「台北紡織展」で存在感/台湾区人造纖維製造工業同業公会の各社/T2Tや機能素材を積極提案

2026年10月15日 (木曜日)

 台湾区人造纖維製造工業同業公会は、台湾の化学繊維関連企業で構成する団体だ。6~8日に開かれた「台北紡織展」(TITAS)では、会員企業が繊維to繊維(T2T)や機能性素材を提案した。会員各社の出展内容を振り返る。(台北=岩下祐一)

〈新光合繊/新型弾性繊維「ネオラスト」〉

 ポリエステルチップから長繊維、加工糸まで手掛ける新光合成繊維(シンコウゴウセン)は、スパンデックスの代替を狙うポリエステル系ストレッチ繊維「NEOLAST」(ネオラスト)を打ち出した。

 同素材は、無溶剤の溶融紡糸法で製造する。衣類をポリエステルの単一素材にでき、T2Tが容易になる。6月から量産を始め、年産600トンの体制を整えた。米スポーツブランド「アンダーアーマー」にも採用されている。

 同社は、11月11、12日に石川県金沢で開かれる「北陸ヤーンフェア2026」に初出展する。日本向けはタイヤコードなど産業資材が安定しており、ミシン糸や建築用ネットなども手掛ける。高機能品とカスタマイズ対応で日本の顧客拡大を目指す。

〈遠東新世紀/W杯実績の異形断面糸〉

 ポリエステルを主力に、原料から長繊維、編み物、衣料まで一貫展開する遠東新世紀(ファーイースタン・ニューセンチュリー)は、スポーツ向け機能素材やT2Tを見据えた単一素材化を訴求した。

 主力は、花びら型の異形断面糸「FENC TopCool Petal」(FENCトップクール・ペタル)。吸汗速乾性や軽量性、柔らかな風合いに加え、汗でぬれた際のべた付きと透けを抑える機能を備える。2026年ワールドカップの日本を含む22の代表チームのユニフォームに採用された。

 日本向け事業は、日本ブランドのASEAN生産向けの糸の供給が中心。25年5月に稼働したベトナム・ホーチミン市の新工場を機に、日本向けの拡大を目指す。

〈台湾富綢纖維/天然素材調や高耐久素材〉

 ポリエステル長繊維の加工糸・織布一貫メーカー、台湾富綢纖維(タイワンフーチョウセンイ)は、自社開発の弾性複合加工糸を活用した天然素材調の軽量素材や快適素材、高耐久素材、デニム調の意匠素材、汗染み防止素材を提案した。

 軽量素材は、綿・麻・ウールの風合いを表現した。快適素材は、接触冷感に加え、湿気に反応し生地組織が変化する素材を開発。高耐久素材はワークウエア向けで、10万回以上の摩耗試験に耐える。汗染み防止素材は、糸と生地組織の両方で機能を実現した。

 同社も「北陸ヤーンフェア2026」に初出展する。ブランドや商社との取り引き拡大を目指す。日本向けは売り上げの約30~35%を占める主要市場だ。

〈聚隆繊維/汗染み防止ナイロン糸〉

 ナイロンの原糸から加工糸まで手掛ける聚隆繊維(ジューロン)は、機能性と循環を組み合わせた素材を提案した。

 「隠痕糸」は、発汗時の汗染みを目立ちにくくするナイロン糸。昨年の初出展以来、1年以上にわたり反響が続く。染色ムラを大幅に抑え、UVカット性や着用時の快適性も備える。

 「冷淬糸」は、熱伝導性に優れたポリエステル素材で、高温環境下でも涼感が持続することを特徴とする。接触冷感の指標Q―MAXは0・23。軽量性や染色堅ろう度も優れている。

 日本向けについては、商社経由で水ろ過フィルター向けのポリプロピレン糸を中心に手掛ける。日本ブランドには、環境配慮型素材の提案を進めている。

〈弘裕/漁網再生など循環素材〉

 機能性織物メーカーの弘裕(ホンユー)は、資源循環と機能性を組み合わせた素材提案を強めた。欧州を中心に高まる環境配慮素材への需要に対応する。

 使用済み漁網を回収・再生したナイロン素材に加え、生産工程で生じる裁断くずや端材を再利用した素材を紹介。植物由来原料を使うバイオベース素材や、T2T素材も提案した。バッグ、アウトドア用品、機能衣料、インテリアなど幅広い用途を想定し、環境対応と実用性の両立を訴える。

 日本市場の開拓にも注力する。日射や強風、豪雨も想定した屋外用ロールスクリーンを提案。台風の多い日本の住宅やホテルなどへの展開を見込む。

〈集盛実業/「濃染ナイロン66」チップ〉

 ナイロン糸を主力とする集盛実業(ジーシェン)は、「濃染ナイロン66」などを提案した。

 濃染チップは、分子末端のアミノ基量を高め、少ない染料で漆黒や濃紺をムラなく表現できる。2027年1月に量産を始める予定だ。スパンデックスを使わない高伸縮糸「SOUFFLEXZ」(ソフレックス)も紹介した。

 防水透湿膜には、回収した漁網を化学改質して生産するアルコール可溶性ナイロン樹脂製を使う。生地、膜、ミシン糸をナイロンで統一でき、T2Tにつなげられる。

 同社は、ナイロン6、66とポリエステルの紡糸・加工糸を手掛け、ナイロン66の繊維用チップを自社重合する台湾唯一のメーカー。日本市場を重視し、「北陸ヤーンフェア」に継続出展する。

〈代表インタビュー/台湾区人造纖維製造工業同業公会 莊燿銘 副理事長/分業体制と個別対応に強み〉

  ――台湾繊維産業の特徴は。

 台湾の繊維産業は戦後に発展し、2000年ごろまでは天然繊維から化学繊維へと事業領域を広げ、原料から川下までのサプライチェーンを構築した。00年以降は、中国企業の台頭による価格競争の激化を受け、化学繊維を主軸に機能性素材へと大きくかじを切った。20年以降は環境対応と高機能化をさらに加速し、「低炭素化」「高付加価値化」「デジタル転換」を産業の重点に据えている。

  ――台湾企業の強みと、日本との連携の可能性は。

 台湾には原料から製品まで一貫生産する大手企業がある一方、加工糸や織布などに特化した専門企業も多い。こうした分業体制が、小ロット・短納期や顧客ごとのオーダーメード生産を可能にしている。顧客の営業機密や開発情報を守り、長期的な協力関係を築くなど、信頼を重んじる文化も強みだ。

 日本には、基礎研究を起点とする先端素材開発や生地開発、川下の製品づくりに強みを持つ企業があり、世界的なブランドも少なくない。日本企業の技術力や製品開発力に、台湾の高機能原料・糸・生地の供給力と柔軟な生産対応力を組み合わせれば、日本側の多様なニーズに応じた素材開発や製品化が可能になる。台湾の分業体制と小ロット対応力は、台湾と日本の協業を支える基盤だ。

  ――北陸ヤーンフェアへの期待は。今回で台湾企業は3回目の参加となる。

 日本企業との接点を広げ、台湾の企業が持つ素材や技術、加工対応力を知ってもらう重要な機会だ。公会の会員企業は繊維原料の開発力を持ち、加工糸の多様な設計・加工にも取り組んでいる。

 商談や技術交流を通じて、日本企業との共同開発や継続的な取り引きにつなげたい。単なる素材紹介にとどまらず、長期的な協力関係を築く場として活用していく。

  ――28年には公会理事長に就任する予定だ。今後の抱負と、30年に台湾で開催するアジア化繊会議への意気込みは。

 会員企業を支えるプラットフォームとして、企業間連携を促すとともに、政府との対話や海外との交流を通じて台湾繊維産業全体の発展に貢献したい。30年のアジア化繊会議では、台湾の競争力を各国に示すとともに、参加国間の調整役もしっかり担いたい。台湾だけでなく、アジアの化学繊維産業全体が共に発展できる場にしたい。