ごえんぼう
2026年10月05日 (月曜日)
ようやく朝の空気が冷え込んできた。しまい込んだ上着に手を伸ばすが、日中はまだまだ暖かい。着るか、持って出るか。季節の境目には、服を一枚選ぶにも空模様が気にかかる▼平安時代の上流貴族の邸宅では、女房装束の袖口や裾を御簾の下からのぞかせる「打出」という風習があった。赤澤真理氏は論文「建築空間の境界と打出の装束」(「国文学研究資料館紀要」2018年)で、儀礼空間を飾り、女性の座を示す機能があったと指摘する▼御簾が内と外を隔てても、重ねた衣の鮮やかな色は外からも見える。装束は建物を彩るしつらいにもなった。色の取り合わせが、御簾の内に設けた女性の座と季節をほのかに伝えたのだろう▼現代の街でも、上着の袖からのぞくシャツや襟元の布に、季節は表れる。ふと誰かの装いに秋を見つけ、自分も好きな色を一枚重ねる。袖口からのぞく何気ない小さな色が、街の景色を秋へと誘う。





