中国の日系生地商社/スポーツシフトと現地品拡充/ファッション偏重から脱却

2026年09月16日 (水曜日)

 中国の日系生地商社が、戦略転換を進めている。2016年前後、中国ファッション市場が拡大する一方、日本向け輸出は細っていった。こうした中、多くが中国内販へ本格的にシフトした。それから10年、各社が進めているのが、販売先のファッション偏重からの脱却と現地での開発だ。(岩下祐一)

 転換の背景の一つは、中国ファッション市場の地盤沈下だ。新型コロナウイルス禍後、百貨店ブランドに代わる主力顧客となった電子商取引(EC)専業のファッションブランドが、消費低迷や返品率悪化を受け、勢いを失っている。そこで各社が照準を合わせるのが、好調な地場スポーツ・アウトドアブランドだ。

 この動きを象徴するのが瀧定の現地法人、瀧定紡織品〈上海〉だ。深センの拠点はカジュアルからスポーツへ、北京の拠点もエレガンスからスポーツ重視へ営業方針を転換し、成果を上げる。今年後半以降、中国でのスポーツ関連の売上比率を3割まで高める方針で、関連素材を拡充。8月の「インターテキスタイル上海2026秋冬」では、日本本社が開発したスポーツ素材を現地市場向けに編集した新コレクション「RFA」(アルファ)を訴求した。

 サンウェルの現地法人、燦日泉〈上海〉貿易も、25年からスポーツ・アウトドア向けの実績を積み、26年上半期には地場大手ブランド向けで数万㍍の受注が動いた。「ファッション性の高い生地への対応力が評価されている」と、新井洋介総経理は話す。

 豊島の現地法人、豊島国際〈上海〉はスポーツ向け製品の売り上げが内販全体の8割を占め、一村産業の現地法人、一村〈上海〉貿易も高級スポーツ・アウトドア顧客がけん引し、3年連続で最高益を更新している。

 もう一つの変化が、生地の中国品比率の上昇だ。コロナ禍後のECブランド台頭で短納期・小ロット志向が強まり、現地開発を加速。日本の産地縮小による納期長期化や、日本品と中国市場のニーズのミスマッチも重なり、即納可能な中国品への切り替えが進んだ。

 燦日泉〈上海〉貿易や双日ファッションの現地法人、双日奔時代〈上海〉などは、内販の中国品比率が7~8割に達する。スポーツ顧客の開拓に伴い、バイオーダーによる中国品の取り扱いも増えている。

 もっとも、中国品へのシフトにはジレンマもある。日系生地商社の開発力の源泉は日本の産地で、岡山産デニムなどの日本品は強いブランド力を持つ。中国品に軸足を移すほど、その持ち味を薄めかねない。中国品で収益を確保しながら、日本品の存在感をどう保つかが、戦略転換の成否を左右する。

 販売エリアも広がる。各社はここ数年、ECブランドや、そうしたブランド向けを手掛けるODM企業が集まる深セン、広州、杭州、成都などで、顧客開拓に力を入れる。ただし、成都や武漢などの新興ECブランドの多くが市況低迷で失速しており、エリア拡大の行方は予断を許さない。