台北紡織展を終えて(前)

2026年10月15日 (木曜日)

W杯向け高機能材追い風に

 先進国市場の不透明感が続く中、台湾の繊維産業はスポーツ・アウトドア向け高機能素材で存在感を示している。2026年FIFAワールドカップ(W杯)では、出場48チームのうち37チームのユニフォームの供給に台湾企業が関わった。海外生産の再配置や人工知能(AI)活用でも競争力を高めている。「台北紡織展」(TITAS)を主催した紡拓会の黄偉基秘書長に、商況や戦略を聞いた。

(台北=岩下祐一)

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  ――市場環境は。

 この2年は厳しい状況が続いている。米国ではインフレでブランドの販売数量が減り、欧州ではエネルギーコストの高止まりが経済を圧迫している。27年も先進国市場は不確実性が続くだろう。日本も円安で不安定だ。

  ――その中で、台湾が健闘するのは。

 われわれの強みはスポーツ・アウトドア向けの高機能素材で、世界的ブランドの主要サプライヤーだ。

 好調だったのが、今年のW杯向けだ。「アディダス」が14、「ナイキ」が12、「プーマ」が11の計37チームのユニフォームを担当し、この全てのサプライチェーンに台湾の繊維企業が関わった。

 アディダスには、遠東新世紀(ファーイースタン・ニューセンチュリー)が吸湿・温度調整機能の繊維やリサイクルポリエステルを使った糸や生地を供給し、22チームが着用した。ナイキとプーマには、新光合成繊維(シンコン)がリサイクルのポリエステルやナイロンを供給した。

  ――W杯向けに求められる機能は。

 吸湿速乾性や超軽量性、温度調整機能が欠かせず、こうした素材技術が台湾企業にはある。アディダスは決勝に進んだスペインとアルゼンチンの両チームを担当した。世界最大級のイベントは、台湾の技術力を示す絶好の機会だ。

  ――販売規模は。

 アディダスのユニフォームの販売量は、コンシューマー向けを含め1700万枚を超え、22年大会の約4倍になった。同社の大会関連売上高は、ユニフォームなどを含め約15億¥文字(C-12032)規模とされる。

  ――台湾メーカーの生産拠点の動きは。

 インドネシアへの展開が進んでいる。背景の一つが、ベトナムの人件費上昇だ。ホーチミン周辺の月額賃金は500㌦近くに達した。ジャワ島中部のソロなどには、その半額程度の地域もあり、競争力がある。

 ベトナム北部ではエレクトロニクス産業への投資が急増し、繊維は人材獲得でも賃金面で太刀打ちしにくい。ベトナムで生産を続ける企業は、自動化やAIへの投資で生産性を高めて生き残りを図っている。

  ――今回のTITASのテーマだったAIやデジタル化の進捗(しんちょく)は。

 企業が投資を加速させており、政府も中小企業向けAI投資優遇策や、大企業向けAI関連融資の金利引き下げで後押ししている。

 編み物から一貫で製品を手掛ける旭栄集団(ニュー・ワイド・グループ)はベンチマーク企業だ。「AI執行総監」を置き、全部門の業務プロセスを効率化するソリューションを開発している。今後、大きな成果が期待できる。