特集スクールユニフォーム(5)/学生服メーカー大手3社トップインタビュー/変化する市場環境へ対応
2026年10月22日 (木曜日)
大手学生服メーカーは、変化する市場環境への対応と次の成長に向けた事業基盤の強化を進めている。トンボはスポーツ事業の拡大、菅公学生服は生産体制の強靱(きょうじん)化、明石スクールユニフォームカンパニーは新本社を軸に基盤強化に取り組む。原材料価格や人件費などのコスト上昇への対応も課題となる中、各社の戦略が今後の市場を左右しそうだ。
〈トンボ 社長 藤原 竜也 氏/500億円へ成長戦略〉
――2026年6月期の総括をお願いします。
26年6月期連結決算は、売上高が前の期比2・1%増の471億6600万円でした。スポーツ部門などが伸長した一方、資材・副資材、人件費、物流費など製造原価の上昇が利益を圧迫し、営業・経常減益でした。
モデルチェンジ(MC)はスクール、スポーツ共に堅調で、約150校の採用をいただきました。詰め襟学生服からブレザーへの移行が一段落したため、件数としてはピーク時より減りましたが、メーカーごとの採用獲得比率は維持しています。
今期(27年6月期)は、製造と販売の一体化を進めるほか、全社員から新規事業のアイデアを募る「スタートアップ160」を立ち上げ、新規事業の骨格を決めます。通期売上高は、前期比6・0%増の500億円を計画しています。
――今期の重点施策は。
スクールでは、セレクトショップのシップスと協業した「シップススクールイヤーズ」の学校制服を拡大させます。シップスの得意とするトラッドな要素を取り入れつつ、伝統と現代のスタイルを融合したデザインに仕上げました。27年入学の生徒向けから販売を始め、5年で30校の採用を目指します。
スポーツは、市場のシェア率を高めながら、ライセンスブランドの「アンダーアーマー」「ヨネックス」でさまざまなニーズを取り込みます。自社ブランドの「ビクトリー」では、高機能素材「ピストレ」の豊富なラインアップに加え、学校ごとの特徴やロケーションをデザインに取り込むことができる昇華転写を強みに提案していきます。
昨今常態化する猛暑への対応も強化します。27年度から新素材「スケナイス」を使った体操着を販売します。高水準の防透性に加え、通気性や吸汗速乾など、暑さに対応するさまざまな機能を備えています。既に6万点の受注を獲得しており、高い評価を得ています。
――中東情勢の緊迫などを背景に、原材料が高騰しています。
素材や仕様の集約による生産性向上などの自助努力をこれまで以上に加速させますが、価格改定は避けられないと考えています。早ければ27年度、遅くとも28年度に値上げを実施します。
――11月5日の大阪会場を皮切りに、名古屋、東京、福岡で展示会を開催します。
今回は、「制服がつくる絆」を主題に、制服のある日常から生まれる四つの絆を紹介します。毎日何気なく袖を通す制服がはぐくむ、絆の大切さを伝えていけたらと思います。
〈菅公学生服 社長 尾﨑 茂 氏/納期厳守を堅持〉
――2026年7月期の総括をお願いします。
増収減益でした。原燃料や人件費、物流費などあらゆる製造コストが上昇し、利益を圧迫しました。
新型コロナウイルス禍後に供給網の混乱が発生し、納期遅延などの供給不安を解消するため在庫を積み増しました。直近3年間は納期遅延なく生産が順調に進んだため、前期は在庫削減を重点施策とし、22億円削減しました。これも利益を押し下げた要因の一つです。
モデルチェンジ(MC)の獲得数は、少子化などのさまざまな影響でMC自体が減少する傾向にありましたが、メーカーごとの獲得比率は前の期並みでした。
――今期の重点施策は。
価格改定を最重要課題と捉えています。中東情勢の緊迫を背景に、原燃料価格の高騰が続いています。原材料の仕入れ先からは、頻繁に値上げの要請がありますが、製品としての価格転嫁は進んでいません。直営の販売店を中心に27年度から、そのほかの販売先も28年度までに価格改定を実施します。
在庫の削減もさらに進める計画です。適正な在庫量へと調整する一方で、8月に竣工(しゅんこう)した米子新工場(鳥取県米子市)の本稼働に向けて、自動化機器の導入や生産性の向上を図り、納期厳守という至上命題を堅持します。
――米子新工場は、27年8月の本稼働を計画しています。
多様性への配慮などを背景に増加するブレザー需要に対応するため、ブレザーの生産ラインを新設しました。裁断パーツや縫製完了品の運搬に搬送ロボットを導入したほか、技術指導や意思疎通を円滑にするタブレット端末も活用し、品質と生産性の向上を目指すスマートファクトリーとして設計しています。
従来の米子工場は、裁断と生産準備工程を担い、裁断ラインを3ライン増設する計画です。7カ所の衛星工場を含めた裁断を一手に担う体制を整え、都城工場(宮崎県都城市)をはじめとした南九州地域の製造拠点と同様の機能を持つ拠点にします。災害時などの事業継続体制を強化する狙いがあります。
昨年完成した新しい生産本部棟「シラウメベース」(岡山県倉敷市)での小ロット、多品種生産の効率化や自動化機器の開発などの機能と連携して、強靭(きょうじん)な生産体制を構築します。
今後は、これらの強靭な生産体制を生かしてスクールユニフォーム以外の製品の製造にも対応できるようにしていきます。
〈明石スクールユニフォームカンパニー 社長 河合 秀文 氏/次の30年へ基盤強化〉
――今春の入学商戦、上半期(2026年1~6月)の結果はいかがでしたか。
計画通りの売上高で推移しましたが、中東情勢の緊迫などを背景とした仕入れコストの高騰で利益面では苦戦しています。通期(26年1~12月)は、売り上げ目標である345億円前後に着地すると見込んでいます。
モデルチェンジ(MC)は、新型コロナウイルス禍後の各社の価格改定の余波で増減ありましたが、スクール、スポーツともに順調に推移しました。中学校は今後、ピーク時のような件数のMCはないと見込んでいます。高校は、継続すると見込まれる私学を中心に案件の獲得を目指します。
近年、常態化している暑さに対応した商品として打ち出したポロシャツやニットシャツが業績伸長に貢献しました。
――価格改定の進捗(しんちょく)は。
今回の仕入れ先からの値上げ要請は、「来月から」といった即時の値上げを求めるものばかりですが、物価上昇が続く現状を踏まえると受けざるを得ません。一方で、製品としての価格転嫁は全く進んでいません。このため、28年度以降の値上げを計画しています。
ここ数年取り組む、素材と製品品番の集約による生産性向上をさらに突き詰めたいと思います。小ロット・多品種化は、消費者にとってもメリットはありません。丁寧に説明して理解を得られるようにしたい。
――下半期の重点施策は。
約30年ぶりに新しくなる本社が間もなく完成します。新本社に合わせて、新しい仕組みも取り入れて次の30年の試金石としたい。新本社の披露も兼ねて、内覧会を開きました。当社の将来に期待してもらえるような会にできたのではないでしょうか。
――防災用品やサングラスなど、スクールユニフォーム以外にも幅広い製品を展開しています。
災害用補助備蓄品は提供から約10年が経過しています。昨今頻発する災害を受けて、引き合いが増えています。水や食料、簡易トイレなどが封入された災害用補助備蓄品で、7年間保存できます。入学時に学生服と合わせて購入することで、学校生活の安全確保につなげられます。多忙な先生方にとっても手配の手間の軽減につながります。
学校生活を取り巻く環境は変化しています。今後も、メーカーとして全国に幅広いネットワークを持つ強みを生かして、学校生活を快適に過ごすための製品を提供することで、学校生活全体を支援していきたい。





