ジーンズ別冊26AW(8)/デニム関連有力企業に聞く

2026年09月30日 (水曜日)

〈ショーワ 統括本部長 高杉 哲朗 氏/稼働率高める〉

 引き続きデニムへの引き合いは多く、受注自体は堅調です。産地内の他工場と同様、セルビッヂデニムへのニーズは高い。保有するシャトル織機10台で対応していますが、3年待ちのような状況となっています。

 当社の喫緊の課題は納期面の解消です。ドローイングマシンの故障によって、一時的に生産性が低下しています。機械なら半日ほどですむ作業が、人の手では2日もかかってしまいます。

 マシンは海外製で、当社で独自に改造を加えたもの。故障の原因が分からず、直すまでが大変です。機械さえ動けばもっと受注を取っていけるのですが。

 今後は稼働率を上げていくしかありません。準備段階を含め、全体でスムーズに仕事が進められるようにしていきます。

 人手不足も課題です。4月以降、4人が入社してくれ、生産現場の状況は改善されましたが、まだ人は足りていません。将来的なことを考えると、単なるワーカーだけでなく、技術をしっかりと受け継いでくれるような人材があと2、3人は欲しいと思っています。

 発信にも力を入れます。デニムに特化した生地展示会「デニム・プルミエール・ヴィジョン(PV)」が今月9、10日、日本で初めて開催されました。面白いと思い、当社も出展して生地をアピールしました。

 会社発信という点では、2024年から、本社敷地内でマルシェを開いています。飲食店の出店のほか、当社の生地を使った作家による雑貨類の販売などを行っており、地域の人たちとの交流も生まれてきました。人材採用につながるケースも出てきており、継続したい取り組みです。

〈コトセン 社長 渡邉 将史 氏/連携した開発を推進〉

 2026年8月期の売上高は前の期比15%増となりました。値上げをしたこともありますが、その上昇分を除いても10%の増収でした。

 生機の入荷量が増えています。定番生地はありつつも、差別化を図るために、生地も素材からブラッシュアップするケースが増えており、加工の難易度は上がっています。織布工場へのフィードバックに加え、モノ作りへの相談を受けることも増えており、当社としても日々チャレンジしながら仕事に当たっています。モノ作りは協力しなければ難しい時代になってきました。

 今期も引き続き、取引先各社と連携した開発を進めます。当社の特殊な加工もまだ伝わり切っていない部分があり、発信していきたいです。

 中東情勢が悪化した影響で、重油の供給が不安定になった時期がありました。この経験から、6月に重油を使用する炉筒煙管ボイラーの使用をやめ、貫流ガスボイラーを2台導入しました。ガスの単価は高いですが、供給は安定しています。また、もし重油が入らなくなったとしても、80%の稼働率は維持できます。ゆくゆくは、すべてのボイラーをガスに変えたいと考えています。

 新しい取り組みにも挑戦します。整理加工では、生地の品質を保つために検査、試験を行います。データを取った後の生地は不要になり、従来は廃棄していました。

 この生地を再活用するため、裁断片などを独自の開繊・反毛技術で再資源化するクラボウの「ループラス」を活用して40~50反相当の糸を作りました。

 この糸を使い、山足織物(岡山県井原市)と協力して5品番の生地を開発しました。受注生産のような形で販売していきます。

〈ベティスミス 社長 大島 康弘 氏/産地の若手育てる〉

 2026年6月期は、インバウンド需要を捉えて増収増益でした。円安の恩恵もあって海外卸も増えつつあります。現状、業績は好調に推移していますが、必ずしも国内の景気が良いわけではありません。インバウンドによって期せずして売り上げが伸びたようなもので、手放しに喜べない。これまで積み上げてきたものを継続しながら、内容は進化させていきたい。

 その一つとして、日本最古のジーンズ工場を含む、ジーンズミュージアム&ヴィレッジ(岡山県倉敷市)を維持・存続させながら、来春にはミュージアムを刷新したいと考えています。

 人材育成も最重要課題として取り組みます。7月には、「繊維マイスター」「繊維プレマイスター」の認定に必要な要件の一つとなる「ジーンズ縫製1、2級」の認定試験を当社従業員3人が受けました。無事3人とも合格しました。今後も従業員の技術向上を後押しします。

 思い返せば、倉敷市児島が「ジーンズのまち」として発展できたのは、“人の力”が大きかった。さまざまな技術や知見を習得した人材が、ライフステージの変化などを機に転職や独立したことが、産地の分業体制の構築を促しました。結果として産地の強さにつながったと考えています。

 会社に頼らずとも収入を得られるだけの技術と知見を習得できるよう人材育成を進め、希望する人には独立の支援もしています。

 若い人たちにとっても働くメリットになることに加え、繊維産業が選ばれる職業になることにもつながるのではないでしょうか。10年後を見据え、“産地の若手”を育てます。

〈ドミンゴ 社長 内田 公也 氏/組織刷新し卸売り改めて強化〉

 今期(2027年3月期)に入り、4、5月は販売が堅調に推移しましたが、6月は台風などの気候要因で卸売りは苦戦しました。7月以降は上向いており、良いムードにはなってきています。

 昨今は夏が長く、10月もTシャツで過ごせる日が多いなど、服の売りにくさがあります。シーズン構成やアイテムを組み直すなどして、試行錯誤しながらやっています。

 当社の売り上げの7割は卸売りです。消費者の財布のひもが固くなっていることや、卸先の経営が慎重になってくるなど、ビジネスは厳しくなってきました。今年4月に新しい営業部長を任命し、前営業部長を販売部門の統括に据えるなど、組織を刷新しました。卸売りを改めて強化していきます。また、レディースブランド「Brocante」(ブロカント)のMD担当者を全ブランドのMD担当にもしました。

 展示会の質もより高めていこうとしています。大阪の展示会はいつも事務所で行っていましたが、今回、外部のスペースで実施しました。紹介するコンテンツを増やすとともに、陳列にもこだわりました。

 国内だけでなく、海外への販売も、展示会への出展によって今後広げていきます。

 商品においては、セルビッヂを含め、デニム商品全体で追い風を感じています。ジーンズは定番商品として提案するのに向いています。26秋冬として「D.M.G」から、創立80周年記念モデルのジーンズを打ち出します。日常使いできる履き心地の良いジーンズで、しっかり受注も付きました。当社らしさのある商品をどう評価してもらえるのか楽しみです。

〈コダマコーポレーション 専務 由水 茂雄 氏/チャネルに合った商品開発を〉

 前期(2026年7月期)は売上高が前期比7~8%減の27億円となりました。6月の台風で追い込みをかけられず、7月初旬も想定以上に気温が低かったことでリカバリーできませんでした。天候要因で予想以上に苦戦しましたね。

 一方で、時間をかけながら在庫や生産量の適正化を進めたこともあり、増益を確保しました。無駄な見切りが減るなど、体質改善が進みました。今期も売り上げの追求以上に、利益の適正化に力を入れます。

 販売先チャネルの見直しも進めています。主要販路であるGMS向けはまだ母数が大きいものの、近年はネット販売企業や専門店向けの商売が増えてきており、販売の軸になってきました。ネット販売企業向けは小口が多く、手間暇はかかりますが、各チャネルに合った商品開発をしながら販売につなげていきたいです。

 合繊素材から置き換わるまでには至っていませんが、アメカジの流れもあり、デニムをはじめ、天然素材への回帰は確実に来ています。これまでストレッチが入っていないと売れなかったデニムやチノパンツ系も綿100%のものが売れてきています。

 円安傾向が継続する中、ミャンマーやバングラデシュなど、ますますASEAN周辺地域での生産が重要になってきます。ボリュームゾーンの商品の生産は同地域に集約させるなど、いかに為替変動によるコスト上昇分を抑えられるかが試されます。

 ただ、ボリュームゾーンの商品だけではネット販売企業などは満足してくれません。付加価値の高い魅力ある商品は小回りの利く中国で作るなど、生産地を使い分けながら提案していきます。

〈アン・ドゥー 社長 中村 二郎 氏/価値あるモノを価値ある価格で〉

 価値あるモノを価値ある価格で提供する方針を徹底します。大手総合衣料販売チェーンのPB向けに長年供給してきた、接触冷感や吸湿速乾などの機能を備えた夏向けのジーンズと、裏起毛で高い保温性を持つ冬向けジーンズの二つは来年、さらなる改良の上で価値を高めて投入します。

 季節商材とは別軸の、通年活躍する機能を備えたジーンズの開発も進めています。

 さらに、カイハラの日本製生地を使いながら3990円という価格訴求力を持つジーンズも発売予定です。今後も、高付加価値ジーンズを手に取りやすい価格で提供することを目指して開発を進めます。

 私のアイデアを形にできる開発力を持った生産背景も強みの一つです。

 デニムは特殊な素材で、ほかの生地とは異なります。価格が安いだけで機能面など価値がなければ売れません。安かろう悪かろうでは見向きもされないのではないでしょうか。

 環境配慮への取り組みも引き続き注力していきます。その一つが、繊維製品の国際的な安全基準「エコテックススタンダード100」の認証取得です。「ジーンズで取得するのは難しい」と言われながらも、18年にジーンズ製品としては国内で初めて取得できました。当社の商品はほぼ同基準認証商品です。

 直近では、服飾資材製造卸のYKKスナップファスナー(東京都台東区)が開発した有害物質不使用のメッキ技術「アクロプレーティング」を採用しました。サステイナビリティーへ貢献できる製品をこれからも増やしていきます。