2026秋季総合特集(6)/Topインタビュー/TAフロンティア 社長 鎌田 進 氏/統合こそが“攻め”/商社のOSに事業を走らせる

2026年10月26日 (月曜日)

 1日付で帝人フロンティアと旭化成アドバンスが経営統合し、TAフロンティアが発足した。大手合繊メーカーの系列を超えた繊維事業中核会社の統合はこれまであまり例がないだけに注目度は高い。鎌田進社長は「今回の統合こそが〝攻め〟のためのもの。両社の素材とサプライチェーンが融合することで重点領域での成長を加速させる」と話す。商社のオペレーションシステム(OS)にメーカーとしての事業を走らせることで、さらなるシナジー発揮と成長を目指す。

  ――TAフロンティアとして新たなスタートを切りました。今取り組むべき〝攻め〟と〝守り〟は何でしょうか。

 今回の統合こそが〝攻め〟のためのものだと言えます。帝人フロンティアはポリエステル繊維が中心であり、旭化成アドバンスはナイロン繊維を得意とし、キュプラ繊維「ベンベルグ」のような独自素材もあります。こうした素材を複合することで、さらに付加価値の高い商品を開発できる可能性が高まりました。また、帝人フロンティアは中国に合繊織物製造の南通帝人、タイには合繊製造のテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)や合繊織物製造のタイ・ナムシリ・インターテックスなどがあり、インドネシアでもテキスタイルを委託生産するなどサプライチェーンを構築してきました。こうした基盤を生かしてスポーツ、モビリティー、インフラを重点領域としてきました。そこに旭化成アドバンスの建材事業なども加わることになり、期待できる領域が広がります。

  ――一方、〝守り〟の面では。

 中東情勢の悪化など地政学的な不確実性が高まっていますから、あまり特定の事業に偏重するのではなく、ある程度は分散した体制を作る必要があります。また、財務面では投下資本利益率(ROIC)を重視しなければなりません。まだまだ筋肉質な事業になる必要があるでしょう。薄利多売ではなく、収益性の質が重要になります。特にテキスタイルや糸は、定番品に関しては外部調達した方が、コスト競争力がある。そうなると自家工場は他社が作ることのできないものを作るしかないわけです。その点でも今回の統合は大きな意味があります。両社が一緒になることで独自のモノ作りができるからです。

  ――現在の事業の状況をどのように見ていますか。

 衣料繊維は、スポーツ・アウトドア用途を中心に北米や中国市場への販売が堅調です。ただ、欧州市場はまだ元気がないですね。日本での販売も比較的頑張っていますが、やはり得意とする重衣料の需要が弱い。夏の長期化など季節感が弱まっていることが背景にあります。夏物、冬物ともに需要期が変わってきました。

 産業資材はフィルターなど環境関連用途が堅調です。自動車関係は国内が安定しているのですが中国に元気がありません。欧州もあまりよくない。それでも人工皮革のような独自性の強い素材は安定しています。

  ――TAフロンティアとしての基本方針をお聞かせください。

 帝人フロンティアと旭化成アドバンスには事業や商材で重複している部分が多くありません。このため統合によって1+1はすぐに2になるでしょう。あとはいかにシナジーを発揮し、これを3にも4にしていくことが目標です。とはいえ、シナジーなどというのは簡単に発揮できるものではありません。やはり地道に時間をかけて統合の作業を進めていくことが重要になります。例えばNI帝人商事が帝人ファイバーのポリエステル繊維事業と統合して帝人フロンティアが発足したのは2012年でしたが、具体的なシナジーを発揮できるようになったのはここ2、3年のことです。実際はそれぐらい時間がかかるものですから、焦らずにじっくりと時間をかけて、社内でのコミュニケーションをとっていかなければなりません。

 そうした中で、ポリエステル繊維やポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」などを強みとする帝人フロンティアとナイロン繊維やキュプラ繊維を得意とする旭化成アドバンスを融合させていきます。また、旭化成アドバンスには化成品事業もありますから、帝人フロンティアの産業資材事業とのシナジーも期待できます。

  ――スポーツ、モビリティー、インフラを重点領域としているとのことですが。

 スポーツ・アウトドア分野は、グローバルアパレル・ブランドだけでなく新興・個性派アパレル・ブランドとの取り組みも重視します。独自性の高い商材を提案することが基本となります。また、生産と販売の両面で中国の役割も一段と重要になりました。中国市場でのテキスタイル・製品の生産と販売を拡大します。

 モビリティーは、ゴム資材が安定していることが強みです。さらに今年2月に東洋紡から中国のエアバッグ用基布製造会社を譲り受けました。現地自動車メーカーへの供給を得意としているのが強みです。旭化成アドバンスのエアバッグ関連事業との連携も視野に入れています。カーシート関連はマーケットの変化が激しいですから、それにうまく対応していくことが重要になります。

  ――TAフロンティアが目指す姿は。

 まずは、今の取引先や産地のパートナーから信頼され続ける企業にならなければなりません。その意味でも今回の統合は両社ともに良いパートナーと一緒になれたと考えています。商社でありながらメーカー機能を持つ両社が統合したわけですが、当社はやはり商社のOSにメーカーとしての事業を走らせることが基本。この仕組みは今後も継続します。そのためにも従業員は商社とメーカー両方の考え方を併せ持つことが大切になります。

〈私の今年のベストバイ/人前で話すときの必需品〉

 「最近、老眼が進んで手元の文字が読みにくくなって」という鎌田さん。社長になってからは人前で話をする機会も増え、手元のメモを見るのにメガネを外したり掛けたりするのが面倒だった。「そこで今年買ったのが、このメガネ。レンズの上半分が度なし、下半分が老眼用度入りになっている」。これなら目線を変えるだけで手元のメモもよく見える。「人前で話すときの必需品ですよ」。いつもクールに人前で話をする鎌田さんだが、実は細やかな準備をしている。

【略歴】

 かまた・すすむ 1989年帝人商事入社。帝人フロンティア工繊・車輌資材本部副本部長などを経て2020年執行役員テイジンフロンティア〈タイランド〉社長、21年執行役員産業資材部門長、22年常務執行役員産業資材部門長、24年取締役兼常務執行役員産業資材部門長、26年4月から代表取締役兼社長執行役員、10月からTAフロンティア代表取締役兼社長執行役員