日系生地商社――中国内販10年、その軌跡と次の商機(下)

2026年10月21日 (水曜日)

スポーツシフトと現地開発

 日系生地商社はここ数年、地場スポーツ・アウトドアブランドの開拓に力を入れている。消費低迷でファッション市場が勢いを欠く一方、スポーツ・アウトドアブランドは相対的に堅調に推移している。ファッションブランドの一部が、スポーツ・アウトドア分野に参入する動きも背景にある。

 スポーツ向けの開拓は、単なる販売先の拡大を意味するわけではない。ファッション向けとは技術面でも異なる要求への対応が必要となり、各社は開発・生産体制の見直しを進めている。

 サンウェル(大阪市中央区)の現地法人、燦日泉〈上海〉貿易は、2025年からスポーツ・アウトドア向けの採用実績を積み、26年上半期には地場大手ブランド向けで数万㍍規模の受注が動いた。植山織物(兵庫県多可町)の現地法人、上海植山貿易でも、スポーツ・アウトドア向けが生地内販全体の約2割を占める。一村産業(大阪市北区)の現地法人、一村〈上海〉貿易は地場スポーツブランド向けを内販の柱に据える。豊島の現地法人、豊島国際〈上海〉も地場スポーツブランド向けの生地販売や製品ODMを伸ばす。

 スポーツ向け素材の開発では、時間軸も異なる。瀧定の現地法人、瀧定紡織品〈上海〉の黒田剛臣総経理によると、シーズンごとに商品が変わるファッションに対し、スポーツブランドでは3年先を見据えた開発が求められる。目先の受注に応じるだけでなく、中長期の開発に予算や人員を振り向ける体制が必要だ。

 こうした中、一村〈上海〉貿易は26年1月、技術専門の駐在員を配置した。工場の染色加工現場で問題解決を支援し、企画からサンプル納品までの期間短縮を図る。豊島国際〈上海〉は、デザイン機能の強化に向け、正社員のパタンナーを採用した。複雑化するスポーツウエアなどの仕様に対応し、自社で精度の高いパターンを作成することで、協力工場への的確な指示と生産スピードの向上につなげる。

 価格競争への対応も課題となる。一村〈上海〉貿易は差別化素材の開発を強め、価格競争に備える。

 各社は次の成長に向けた布石も打つ。瀧定紡織品〈上海〉は、スポーツブランドの中長期的な開発需要を取り込むため、素材提案や開発対応を担う専門部隊の設置を構想する。モリリンの現地法人、上海茉莉林紡織品は新設したスポーツ・ユニフォーム向け生地販売を本格稼働させる方針だ。

 ファッション向けを基盤に、スポーツ・アウトドア向けをどこまで伸ばせるか。その成否は、顧客開拓だけでなく、日本の産地とのつながりを生かした素材開発と、現地の技術ニーズや納期に応える体制づくりにも左右される。

(上海支局、おわり)