モノ作りの行方 ~事業撤退・継承~ 第六回

2026年08月31日 (月曜日)

撤退で進む糸の内製化

 事業撤退は、業界構造を変化させる契機にもなる。カーペット業界では素材メーカーの撤退を受けて、カーペットメーカーのナイロン糸の内製化が進む。

 国内カーペット用ナイロン長繊維の50%のシェアを持っていたインビスタジャパンが、コントラクト(業務)カーペット向けの白糸供給から撤退したのは2019年末。その後、原着糸からも撤退した。ナイロン66用原料、中間体の販売が拡大する中で経営資源を再配分する戦略の一環として決断した。

 同社の撤退を受けてカーペット業界は混乱した。特にタイルカーペットメーカーの最大手である東リは、インビスタジャパンの白糸を多く使用していたため、影響が大きかった。

 カーペット用ナイロン長繊維は当時、インビスタジャパンと東レが国内シェアの90%を担っていた。東リは、東レと白糸の取り組みを深める一方、原着糸の内製化を推し進めた。

 東リは「三十数年前からナイロン糸の内製化をテーマに検討を進めてきた」が、インビスタジャパンの撤退が内製化を加速させる契機となったことは間違いない。

 東リは、滋賀工場(滋賀県日野町)にナイロン紡糸機を導入し、1号機を21年8月、2号機を23年4月、3号機を24年12月に稼働させた。さらに26年冬をめどに4号機を本格稼働させる。

 ナイロン原着糸の安定確保やコスト低減から、中長期的にナイロン糸の内製化を進める方針を示しており、4号機がフル稼働すれば、タイルカーペットに使用するナイロン糸の内製比率は40~50%に高まる。4号機は糸加工が同時にでき、コストメリットも一段と高まる。

 白糸は東レとのパイプを太くする。世界のカーペット用BCFナイロンは後染めの白糸よりも、原着糸が今や主流になっている一方で、白糸使いの染色加工でデザイン性や機能性を高められるなど、日本のカーペット作りの独自性につながっている面がある。

 白糸は高い製造技術が求められ、カーペットメーカーが内製化することは難しいとされる。国内のカーペット用ナイロン白糸は現在、東レがほぼ全量を担う。

 東レのカーペット用BCF(かさ高連続長繊維)ナイロン6糸は、岡崎工場(愛知県岡崎市)で年間数千㌧生産。国内カーペット用の5割程度のシェアを持つ。ナイロン6糸の原糸開発や高次加工にも力を入れている。「老朽化した設備は紡糸機を含めて更新していく」(産業資材事業部)とし、安定供給に努める考えを示す。

 カーペット用ナイロン糸は、ほかの海外素材メーカーも原着糸に力を入れるなど、現在の供給は安定している。形を変えながら、モノ作りを続けていく。

(おわり)

 これからもモノ作りが直面する課題や対応策を随時取り上げます。