カケン/サステナビリティ経営推進部/多様な角度で寄り添う

2026年09月17日 (木曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、通常の試験・検査業務に加え、企業のサステイナビリティーへの取り組みを積極的にサポートしている。中心的役割を果たすのがサステナビリティ経営推進部で、ライフサイクルアセスメント(LCA)の算定・支援、CSR監査、海外進出支援など多様な角度で顧客に寄り添う。

〈LCAをトータル支援〉

 「公正なサービスを通じて、安心・安全で持続可能なより良い暮らしの実現のために貢献します」というパーパス(企業の存在意義)を掲げているカケン。品質や機能性を確認する試験・検査で繊維業界に貢献してきたが、現在はサステ関連で各企業の支援を行うようになっている。

 サステ対応には環境や人権などさまざまな側面があり、日本国内企業の海外進出サポートも入る。その中核を成しているのがサステナビリティ経営推進部で、牟田勝広専務理事兼サステナビリティ経営推進部長は「サステの取り組みや商品に対してエビデンス(科学的根拠)が出せる第三者機関として企業を支える。繊維はもちろん、非繊維にも応じる」と話す。

 そのサステナビリティ経営推進部が提供するサービスの一つにLCA算定・支援がある。LCAは、製品やサービスの環境負荷を多角的に定量化する評価手法で、二酸化炭素(CO2)排出削減に向けても重要になる。カケンでは2023年4月にサービス展開を開始し、提供可能なサービスも増えてきた。

 具体的には、LCA導入を検討する企業へのセミナーの開催、実際の算定支援、LCA算定ソフトウエア「MiLCA」(みるか)の販売、第三者検証の取得支援などに取り組んでいるが、26年6月にはAIST Solutionsとの正規販売代理店契約の締結に伴い「AIST―IDEA」(アイストイデア)取り扱いを開始している。

 AIST―IDEAは、LCA算定とScope3をサポートするインベントリデータベースで、産業技術総合研究所(産総研)が開発した。日本国内の幅広い事業活動を網羅するAIST―IDEAがラインアップに加わり、データベースの提供から実務の支援までワンストップでサポートする体制が一段と強固になった。

 LCAの算定・支援については「異業種からの依頼が増えている」という。特に多いのが建材関連だ。オフィスビルなどの大規模建築物を対象とする改正建築物省エネ法が28年度にも導入される可能性を受けたもの。資材、施工、使用、解体までの各段階でのCO2排出量の算定が義務化される可能性がある。

 カケンには、サステナブル経営推進機構(SuMPO)認定のLCAエキスパートが11人在籍しており、専門的な知識を持つスタッフが対応している。また、一般財団法人として公正中立な立場であることも特性といえる。今後、依頼が増えると予想される繊維企業の支援も積極的に行う。

〈海外でも人権監査に対応〉

 サステナビリティ経営推進部では、人権監査にも力を入れている。人権デュー・ディリジェンス推進コンソーシアムの認定監査機関として登録されており、企業からの依頼・問い合わせに積極的に応えている。日本だけでなく、海外に目を向けているのも特徴的といえる。

 日本国内では、経済産業省が策定した「繊維産業の監査要求事項・評価基準」(JASTI)監査を軸に取り組みを深めている。JASTI監査は、25年4月に受け付けを開始してから1年5カ月余りが経過した。初年度と比べると数は多くないが、26年も依頼は順調に推移している。

 現在は、日本だけでなく海外の玩具やプラスチック、包材に関連するサプライヤー監査の依頼が増えているという。JASTIは、強制労働や児童労働などの9分野に対して84項目の監査要求事項があるが、これを拡大して実施している。人権監査だけでなく、サプライヤー製造工程における品質管理システムに関する監査を合わせて行っており、それが強みの一つになっている。

 サステナビリティ経営推進部は「経産省の主導で始まったJASTIは繊維業界だけでなく、他業界にも影響を与えたのではないか」と話す。人権重視は欠かせない大きな流れになっており、人権監査と品質管理の両方に対応できるという強みを訴求し、需要を取っていく。

 国内はもちろん、海外でも人権監査ができるのもカケンの強みといえる。18年に中国で監査を始め、現在はベトナム、タイ、ミャンマー、インドネシア、バングラデシュなどに対応可能な国・地域を広げている。中国を中心に一部ベトナムとタイで、24年は約150件、25年は約200件の人権監査を実施した。

 日本には自社の監査員が13人在籍し、中国にも7人の自社監査員を配置している。東南アジアでの監査は提携機関との連携で行う。報告書は日本語と中国語、または日本語と英語を併記したものを作成する。報告書を提出した後も継続してサポートするとしている。

 独自プログラムも作成するなど、さまざまな部分で外資系との差別化を図っている。将来的には、MTVカケンベトナムとカケンインドネシアにも自社の監査員を置きたいとした。また、現在は日系企業・工場に対する人権監査となっているが、「日本向け輸出を目指す現地企業の需要も取り込んでいきたい」と話した。

〈企業の海外進出を支援〉

 牟田専務理事兼サステナビリティ経営推進部長が「今後ますます重要になる」と語るのが、海外進出支援サービスだ。品質表示に関するサポートや制限物質リスト(RSL)の基準作成支援などを行っているほか、提携機関であるBVCPSとの連携により、雑貨品への対応強化を図っている。

 品質表示は、原則として販売国の公用語を用い、その国の表示法に基づいて作成する必要がある。同サービスでは、表示作成にリソースを割けない企業をサポートするため、日本語の表示をベースに各国の法律を考慮して変換している。19年ごろにサービスを開始し、現在は東アジア、欧州諸国、米国など、日本を除いて8カ国に対応する。

 表示事項の資料作成では、ラベルに記載すべき内容を国ごとに調査し、顧客が求める形式にまとめて提供する。主にこれから海外市場進出を目指す企業が対象で、セミナー形式で情報を発信するケースも多い。

 安全性に関する支援としては、RSL基準の策定サポート業務を行っている。各国の化学物質に対する基準値を設けているかといった情報を踏まえ、基準に落とし込むことが可能である。化学物質規制の把握は、海外進出において極めて重要となる。

 また、安全性においては、化学物質だけでなく、物理的な規制への注意も欠かせない。中でも見過ごされがちなのが、子供服に対する規制と米国の燃焼性試験だという。日本では自主規制にとどまる子供服の引きひもは、米国や欧州諸国、中国、台湾、シンガポールなどでは法律で規制されている。

 例えば、6歳未満向けの衣服の首回りに引きひもの使用を禁じる国もある。ひもの長さや種類も規制され、パーカでは目への接触危険を防ぐ観点から、伸縮性のある引きひもが禁止されるケースもあるという。

 表示や安全性に関する相談は、アパレル製品や繊維雑貨が主体だが、最近では繊維以外の雑貨についても「海外で販売するにはどうすればよいか」といった相談や問い合わせが増加傾向にあるという。

 特に「推し活」グッズやコンサートグッズなどが中心で、欧米向けのみならずアジア市場を狙う企業も多い。牟田専務理事兼サステナビリティ経営推進部長は「ニーズは着実に増えている。BVCPSと協業し、顧客の要望に応えられる体制を整えていく」としている。