特集 差別化ヤーン(1)/日本独自のモノ作り不可欠/豊島/シキボウ/東洋紡せんい

2026年09月04日 (金曜日)

 中国を中心とした新興国の技術的キャッチアップが一段と激しさを増す中、日本での汎用(はんよう)品の生産は事実上不利となった。日本独自のモノ作りが今まで以上に求められている。それを支えているのが差別化糸だろう。有力メーカー・商社の最新の動きを追った。

〈原料特徴生かし差別化/環境配慮、国際認証など生かす/豊島〉

 豊島は天然繊維原料の特徴を生かしつつ機能性を高めた差別化糸や、環境配慮型の側面を持つ再生糸の訴求を強める。トルコ産のトレーサブルオーガニックコットン「TRUECOTTON」(トゥルーコットン)では、ムラ糸やネップ糸をそろえて拡充する。

 このほど、ウールが持つ風合いを保ちつつ、生地にしたときに適度なハリ感を付与する差別化糸を開発した。豪州産ノンミュールジングウールとカチオン可染性を持つ再生ポリエステル混紡糸で、仮称「RETIONWOOL」(リチオンウール)として打ち出す。

 リチオンウールは毛60番手双糸と70番手双糸をそろえる。糸の撚りを強くして、ハリコシ感を付与した。混率はポリエステル70%・ウール30%で、再生ポリエステルはリサイクルに関する国際認証「GRS」を取得した原料を使う。ウール糸との比較で廉価で供給しやすい点もアピールする。

 ベトナムでB反、C反の生機を反毛した再生原料の混紡糸は「RECOVER」(リカバー)と名付ける。綿30番手糸を中心に、編み地向けに適した糸として供給する。リカバーはベトナムで紡績し、再生原料30%混の糸をアパレル向けに販売する。50%混も試作中だ。

 サステイナブルと追跡可能性を両立したトルコ産オーガニックコットンのトゥルーコットンでは、生地表面に変化をもたらすムラ糸やネップ糸を加えた。カジュアル衣料向けに適する。ムラ糸は綿10、16、20、40番手がそろう。ネップ糸は綿20、30番手をそろえた。

〈合繊機能素材も充実/多彩なクーリング素材/シキボウ〉

 シキボウは1月からユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業を継承したことで、これまで得意としてきた天然繊維に加えて合繊機能素材のラインアップが充実した。特にクーリング素材「こかげマックス」「打ち水」は幅広い用途に提案する。

 こかげマックスは、高濃度の太陽光遮蔽(しゃへい)セラミックを内部に配置したポリエステル長繊維による素材。優れた遮熱クーリング効果と防透性、UVカット機能を持つ。一方、打ち水は気化促進機能を持つポリエステル繊維。生地が汗などの水分を吸水し、蒸発時に周囲の熱(気化熱)を奪うことで冷却効果が得られる。

 いずれもUTCから継承した素材だが、糸加工や織り・編み、染色加工など生産サプライチェーンも引き継いだことで従来と変わらない品質と機能を確立している。さらにシキボウが得意とする綿糸との交編など天然繊維との複合も可能になるなど素材バリエーションが一段と進化した。

 ギアスポーツだけでなくスポーティーカジュアル、学販体育衣料、ユニフォームなど幅広い用途に提案する。近年の酷暑もあってクーリング機能素材への引き合いは強く、既にサンプル衣料による着用試験で効果を確認するなど商談が進行中だ。

 海外からの引き合いもある。このため欧米だけでなくインドなど新興市場への提案にも取り組む。7月にインド・ニューデリーで開催された繊維総合展「バーラト・テックス」にも出展し、こかげマックスなどを紹介した。

〈広がる「さいくるこっと」/長短複合紡績や二層構造糸も多彩/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいが販売する新タイプのリサイクル綿糸「さいくるこっと」が本格的に広がり始めた。産地のテキスタイル企業だけでなく海外の有名アパレルが採用を決めた。国内でも大手アパレルが採用に向けて動きだした。

 さいくるこっとは、新方式の開繊技術によって繊維長を維持した反毛を原料とするため、細番手糸やリサイクル原料100%の紡績が可能。糸表情の品位にも優れる。国内では欧米へのテキスタイル輸出に取り組む産地企業を中心に採用が進む。

 ここにきて海外の有力アパレルも採用を決めるなど、普及が本格化してきた。国内の大手アパレルも採用に向けて動いており、現在は試作が進められている段階だ。こちらはアパレルが日本で回収した使用済み綿製品をインドに送り、さいくるこっととして再生するポストコンシューマー型リサイクルを視野に入れる。リサイクル原料を使用しながら、高品位を実現できることへの評価は高い。

 高級原料使いの長短複合紡績糸シリーズ「ネイチャーブリッジマナード」も引き合いが増えている。御幸毛織(名古屋市西区)と連携して提案しており、独自の長短複合紡績糸「マナード」の技術を応用し、天然繊維と合繊長繊維の利点を融合した。シルクや綿とマスバランス方式を含むケミカルリサイクルナイロン繊維「ループロン―C」の複合紡績糸、リネンと再生ポリエステル繊維の複合紡績糸、ウールとループロン―Cの複合紡績糸などを用意する。

 そのほか、鞘に綿、芯にセラミック配合異形断面再生ポリエステル短繊維「トライクール」を配した2層構造紡績糸「テクノコット」も投入。綿のタッチとUVカットや遮熱、速乾機能を両立した。