協業が開く新たな可能性―浅野撚糸×梶原加奈子氏― 後
2026年10月16日 (金曜日)
時流の変化に対応し、開発力磨く
テキスタイルデザイナーでカジハラデザインスタジオ(東京都中央区)CEOの梶原加奈子氏と浅野撚糸(岐阜県安八町)の協業が本格化したのは2022年12月ごろからだった。24年2月に開設した東京・南青山の「スーパーゼロラボ」(SZL)を展示・商談・販売拠点として位置付け、監修や運営に関わった。
梶原氏は特殊撚糸「スーパーゼロ」の特徴を「空気を含んだような柔らかさと軽さ、肌に触れた時の心地よさ」と表現する。アパレル向けの使用にも可能性を感じていたとし、高付加価値素材として、海外ラグジュアリー市場での採用を目指して訴求した。海外の販路を構築したい浅野撚糸の狙いと重なった。
SZLの運営と並行して、スーパーゼロの特徴を生かした生地の開発を進めた。細番手の綿糸をスーパーゼロ加工し、高密度に製織した生地や、防縮ウール糸をスーパーゼロ加工し、リブ編みした編み地などをそろえた。
これらの生地は欧州ハイメゾンから高い評価を受けた。ハイメゾンの関係者が来日した際はSZLで商談を進め、翌年には生地の受注につながった。SZLはスーパーゼロの特徴を体感する場としての役割を果たした。
その後、欧州だけでなく中国のアパレル企業にも生地が採用され、スーパーゼロ加工糸の輸出も始まった。国内ではスタイレムと浅野撚糸との共同開発による生地ブランド「ソライト」の展開にも発展した。
梶原氏はSZLの運営や浅野撚糸との協業を通じて「スーパーゼロを国内外のアパレル業界に認知してもらうという点で、一定の成果を上げることができた」と総括する。SZLの閉店で協業を終えるのではなく、次の段階に向かう。
今後、浅野撚糸はさまざまな撚糸技術を生かし、開発の幅を広げる。梶原氏は海外に向けてスーパーゼロの特徴を生かした生地とアパレルの開発・提案を深化させる。そのためには「時代や市場の変化に合わせて、新しい開発と提案を続けることが必要だ」(梶原氏)。タオルを基盤としたライフスタイル領域とアパレル領域のそれぞれに適した形で、新製品の展開を進めていく。
このほど、梶原氏はアパレルブランド「カナコ カジハラ」を立ち上げた。肌が呼吸するような心地よさ、触れた瞬間に感覚が開くような素材の特徴を生かし、服として表現することをコンセプトとした。カナコ カジハラに向けた素材開発も共同で進める。
梶原氏が目指すのは「工場の未来をつくること」。技術開発により魅力ある糸・生地・製品を生み出し、国内外の市場につないでいく。両者の協業に終わりはなく、さらなる高みを目指す。
(おわり)





