商社原料・素材ビジネス特集(1)/商材の独自性で提案力アピール/OEM ODMの差別化にも

2026年09月11日 (金曜日)

 事業環境が激変する中、商社が原点とも言うべき原料・素材の事業に活路を開こうとする動きが活発化している。そこには、原料・素材の提案で独自性を打ち出し、OEM/ODMの差別化につなげる意図が込められている。

 田村駒は、テキスタイル開発チームを中心に素材提案力の強化を図る。猛暑対策やイージーケアなど市場ニーズに対応する機能素材の商品化を推進する。

 「オプティブロック」は遮熱に特化した素材で、特殊な機能糸を使用した。同素材は生地の遮熱機能を示す指標で、太陽光による熱を45%以上55%未満の範囲でカットできる「S45」を掲げる。併せて高水準のUV(紫外線)カット機能も発揮する。

 今後の拡販に向け、中国で築いた生産背景を活用し、糸から織り・編み、染めまで一貫して担う体制を整備した。

 空調服(東京都板橋区)と連携して行う電動ファン(EF)付きウエアの事業では、製品の表地にオプティブロックを採用した。これを皮切りに多様な用途に向けた提案を進める。

 三共生興は〝課題解決型〟素材の提案を重点施策に位置付け、独自性が高い機能性素材の本格的な販売に着手した。持続冷感素材「アイスドファブリック」を基軸とした気候変動対応型の5素材を一斉に打ち出した。

 アイスドファブリックは、業務提携を結んだパートナーの特許技術から生まれた素材であり、そのパートナーとは協業による素材の開発、拡販を推進することで合意している。

 芯糸に遮光ポリエステルを使用した「コアベール」は、レディース向けに販売を伸ばす。

 接触冷感、遮熱、UVカット、吸水速乾の機能を発揮する「フロズナイト」は、スポーツアパレルから雑貨類まで用途を広げた。

〈MNインターファッション/高密度綿織物の可能性追求/強さが生み出す環境対応力〉

 MNインターファッションは2025年5月、高密度綿織物ブランド「VENTILE」(ベンタイル)の全世界での商標権を取得した、と発表した。合繊の高密度織物ブランド「パーテックス」の事業で培った商品開発力や海外販売ネットワークを生かし、織物ブランドとしてのグローバル展開に力を注ぐ。

 ベンタイルは1943年、英マンチェスターで誕生した。長く英国空軍のユニフォームに採用された実績を持つ。

 長期使用を前提に設計された生地は、防水性と通気性を兼ね備え、極限環境からも人命を守った素材として認知度を高めた。機能性に対する評価が広まり、登山や極地探検に向けたアイテムへの採用も増やしていった。

 96年から本格的な民間用途への展開が始まり、欧州を中心に高級ファッション、アウトドアスポーツウエア、ラグジュアリーバッグ、シューズと用途が拡大し続けた。

 現在、欧州ではベンタイルヨーロッパ社が生地の生産を担い、伝統の技法と思想を受け継いでいる。

 MNインターファッションはアジアで生地の生産を行い、伝統をベースにしながら、ヘンプやウールなどを取り入れ、素材としての進化を図っている。新コレクションの一部には合繊を加え、スポーツ向けの提案を強める。

 パーテックスとの相乗効果でアウトドアの用途開拓が進み、今後はワークウエアやユニフォームも提案のターゲットに据える。国内外の展示会でもアピールし、ブランド認知の向上を目指していく。

 ベンタイルの展開はOEM提案の差別化という効果ももたらした。生産において、有機フッ素化合物(PFAS)フリーへの移行を進めるなど、環境に配慮する企業姿勢を示すことにもつながっている。

〈ヤギ/サステ×機能の合繊糸/「パーストレッチ」拡販に力〉

 ヤギは糸からの差別化戦略の一環として、環境配慮とストレッチ性を両立させた「パーストレッチ」シリーズの拡販に力を入れている。生地、製品、ブランド、リテールという社内他事業やグループ会社との連携も拡販へのポイントとする。

 同シリーズは、環境配慮型素材の統一ブランド「UNITO」(ユナ・イト)の五つのカテゴリーのうち、「ユナ・イト プラス」の中から打ち出す。二つのポリエステル系ポリマーを組み合わせ、独自の糸加工と熱処理によりコイル状の構造を持つ高いストレッチ性の複合素材。PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維と合わせ、丸断面構造により品質安定性や滑らかでソフトな質感が得られる。フルダル設計によるマットな光沢、遮熱効果も特徴。

 さらに多くの機能を盛り込んだのが「パーストレッチ コンフォート」だ。ストレッチ性のあるひょうたん形の芯糸を柔らかな機能糸で包むことで天然繊維のような心地よい肌触りを実現し、多様な機能と組み合わせた。外側にフルダルのハイカウント糸を設計することで適度なストレッチ性があり、UVカット、遮熱性、防透け性、吸水速乾性、透湿性などの機能も持つ。

 どちらも、植物由来のPTT繊維と再生ポリエステルを使っていることでサステイナビリティーを実現。GRS認証の取得も可能。

 糸と生地を販売するほか、社内の製品部門にも供給する。糸はインドネシアで生産し、織り・編み地は同国のほか北陸産地や中国で生産する。

 提案したアパレルからは風合いと高い機能性が評価され、「年間定番品にしたい」などの反響を得た。糸は番手違いの数種を備蓄し、生地でも各種を取りそろえる。

〈スタイレム/環境再生型綿糸広げる/有機栽培とは別のアプローチ〉

 スタイレムは、地球環境への配慮に敏感なアパレルブランドが注目するリジェネラティブ(環境再生型)農法で栽培した綿花を原料にした綿糸の販売を始めた。オーガニックとはまた違ったアプローチで、多様化する需要を取り込む。

 リジェネラティブ綿とは、土壌の健康や生態系の回復、生物多様性の向上を目指して栽培された綿花のこと。不耕起栽培やカバークロップ(被覆作物)栽培で土の中の微生物を守り、輪作によって土の“健康”を守るのが代表的な手法。枠組みによっては化学肥料や遺伝子組み換え技術の利用が除外されない場合もある。

 化学合成農薬・化学肥料などの使用を原則として制限する有機栽培のオーガニック綿とは違い、失われた土の力を蘇らせ、土壌への炭素貯留によって温暖化対策への寄与も期待される素材として注目されている。

 綿花の調達先として、リジェネラティブ農法を採用する米国のスーピマ綿最大農園、ボズウェルファームと契約した。

 同農園で取れる綿花のうち白度や繊維長、清潔度において最高品質の上位15%の特別な綿花ブランド「THE 1―1―50 STAR」(ワンワンフィフティースター)を仕入れ、パキスタンで紡績。綿糸をスタイレムが国内外に売る。番手は10番から120番までをそろえる。

 豪州で複数の綿花農園を保有・運営するサンダウンパストラルとも契約。同社の「グッドアースコットン」という中番手用の綿花を仕入れ、「ルミナホワイト」という綿糸ブランドでスタイレムが販売する。

 米・豪どちらの綿糸も定番品を中心に備蓄販売するが、既に高い関心が寄せられており、採用実績やサンプルの引き合いが相次いでいる。

〈蝶理/長繊維の不織布重ねる新発想/軽くて暖かい中わたに〉

 蝶理は独自のコンセプト「BLUE CHAIN」(ブルーチェーン)を掲げ、糸・生地・製品という繊維産業の川上から川下に至る各段階で、サステイナビリティーに対応する取り組みを行っている。それらを柔軟に掛け合わせることで、サプライチェーンのサステ全体の最適化を図る。

 この方針の下、独自商品を含む環境配慮型素材の拡販に注力する。その一環として、気候変動への対応に焦点を当てた商材の拡充も進める。機能性素材の提案にいち早く取り組んできた強みを生かし、気候変動が進行しても快適性を維持する素材を豊富にそろえる。

 中わた素材として提案する「TORIKUMO」(トリクモ)は、長繊維の不織布を積層するという新しい発想から生まれた。

 長繊維の不織布を折り重ねることで、独自の凹凸構造を作り出す。繊維の間に多層の空気を取り込む構造により、暖かさと軽量感の両立が実現した。

 必要な性能の分だけ層を重ねられる点も、独自性を際立たせる。

 通常は短繊維を使う中わたに、長繊維を採用することで、表地からの繊維の抜けや吹き出しの発生を防ぐ。吹き出しを抑制する生地を使わずに製品作りができるため、表地本来の風合いを生かした自由なガーメント設計が可能になる。

 洗濯しても中わたが片寄らず、保温性も低下しにくいという特徴も持つ。

 加工は蝶理が開発した専用機械で行う。従来のエンボス加工とは異なる「折り紙製法」で、独自の凹凸構造を形成する。製法、製品で国内の特許を取得している。

 開発力を活用して生み出したトリクモを、日常使いのアウターやスポーツウエアから広めていく。