特集 アジアの繊維産業(7)/わが社のアジア戦略/田村駒/一村産業/ブラザー工業/豊島/QTEC/メンケン
2026年09月29日 (火曜日)
〈一村産業/改めて素材開発に力〉
北陸産元兼生地商社の一村産業(大阪市北区)は、北陸産地を中心とした日本に、中国、インドネシア、ベトナム、インドという海外4極を加えた5極で糸・生地を生産している。コスト削減、リードタイム短縮を実現できる最適地をその都度見極め、顧客の要望に柔軟かつ迅速に対応するためだ。
上半期(2026年4~9月)は中東情勢の影響を大きく受け、繊維事業全体で前年同期比減収減益だった。中東民族衣装向けを中心とするポリエステル短繊維事業が減収減益となり、その生機生産が多い中国への発注も減った。インドネシアも同様の推移だった。
一方、ユニフォーム向けは好調だった。日本を軸に中国やベトナムへの発注も増えた。今後は国内の染色スペース不足や顧客の地産地消ニーズに応えてベトナムでの染色を増やす。中国での生機生産や染色も増やしていく。そのため織物に精通する技術開発スタッフを中国に駐在させた。「品質安定性をしっかりフォローしていく」
インド事業はポリエステル紡績糸の生産やシャツ地販売から始めた。その後は「中国勢の進出が加速している」ことや中東情勢の影響でやや停滞気味だが、今期中に生機生産の本格化を予定する。
下半期も中東情勢の影響は必至とみる。そのため中東民族衣装向けは低迷が続きそうとし、ユニフォーム向けも不透明感が出てきているという。
力を入れるのは素材開発。「見た目で日本品だと分かるぐらいの品質が必要」とし、それをもって中国勢の攻勢をかわしたい考えだ。実際、高通気の「アミド」、高伸縮の「ラクストリーマ」、各種機能を組み合わせられる「クワトロセブン」などの独自開発素材はいずれも売り上げを右肩上がりで伸ばしている。
〈田村駒/生地販売から活路開く〉
田村駒は、2026年度(27年3月期)を着地点とする中期経営計画で「サプライチェーン基盤の強化」を重点施策の一つに掲げ、海外拠点の整備を進める。
25年は、ホーチミンに次ぐベトナムの拠点としてハノイに事務所を開設した。
同社にとってベトナムは中国に続く主要な海外生産拠点であり、ホーチミンの生産体制の稼働状況は安定している。将来を見据え、ホーチミンの生産キャパをフォローできる体制をハノイに築いた。
営業活動を強化する狙いもある。ベトナムでの生地販売を本格化させるため、ベトナム国内のアパレル企業の本社が集積するハノイに事務所を置き、営業拠点としても活用する。
生地の販売を通じ、海外で新しい商圏を開拓する動きも見せている。中国の高付加価値素材を、欧米向けの生産を担うベトナムやバングラデシュの工場に販売し、それを足掛かりにしたビジネス展開を模索する。
田村駒独自の素材も、海外販売の主要な商材に位置付ける。25年に続いて26年もインドの大型展示会に出展し、トリコットシャツ地「コンフィール」や遮熱に特化した新規素材「オプティブロック」などをアピールした。
タイではアパレルOEM/ODMに力を注ぐ。タイ国内の高級セレクト向けブランドから受注を獲得するなど、着実に実績を重ねている。今後はASEAN諸国への事業展開も視野に入れる。
〈豊島/現法間連携深め販売強化へ〉
豊島は中国、香港、ベトナム、インドネシアの各現地法人の連携が深まっている。素材調達から縫製まで、異なる強みを生かして生産体制を構築し、アジア圏や欧米、日本を含む各市場で販売強化する。
藪輝彦常務執行役員は「若手を中心に各現地法人の連携が深まり、国や地域の特性を生かした製造・販売の組み立てが進んでいる」と話す。ベトナムとインドネシアは素材調達力を持つ一方、自国で調達できない素材を、中国を軸に他国でも調達して新たな受注につなげる。現地法人の素材担当だけでなく、製品担当との連携も深める。
豊島国際〈上海〉は中国内販強化と並行して、米国ロサンゼルス現地法人と連携しながら米国市場を開拓する。香港・豊島〈亜洲〉は豊島国際〈上海〉と連携し、欧州への販売を強化する。
豊島ベトナムやTYSMインドネシアを軸とするアジア圏では、現地企業への製品販売を強化していく。同地域で生産を委託する縫製工場との強い結びつきを生かし、素材の供給にも力を入れる。
日本から東南アジアや南アジアへの生産依頼増加に伴い、生産する国・地域の拡大や数量の増加に合わせて品質管理体制の強化も取り組む。豊島国際が培った管理手法や基準を展開し、各国でも同水準の管理体制を維持できるようにする。日本市場に合わせた品質管理のインフラを整える。
〈ブラザー工業/非アパレル向けを強化〉
ブラザー工業の工業用ミシン事業は、エアバッグなど非アパレル向けの拡大に取り組む。アジア市場では非アパレル向けがけん引役となっており、今後の成長が見込める。人工知能(AI)の活用を見据え基盤も整える。
今期(2027年3月期)のアジアでの販売は地域によって濃淡がある。ベトナム向けは長らくフォローしてきた日系大手アパレル向けの案件がまとまり、近年にない伸びを見せた。一方、インドやバングラデシュなどは苦戦を強いられた。
地域差はあるものの、全体的には自動車関連の非アパレル向けがけん引役だ。特にエアバッグ関連は堅調で、同社の販売もエアバッグ向けや安全部品向けが寄与する。半面、アパレル市場では設備投資に慎重な動きが見られる。
非アパレル向けの成長を目指す。エアバッグ市場を中心に独自のデジタル技術「デジフレックスチューン」を搭載した「ネクシオBAS―K」シリーズの拡販と、一部事業を譲り受けたコンラート・ブッシュとの連携によるソリューション提案を進める。
AIの活用も視野に入れる。デジフレックスチューンや生産の「見える化」に貢献する「ネクシオシステム」などを通じて、ミシンの状態や稼働データを蓄積・デジタル化する。将来的には、蓄積したデータをAIで分析し、不良の予兆検知や品質改善、生産の最適化につなげる考えだ。
〈メンケン/カンボジアで存在感高める〉
メンケン品質検査協会(メンケン)のカンボジア試験センターが存在感を高めている。日本向けの衣料品を生産する中国系企業を中心に、試験・検査の件数が増えている。中国人駐在員が在籍し、中国語でコミュニケーションを取れることが強みの一つ。サービスや試験精度の向上を図り、継続成長につなげる。
カンボジア試験センターは、カンボジア南東部、ベトナムとの国境に近いバベット市に所在する。取引関係のあった顧客が生産を始める際、メンケンに進出を要請し、その声に応える形で、2017年10月に開設した。
同国の繊維産業は縫製が主体で、カンボジア試験センターも外観検査、耐洗濯性試験、ホルマリン試験を中心とする。以前はベトナムなどでの試験・検査が多かったが、新型コロナウイルス禍以降はカンボジア国内で行うケースが目立ってきた。
同センターは着実に規模を拡大し、26年1~6月も前年同期比10%増収を確保した。年間でも前年比12~13%増を目指す。中国人駐在員2人が在籍し、中国系企業とも円滑なコミュニケーションができることなどが評価されている。日本人も1人駐在している。
中長期的にも持続的な成長を目指すとし、試験機の拡充を含めて能力の拡大を図るほか、ローカルスタッフの技能向上で試験精度を高めていく。
〈QTEC/NSの育成に注力〉
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、海外(アジア)での事業を拡大している。事業環境は厳しいが、信頼性や対応力の強化で試験・検査の依頼件数を増やしている。機能性試験の充実、ナショナルスタッフ(NS)の育成に力を入れ、継続的な成長を目指す。
2026年上半期(4~9月)の売上高は、中国の各拠点がおおむね前年同期比微増で推移している。需要が拡大している機能性試験に対して、試験機の導入を含めて積極的に応じることで受注が拡大しているほか、それぞれが強みを生かした取り組みを進めていることなどが奏功している。
年間でも上半期と同水準か、それ以上の売上高を目標とし、試験機の拡充など対応力を強化する。NSについては全体のレベルアップのほか、営業専任職の育成に力を入れる。人材育成は継続して取り組んでおり、NSの意識も高いという。
ベトナム試験センターは、日本と同様の試験ができるほか、欧米規格の試験や対米輸出向け試験にも対応していることが強みになっている。26年上半期も堅調に推移し、多くの依頼が寄せられた。下半期は効率化などで処理能力を向上させる。
ダッカ試験センターの26年上半期は、好調だった25年上半期を上回る水準で推移している。堅ろう度や物性など一般試験を中心に既存顧客からのオーダーが増えた。





