みが広がっている。工場見学やインターンシップを通じて産地の魅力を伝えるほか、教育機関との連携や多様な働き方の受け入れなど、地域全体で担い手を育てる動きが活発になっている。(光元 徹)

 今年で3回目の開催となる「瀬戸内ファクトリービュー」は、人材の採用や定着に大きな役割を果たしている。岡山、広島両県のモノ作り企業が自社工場を一般公開するイベントで、今年は11月4~22日に48社が参加する。繊維業界からは、デニム製造国内最大手のカイハラ(広島県福山市)、デニム製造の篠原テキスタイル(同)などが参加。縫製の日本デリバリーサービス(同)では、同イベントでの見学をきっかけに採用につながったという。

 今年初めて開かれる「瀬戸内産業芸術祭」も、幅広い人々が地域産業に触れる入り口をつくることを目的の一つに挙げる。岡山、愛媛両県の7会場で10月3~31日に開かれる。工場や産業現場を芸術の舞台とし、地域全体を“分散型美術館”として見せる。繊維企業・団体としては、学生服製造卸のトンボと児島ジーンズストリート協同組合(岡山県倉敷市)が参加する。

 同組合はほかにも、岡山県内の専修学校・各種学校で組織する岡山県専修学校各種学校振興会と連携協定を結び、10月24日に調印式を開く。戸田聡一郎理事(縫製のINAHO社長)は、「連携を通じて、組合加盟企業の安定的な人材確保につなげたい」と展望を語る。

 入社後のミスマッチを防ぐインターンシップも活発に実施されている。ビンテージジーンズブランド「TCBジーンズ」を展開する縫製のTCB(倉敷市)は、今年初めて専門学校生のインターンを受け入れた。井上一社長は、「産地存続のため、人材確保と定着に向け注力したい」と話す。

 地域活性化事業を行うディスカバーリンクせとうち(福山市)も、インターンを受け入れている。今年受け入れたインターンは福岡県から福山市に移住。2カ月のインターンを経た後も週2回同社で働く一方、繊維産地継承プロジェクト「ヒトトイト」や藍染めの藍屋テロワール(同)で服作りを学ぶ。「将来は、女子アスリートのためのファッションブランドを立ち上げたい」と話す。

 独立や多様な働き方を受け入れる土壌もまた、人材確保に一役買っている。ジーンズ製造卸のベティスミス(倉敷市)は、社員の独立を支援している。独立後も広報や小物製造卸などの仕事をしながら、週数日勤務する元社員を受け入れている。

 大島康弘社長は、「独立開業する人たちが、産地の分業体制の構築に寄与し、産地の強さにつながった」と振り返る。「人材育成は自社だけでなく、産地全体の人材を育てるつもりで尽力したい」と話す。