不織布新書26秋(1)/中小がけん引する時代に/大手の構造改革進む中で
2026年09月30日 (水曜日)
日本の不織布生産量が減少を続けている。合繊メーカーなど大手企業の構造改革によるものだ。その中で中小企業の役割が高まっており、再び不織布業界を中小企業がけん引する時代に戻りつつある。
〈中小でも転嫁進む/安定供給を第一義に〉
合繊メーカーや綿紡績など大手企業の不織布事業縮小が顕著だ。スパンレース不織布(SL)ではクラレ、日清紡テキスタイルが撤退し、ユニチカは瑞光に事業売却した。スパンボンド不織布(SB)ではユニチカがセーレンに事業を売却、東レや三井化学と旭化成の合弁会社、エム・エーライフマテリアルズ(東京都中央区)も構造改革を進める。
その中で、中小企業の重要性が増す。日本の不織布産業は元々、中小企業から始まった。衣料用繊維が落ち込む中で繊維大手企業も成長する不織布を強化、規模を拡大していった。
しかし、衣料用繊維同様、輸入不織布との競合や国内需要の落ち込みから低採算に陥った不織布の構造改革を推進。結果、中小の存在価値が高まっている。
その中小企業にとって今年大きな課題となったのが、中東情勢不安に伴う原燃料価格のさらなる急騰だ。原料比率が高い(付加価値が低い)不織布だけに、原料コスト上昇は死活問題。今回は原材料調達難の可能性もあり、原材料分の転嫁はかなり進んだ。「今回はほぼ言い値に近い転嫁ができた」(加工メーカー)、「価格転嫁は一定のめどが立った」「中東情勢もあり、転嫁しやすかった」(短繊維不織布メーカー)など一定の成果はあったようだ。
それが最終製品にどう反映されるか不明だが、これまで中小の不織布メーカーは合繊メーカーなど大手の原料供給先と、自動車メーカーのような大手の販売先の中間に位置し、価格転嫁に苦労していた。そう考えると、今回は値決めにおける転換期になったかもしれない。
収益性も改善したが、合繊メーカーの生産縮小や海外生産品への転換から不良品の発生という問題も顕在化する。特に短繊維不織布は、原料となる化合繊短繊維が品質に与える影響が大きい。それだけに原料変更への対応は今後の継続課題になるだろう。
〈生産は依然低調/1~6月は2.5%減〉
価格転嫁は進んだが、生産は芳しくない。経済産業省の生産動態統計によると、2026年1~6月の不織布生産量は前年同期比2・5%減の12万6678トンだった。4月(1・2%増)、6月(0・9%増)は前年を上回ったが、その他の月は前年割れ。
用途別では衣料用(9・3%増)、土木・建築用(8.1%増)を除いて前年を割り込んだ。芯地や中綿など衣料用は規模が小さく全体の0・5%弱のため、大勢に影響がない。土木・建築用も同様で全体の6%弱に過ぎない。
逆に量的に多い生活資材、医療衛材がそれぞれ5・0%減、2・8%減と引き続き減産が続く。生活資材、医療衛材は合わせて50%超を占めるだけに全体に響いた。
生活資材はSLの主力用途だが、輸入品との競合が激しい。財務省・通関統計によると、SLが多いと想定されるレーヨン短繊維不織布輸入量は26年1~6月は1・9%増の3万5409トン(7面参照)。この水準で推移すれば年間7万トン超。ちなみに経済産業省が製法別の生産統計を最後に発表した23年のSL生産量は4万3千トン強だった。
医療衛材は紙おむつなど衛生材料の国内生産の落ち込みが大きい。経済産業省・生産動態統計によると、26年1~6月の紙おむつ生産量は0・9%減の33万3403トン。これは年換算すると直近のピークである17年に比べると26%強の減。当然、SB需要は減る。さらに新型コロナウイルス禍のマスクバブルから落ち着いたメルトブロー不織布が減るのも自然な流れではある。
SBやSLの落ち込みがどこで止まるのか。下げ止まった時点が、日本の不織布産業にとって適正な生産規模と言える。
〈日本不織布協会 会長 米澤 秀次 氏/会員交流の場を拡充〉
中東情勢悪化による原燃料価格高騰は、不織布業界に大きな影響を与えた。一方で供給不安から消費者が不織布製品を備蓄する動きも散見される。市場環境の先行きが不透明となる中、不織布業界として取り組むべき課題などについて日本不織布協会(ANNA)の米澤秀次会長(倉敷繊維加工社長)に聞いた。
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――現在の不織布市況をどのように見ていますか。
国内の不織布生産は減少基調が続いていましたが、今年に入って単月で増加に転じる月が出てきました。ようやく減少傾向に底入れ感が出てきたといえます。用途別に見ると車両用が下げ止まっており、衛材用途などは回復傾向にあります。
――中東情勢悪化の影響は。
原燃料価格が高騰したことで、価格転嫁を進めるしかありません。ただ、値上げによる需要減退が心配です。今後の市況をよく見極める必要があります。そのために会員間の情報共有も進めます。
――今年度の取り組みの現状は。
7月から若手育成の場である「ANNA塾」も第15期がスタートしました。今回はこれまで大阪で実施していた合宿研修を信州大学繊維学部で行うのが新しい取り組みです。
また、来年6月には韓国・ソウルでアジア不織布産業総合展示会・会議「ANEX2027」が開催されます。ここにANNAが「ジャパンブース」を設け、共同出展します。現在、会員企業に参加を呼び掛けているところです。あれだけ大きな展示会ですから、単独で出展しても埋没してしまう可能性があります。ジャパンブースで共同出展する方が出展効果は大きくなると思います。
――今後の課題は。
ANNAの会員が増加する中で、新しい会員を含めた交流の場を求める声があります。ANNA塾はありますが、これは若手が対象。新しく会員になった企業の中堅クラスが交流する場も必要でしょう。そこで会員企業の中堅クラスが参加できる交流の場を作ることを検討しています。





