ごえんぼう
2026年09月28日 (月曜日)
若い頃、ウィーン美術史博物館でフェルメールの「画家のアトリエ」を見た。経済的に困窮しても手放さなかったとされる作品だ。先日、大阪中之島美術館で「真珠の耳飾りの少女」と対面した▼フェルメールの魅力は何といっても光の表現にある。仏美術評論家テオフィル・トレも「最も注目に値する特質は、彼が描く光の質」(『世界の美術』アンドリュー・グレアム=ディクソン総監修)と評した。その光は衣服やカーテンなど、布の表情を鮮やかに浮かび上がらせる▼父レイニエルは画商や宿屋を営む以前、絹織物の職人だった。幼い頃から布を身近に見て育ったことも影響したのだろうか。異なる素材の質感を、まるで実物のように描き分ける力に秀でていた▼絵を支えるキャンバスも麻だ。当時は気付かなかったが、時を隔てて二つの名画に出会い、光だけでなく布にも目を凝らす。名画の見え方も少し変わった気がする。





