繊維ニュース

大阪市立美術館/紡績王が遺した〝幻の宝〟/国宝など故武藤治太氏が遺贈

2026年10月06日 (火曜日)

 戦前の鐘紡の隆盛を築いた実業家であり、日本美術・東洋美術のコレクターとしても名をはせた武藤山治のコレクションを紹介する特別展「復活!武藤山治コレクション―国宝を見出した紡績王」が2027年4月24日から6月20日まで大阪市立美術館(大阪市天王寺区)で開催される。武藤山治の嫡孫である故武藤治太氏(元大和紡績〈現・ダイワボウホールディング〉社長、前國民會舘会長)が、このほど遺贈した国宝2件、重要文化財4件が披露される。

 武藤山治は独自の鑑識眼で多くの古美術品を収集していた。仏教美術のほか、特に与謝蕪村の文人画をいち早く評価し、精力的に収集していたことで知られる。

 個人コレクションは、コレクター没後に散逸するケースが多いが、武藤山治コレクションは、山治没後も家族が保存に努めたことから美術専門家の間で〝幻のコレクション〟として知られていた。その後、戦前には山治の長男である金太氏が大阪市立美術館に「尾形光琳関係資料 小西家伝来」を寄贈したことから関係が生まれ、17年から数度にわたり武藤家から美術品が遺贈・寄贈された。これら美術品は現在、「武藤山治コレクション」として統合して紹介している。その一つ「物語下絵料紙金光明経巻第二」は国宝に指定されている。

 こうした中、このほど故武藤治太氏から新たに国宝2件、重要文化財4件が遺贈された。国宝と重要文化財合わせて6件が公立美術館に遺贈されるのは前代未聞であり、日本の美術界にとっても大きなニュースとなった。

 寄贈されたのは、与謝蕪村の文人画の最高傑作とされる「夜色楼台図」(1幅 江戸時代 18世紀)、浄土思想と日本の美意識の原点ともいえる「法華経(久能寺経)」(4巻 平安時代 12世紀)の国宝2件と、「五秘密像」(1幅 鎌倉時代 13世紀)、「枯木図」(子庭祖栢 2幅 中国・元時代 14世紀)、「異国降伏御祈供養注進案」(1巻 鎌倉時代 13~14世紀)、「鑑真和上像」(1幅 鎌倉時代 13~14世紀)の重要文化財4件。

 特別展は、これら作品を披露すると同時に、山治が鐘紡社長時代に山科工場(京都市)で収集し、女子美術大学美術館(相模原市)が所蔵する染織コレクションも展示し、繊維産業と美術のつながりも再検討できる内容となっている。