特集 差別化ヤーン(2)/モリリン/新内外綿/浅野撚糸/泉工業

2026年09月04日 (金曜日)

〈TRトップ糸販売好調/梳毛糸置き換え需要を好機に/モリリン〉

 モリリンはポリエステル・レーヨン混トップ糸の販売量が大幅に増えている。梳毛糸やウール混糸も備蓄販売するが、置き換え需要の高まりを背景に供給量が伸びる。尾州産地を中心に販売を強化しているが、国内の他産地にも訴求を強める。

 このトップ糸の混率はポリエステル65%・レーヨン35%で、名称は「トップランナー」。20年近く販売を続けるロングセラーで30、40、50番手の単糸をそろえる。黒やグレー系を中心に6色展開していたが、紺色や茶系など6色を追加して12色展開とした。

 トップ染めを施したような自然なミックス調で、色味に深みを持たせた。原着を含む2色ポリエステルと、顔料を練り込んで着色した2色のレーヨンを混紡する。水を使わず染色工程を経ないため、環境に配慮した製法の原糸としてもアピールできる。生地にすると自然な伸縮性があり、シワになりにくい。スーツやセットアップ、ユニフォーム向けに適する。

 トップランナーの販売が増える理由として、ウール原料価格の高騰とともに梳毛糸やウール混糸の価格が上昇していることが挙がる。梳毛糸やウール混糸を含めて備蓄しながら受注に対応する柔軟性も強みにする。短納期で生地や製品を生産する事例が増える中で、多様なニーズに即応できる。

 トップランナーの上半期(2026年3~8月)販売量は、前期(25年3月~26年2月)総販売量との比較で、既に50%増となっている。

〈「モクティ」見本帳刷新へ/杢・生成り糸で需要開拓/新内外綿〉

 新内外綿(大阪市中央区)は、主力の杢(もく)糸「モクティ」の見本帳を刷新し、独自糸の提案を強める。需要の多い生成り糸も初めて掲載し、新作を含む杢糸14種類と、シキボウの糸など生成り糸10種類を収録する。11月に開催される「北陸ヤーンフェア2026」での披露に向けて10月の完成を予定し、新たな需要を掘り起こす。

 新見本帳では、定番のグレー杢に加え、差別化糸の品ぞろえを広げる。好調な落ちわた混の「モクティRECOT(リコット)」シリーズは、生成りの番手を12~40番単糸に拡充し、杢糸も新色を加えて5色をそろえた。

 昨年開発して提案を重ねてきたキュプラ・綿混の「ちょっとリッチ」、反毛わた混の「反毛ヤーン」、リサイクルカシミヤ10%混は、いずれも生成りと杢糸をそろえ、展開を本格化する。見本帳はシキボウと共同でデザインし、生地が映える台紙の風合いにもこだわった。

 20キロからの試作に対応する生産子会社のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)では、別注も増えている。綿花に加え、カシミヤやリヨセル、合繊、染め綿など豊富な原料を生かして顧客の要望に応えるほか、タイの商事会社JPボスコとの連携による海外での小口生産にも対応する。

 認知向上に向けて発信も強化し、営業担当者らが登場するインスタグラムの更新を続ける。7月末には初のメールマガジンの配信も始め、原糸や製品の情報を発信しながら、新たな顧客との接点を広げる。

〈天然繊維の特徴引き出す/複合撚糸加工依頼増える/浅野撚糸〉

 撚糸・タオル製造卸の浅野撚糸(岐阜県安八町)は、綿やウールなど天然繊維の特徴を引き出した撚糸加工で優位性を保つ。天然繊維糸と合成繊維糸を複合した撚糸加工の依頼が増えている。

 特殊撚糸「スーパーゼロ」加工による独自技術を生かして、多様な開発依頼に応える。紡績糸と水溶性糸を交撚し、通常と逆方向に2倍の撚りをかけたのちにスチームセットを経て水溶性糸を溶かして仕上げる。

 綿やウール、リネンといった天然繊維が持つ特徴を損なわず、かさ高性や柔軟性をもたらす。「撚られた糸が戻ろうとし、かさ高性を増す際に取り込む空気も素材にする」(浅野宏介専務)として、訴求を強める。

 スーパーゼロはタオル向けを中心とした綿糸への加工が多いが、防縮ウール糸や梳毛糸の加工も増えている。防縮ウール糸にスーパーゼロ加工を施すと、しなやかさと豊かな光沢が備わる。編み地にすると滑らかさが際立つ。

 服地向けにスーパー原料を使った梳毛糸のスーパーゼロ加工依頼にも対応する。毛40、48、60、72番手の糸に施すことで、軽さと光沢感、しなやかな風合いが表現できる。

 ナイロンなど合成繊維糸と天然繊維糸を複合した撚糸加工の依頼も増やしたいとする。天然繊維が持つ豊かな風合いに加えて、強度を高めることに有効だと捉える。風合いに加えて機能性を付与したいなどのニーズに合わせた開発を進め、受託につなげる。

〈渦流精紡でラメ糸/村田機械と共同開発/泉工業〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)は、村田機械と共同で従来にない製法によるラメ糸の開発を進めている。村田機械の渦流精紡機「ボルテックス」によってラメ糸を生産するもので、従来にはないランダムな光沢表現などが可能になる。

 ラメ糸は通常、金属を真空蒸着したフィルムをスリットして作るラメにフィラメントや紡績糸を撚糸して製造する。これに対して泉工業と村田機械はボルテックスを使い、ラメに渦流で綿やレーヨン短繊維、ポリエステル短繊維などを結束することでラメ糸を製造することに成功した。

 撚糸工程ではなく精紡工程でラメと短繊維を混繊するため、ランダムにラメを露出させるなどで通常のラメ糸とは異なる糸表情が可能だ。ラメには後加工しても金属層の変色や剥離が起こらない泉工業の「ジョーテックス」を使用することで糸染めや生地染めにも対応しており、糸としての使い勝手にも優れる。

 現在、量産技術の確立を進めており、11月に金沢市で開催される糸展示会「北陸ヤーンフェア2026」に出展して披露する計画だ。また、産地企業がテキスタイル開発に向けた取り組みも進めている。

 もう一つ注目が高まっているのが、設備を傷めない再帰反射糸「セッソンフリー」に撥水(はっすい)機能を付与したタイプだ。再帰反射材をスリットした糸をポリエステルフィルムでカバーリングしたもので、再帰反射材のガラスビーズが露出していないため織り・編み・縫製工程で設備の損傷が起こりにくい。

 ガラスビーズが露出していないため、水にぬれても反射輝度の低下が少ない。この特徴を生かし、表面にシリコーン加工を施すことで撥水機能も付与した。スキーやアウトドア、シューズなどの用途で引き合いが寄せられている。