特集 アジアの繊維産業(5)/ベトナム/総合力で勝負する時代/人手不足への対処が課題

2026年09月29日 (火曜日)

 ベトナム統計局によると2026年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(推計値)は、前年同期比8・39%だった。第1四半期(7・95%)から成長率が加速した結果、26年上半期のGDP成長率(推計値)は8・18%となり、年間目標の10%には及ばないものの、前年同期の7・63%を上回った。

 他方、日本とベトナム間の繊維産業においては、2026年1~6月の日本のアパレル輸入統計で中国に次ぐ2位となったベトナムは、輸入額が3333億円(前年同期比1・1%増)だった一方、重量は7万3948㌧(同1・2%減)となった。数量が横ばいあるいは減少し、金額は増加するという傾向は今後さらに強まるとの見方が強い。安価な大ロット品の生産はカンボジアやバングラデシュ、ミャンマーへと移りつつあり、ベトナムでは高付加価値品へのシフトが進むためだ。

 在ベトナム日系繊維企業の直近業績はまだら模様だ。伊藤忠グループのプロミネント・ベトナムの26年4~9月期は前年同期比微増収とやや勢いを欠いた。大口が周辺国にシフトしていることが主な要因という。STXベトナムの1~6月は減収増益、帝人フロンティアベトナムの衣料品は減収減益、ヤギ・ベトナム、蝶理ベトナムも「苦戦」した。島田商事ベトナムの1~6月は微増収増益。対日、欧米向けともに伸びたが、大手SPA向けが減少した。

 「中国に続く対日縫製品の生産拠点」というベトナムの立ち位置に今のところ変化はない。ただ、上昇を続ける人件費や、「営業スタッフの採用が困難化」(ヤギ・ベトナム)、「工場スタッフ不足によってキャパシティーの確保に苦戦」(蝶理ベトナム)、「ワーカー確保難が深刻化」(STXベトナム)、「縫製現場を中心に熟練工、若年層の確保競争が厳しさを増している」(MNインターファッションベトナム)など、人手不足がいよいよ顕在化している。

 日系企業からは「糸や生地を含めた総合力で勝負する時代に入った」(伊藤忠グループのプロミネント・ベトナム)といった声が上がるとともに、「独自素材の開発が重要になる」(帝人フロンティアベトナム、クラボウ・ベトナム、シキボウ・ベトナムなど)と開発意欲がここにきて加速している。

 加えて、欧米など第三国向けや内販の拡大、産業資材分野への進出など「対日縫製品以外」を成長への活路に設定する動きが強まっている。

〈地産地消への対応急務〉

 環境配慮や納期短縮、コスト低減を目的に地産地消の流れも強まる。ベトナム政府は国産素材使用比率を50%まで引き上げる方針を示しており、地産地消の流れと合致する。日系各社もここに商機を見いだすとともに対応を急いでいる。商社からすれば糸・生地をどこで調達するかが課題となるが、「中国系の生地屋のベトナム進出が増えている」(STXベトナム)ことを歓迎する声や、韓国系、台湾系素材メーカーとの協力関係をより強固にする動きが見られる。

 シキボウ・ベトナムの26年1~6月期が前年同期比で売上高が2・5倍、利益が2倍になったのは、ユニチカトレーディングとの統合効果だけでなく、「糸・生地もベトナム国内で」という地産地消の流れを捉えたものだ。島田商事ベトナムも地産地消への対応を近年進めてきており、副資材の国内調達比率は90%に達した。

 付加価値化と地産地消への対応という二つの要素がベトナム事業の成長の鍵を握っていることは間違いなさそうだ。

〈パートナーとの連携深化/MNインターファッションベトナム〉

 MNインターファッションベトナムは、MNインターファッションのベトナム法人として、主に対日アパレル製品と生地のベトナム生産における生産管理、品質管理、サプライチェーン構築を包括的に行っている。ホーチミン本社とハノイ支店を構え、その拠点網を生かして現地の自社縫製工場、協力縫製工場、素材サプライヤーと緊密に連携しながら、対日以外にも内販やグローバル展開を進めている。

 直近の商況は、売上高、利益ともに前期比増収増益を確保している。スポーツ分野を中心とした主要アパレル顧客からのベトナム生産需要が継続していることと、ベトナム国内の生産背景における機能性付加価値製品需要への対応力を背景に、受注案件数が堅調であることがその理由だ。

 人手不足が顕在化している中、同社は、生産効率の向上、従業員の定着率を高めるための施策を実施しているパートナー工場との連携を重視している。

 高まる地産地消ニーズについては、ベトナム国内を中心とした高機能素材や環境配慮型素材の調達ルート拡充と、現地一貫生産スキームの提案力強化に重点を置く。

 日系企業全体の課題である内販に関しては、現地展示会への継続出展などを通じて、輸出プラットフォームとしての機能に加え、ベトナム国内市場向けの素材・製品供給の可能性を模索する。