特集 アジアの繊維産業(2)/中国/二極化のアパレル市場/スポーツ好調、ECは価格競争

2026年09月29日 (火曜日)

 中国アパレル市場で、ブランド・カテゴリー間の二極化が進んでいる。2026年上半期のアパレル小売額は前年同期比6・7%増だったが、7月は1・0%減と前年割れに転じた。スポーツ・アウトドアの高付加価値ブランドが好調な一方、ファッションなどのライブコマースでは価格競争が激化し、返品コストに収益を圧迫されるブランドもある。中国素材メーカーの開発力が高まる中、日系生地企業には市場に応じた対応と差別化が求められている。(上海支局)

 レディースブランドでは、26年上半期の売上高の伸びが鈍る中、不採算店舗の整理やマルチブランド化など、利益確保を重視する動きが目立つ。メンズも一部の本業が回復する一方、販売費や店舗投資が利益を圧迫する企業があり、業績は一様ではない。

 これに対し、スポーツ・アウトドアでは高付加価値ブランドが好調だ。地場最大手の安踏(アンタ)は上半期売上高が12・8%増、傘下の「デサント」「コーロン・スポーツ」などその他ブランド事業は44・2%増となった。

 ライブコマース市場では価格競争が激化し、「内巻」と呼ばれる過当競争が続く。アパレルでは返品率が4~5割に達するケースがあり、レディースでは7割超、場合によっては9割に達するとの声もある。返品・再出荷や検品コストが収益を圧迫するため、販売量だけでなく、品質や素材の安定性、短納期での追加対応が重要になっている。

 ライブコマースを展開するレディースブランド「MsLime」(ミズライム)は、安さではなく、品質や素材、デザインなどの商品価値を重視する「質価比」を掲げ、日本のトリアセテート素材なども採用。売れ筋の商品については、生地や製品を事前に確保し、追加生産に対応することでライブコマースに求められるスピードに対応する。

 ライブコマースのブランド向けにOEM・ODMを手掛ける聯合拡展制衣〈深セン〉は、企画から素材調達、生産までを一貫管理し、追加注文への対応力を強みとする。ライブコマースでは売れ行きを見ながら追加生産するため、素材調達を含めた迅速な対応が求められる。日系生地商社の高品質な備蓄品を積極的に採用している。

 一方、杭州欧曼はライブコマースなどの国内電子商取引(EC)向けODMから撤退し、欧州高級ブランド向けODMと自社ブランドに軸足を移した。価格・納期競争が激しく、既存のODMでの収益確保が難しくなったためだ。

 こうした市場環境は、日系生地企業の内販にも影響している。ファッション分野では価格競争が強まる一方、スポーツ・アウトドアでは機能性や素材価値を評価する需要が続く。EC分野では小ロット・短納期対応が生地にますます求められるようになっている。日系企業にとって中国企業との競争が激しくなる中、品質や素材の強みをどう生かすかが課題となる。

 8月の「インターテキスタイル上海2026秋冬」でも、価格・納期への要求の厳しさが浮き彫りになった。EC専業ブランド「MUNDANE」(マンデイン)は、以前使用していた日系生地商社の生地について「価格が合わなくなった」とし、現在は品質を高めている中国メーカー・商社の生地を使用する。中国企業の素材開発力が高まる中、「日本品質」だけでは価格差を埋めにくくなっている。

 一方、瀧定の現地法人、瀧定紡織品〈上海〉が同展でスポーツ向け新コレクション「RFA」(アルファ)に特化して提案するなど、日系各社のスポーツ・アウトドア素材の強化の動きが目立っている。

 消費の二極化と中国企業の素材開発力向上が進む中、日系生地企業にはボリューム市場での小ロット・短納期対応と、高付加価値市場での品質・機能・素材価値の追求の双方が求められる。

〈MNインターファッションの中国法人/中国起点にアジアつなぐ/追跡可能性と機動力生かす〉

 MNインターファッションの中国法人、日晶繊維〈上海〉が、中国を起点にアジアをつなぐ生産・調達機能を強めている。

 象徴的なのは大手日系ブランド向けの案件だ。インドネシアの原料に中国での紡績とASEANでの織布・縫製を組み合わせた三国間の生産体制を構築。工場との直接取引を志向するブランド側に対し、工程全体のトレーサビリティーを確保できる強みを生かして対応する。

 また、地場大手スポーツブランドの「チャイナプラスワン」のニーズに対応し、同顧客向けにミャンマーでの縫製に乗り出した。

 ASEANへ進出した中国系工場の管理を現地で担えることも強みだ。日本の量販店など、価格志向の強い顧客を対象に対日直貿も開拓している。ASEANで初回生産を行い、追加分を機動力のある中国で生産するなど、生産地を使い分けた対応も進める。

 中国とASEANの生産機能を組み合わせ、顧客の用途や数量に応じて生産地を使い分ける。こうした生産・調達の組み立てと管理が、同社の競争力につながっている。(上海支局)