特集スクールユニフォーム(3)/探訪 学生服の現場から/宝仙学園中学校・高等学校/生徒主導で多様性を体現
2026年10月22日 (木曜日)
2028年に創立100周年を迎える宝仙学園中学校・高等学校(東京都中野区)は、探究的な学びやグローバル教育に注力する。26年4月に中学校の新入生から順次新制服を導入。新制服の選定に当たっては、生徒が主体となって進行し、多様化する価値観を反映しながら、ジェンダーレスや選択の自由を重視したラインアップを実現した。
〈新たな価値観への対応〉
現在は共学の「理数インター」と「女子部」で構成され、近年は順天堂大学の系属校としての連携も強化している。グローバル社会で活躍できる人材育成を目指す同校が、制服のリニューアルを実施するかしないかを含めた検討に着手したのは21年のことだ。
これまで着用していた制服は導入から15年以上が経過しており、当時はブランド力やフォーマルさを重視した重厚な仕様だった。しかし、時代の移り変わりとともに、生徒や保護者から「重い」「動きづらい」といった機能面での不満が寄せられるようになった。さらに、社会全体でジェンダー平等や多様性の尊重が叫ばれる中、学校制服にも新しい価値観への対応が急務となっていた。
リニューアルプロジェクトのリーダーを務めた西村修平教諭は、周年事業などの学校経営の都合ではなく、実際の着用者である生徒たちの満足度を最優先に据えたと語る。「学校長からは『生徒、保護者が納得する形で提供できるのが一番だから、そこ(学校都合)は考えなくていい。より良いタイミングで作れれば』と言ってもらえた」。このトップの柔軟な理解が、類を見ないボトムアップ型の制服作りを実現させる原動力となり、結果として共学部20周年に重なる年度からの新制服導入となった。
〈生徒が主役のプロセス〉
プロジェクトは、22年6月に百貨店、制服専業メーカー、アパレル企業など計7社にコンペティションを打診したことから本格的に始動した。提示したテーマは、「全く新しい制服」「制服らしい制服」「性差にとらわれず選べる制服」の三つ。特筆すべきは、その後の選考過程である。同年10月には、生徒自身が校内に設置した各社の展示ブースを回り、直接意見を伝える「意見交換会」を開催した。大勢の生徒が自発的に参加し、メーカー側と活発な議論を交わしたという。
翌年の最終プレゼンを経て、パートナーに選ばれたのは東京菅公学生服だった。西村教諭は選定理由について「提示してもらった案を基に、生徒の意見を取り入れて一緒に作っていければというのがあった。どの企業の提案も魅力的だったが、最終的には『生徒と一緒に作ってくれるか』という点が決め手になった」と明かす。
決定後は、有志の生徒4人による「制服検討委員会」が発足した。約1年半にわたり、毎月綿密な打ち合わせを実施。シルエットや生地の質感に至るまで、メーカー担当者と生徒が納得できるまで議論を重ねた。
〈多様性を包摂する制服〉
完成した新制服は、生徒の声を反映した多彩なアイテムがそろう。ブレザーは男女別で、女子用は美しいプリンセスラインを採用。ボトムスはスラックスとスカートを用意し、女子生徒が自然にスラックスを選択できるようジェンダーレスにも配慮した。また、シャツやリボン、ネクタイはフォーマル用とカジュアルなオプション用を用意。さらに生徒からの強い要望により、体温調節がしやすく動きやすいスエットカーディガンもラインアップに加わった。
開発過程において、メーカー側の真摯(しんし)な対応も生徒たちの熱意に応えるものだった。例えば、生徒がデザインしたエンブレムのラフ案について、西村教諭は「デジタル画面だけで済んだものを、実際に作ったらどうなるというところまで持ってきてくれた。そこまで生徒の意見を大事にしてもらえた」と高く評価する。メーカーの誠実な姿勢が強固な信頼関係を構築したようだ。
制服業界においては、学校側の要求をいかに形にするかが問われてきたが、今後はユーザーにじかに寄り添う伴走型の提案力も鍵となってきそうだ。今回、生徒主体のリニューアルプロジェクトで完成した新制服は、自ら考え行動する同校の教育理念を体現する存在として、今後も生徒の多様な学校生活を支えていくことだろう。





