秋季総合特集Ⅱ(3)/Topインタビュー/シキボウ 社長 鈴木 睦人 氏/成長分野に積極投資/繊維は素材バリエーション拡大
2026年10月27日 (火曜日)
シキボウは、旧ユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業を継承するなど積極的な事業展開を進めている。鈴木睦人社長は「現中期経営計画で取り組む『稼ぐ力の向上』と『新中核事業の成長・拡大』が、それぞれ〝攻め〟と〝守り〟に当たる」と話す。成長領域への積極投資を進める考えだ。繊維事業も旧UTCの素材がラインアップに加わったことを生かし、用途・アイテムの拡充や海外販売の拡大に取り組む。
――繊維産業における〝攻め〟と〝守り〟についてどのように考えますか。
当社は2025年度(26年3月期)から3カ年の中期経営計画を実行しており、そこで「繊維で培った技術・経営資源をもとに、新たな価値を創造し更なる成長を実現する」を目標として掲げています。その実現のための基本方針として「稼ぐ力の向上」「新中核事業の育成・拡大」「経営基盤の強化」「サステナビリティ経営への取組み」を掲げているのですが、まさに「稼ぐ力の向上」「新中核事業の成長・拡大」が〝攻め〟、「経営基盤の強化」「サステナビリティ経営への取組み」が〝守り〟に当てはまります。
稼ぐ力の向上や新中核事業の育成・拡大のために、成長領域への積極的な投資を進めてきました。その上で既存事業は海外販売の拡大と新規取引先の開拓が重要になります。繊維部門で旧UTCの衣料繊維事業を引き継いだのもその一つです。また、機能材料部門でも食品・化成品事業で食品増粘剤・工業用糊剤製造販売子会社のシキボウ堺(大阪府堺市)で25年に新工場を立ち上げ、今年から販売を拡大しています。同じく機能材料部門の複合材料事業も尾道事業所(広島県尾道市)と長野事業所(長野県箕輪町)への投資を続け、航空機の機体部材やエンジン部材の販売を拡大しています。現中計では3年間で合計67億円の投資を計画しています。
一方、〝守り〟として不採算・低採算事業の整理・改善を進めています。例えば石材加工機械製造販売子会社の大和機械製作所(広島県尾道市)を27年4月で清算します。また、シキボウ堺も27年4月に吸収合併します。こちらはシキボウの食品・化成品事業として一体運営することで新工場を含む経営資源を効率的かつ最大限に活用することが狙いです。
そのほか、国内外の生産拠点の連携や(デジタル技術で企業を変革する)DXへの投資も進め、効率的な企業運営を実現しなければなりません。省エネルギーや再生可能エネルギーの活用、環境配慮型素材の拡大も重要になります。例えば現在、長野事業所、尾道事業所、シキボウ堺、織布・編み立て・染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)で太陽光発電を導入しています。こうした取り組みは他の事業所や子会社にも広げていく考えです。また、人材基盤の強化も欠かせません。
――26年度上半期(4~9月)も終わりました。
繊維部門は旧UTCの衣料繊維事業が加わったことから、4月から組織も再編して統合を進めました。旧UTCの合繊長繊維など当社がこれまであまり扱っていなかった素材が加わったことで商品バリエーションが広がり、収益向上につながっています。ただ、中東情勢悪化の影響で中東民族衣装用織物の輸出は打撃を受けました。流通経路の工夫などで最悪の状況は避けることができたのですが、まだまだ先行き不透明な状況が続いています。
ユニフォームや寝装は、やや調整局面でしたが、これから回復が期待できるでしょう。原燃料高騰を受けて価格改定も進めました。海外拠点は旧UTCとのシナジーが表れています。特にベトナム子会社のシキボウベトナムの販売が拡大しました。インドネシアの紡織加工子会社であるメルテックスも旧UTCから引き継いだ複重層構造紡績糸「パルパー」の生産が始まっています。
産業資材部門は、主力の製紙用カンバス・ドライヤークロスの国内需要低迷が続いているので、輸出や需要が堅調な段ボール紙向けに力を入れています。また、フィルターも悪くありません。機能材料部門は、食品・化成品事業の収益が拡大しました。シキボウ堺の新工場稼働が寄与しています。ただ、コストアップが課題となっています。複合材料事業は長野事業所で生産する航空機エンジン部材の新商品の供給が始まります。不動産・サービス部門は、賃貸事業が安定しています。リネンサプライ事業は、昨年度は万博もあって好調だったため今年度は反動を心配していたのですが、今のところ売り上げは堅調です。ただ、エネルギーコスト上昇によるコストアップが課題です。
――下半期(26年10月~27年3月)に向けた課題や戦略について。
繊維部門は、中東民族衣装用織物の輸出がどこまで回復するかがポイントです。ユニフォームは織・編み技術の工夫で商品力を高め、販売を拡大するのが基本戦略となります。既にパルパーと校倉(あぜくら)造り構造の高通気生地「アゼック」を組み合わせた開発などが進んでいます。また、メルテックスはこれまで前紡工程の設備更新を進めてきましたが、今後は精紡工程の設備更新にも着手します。
産業資材部門は、国内でのシェアをさらに高める。その上で子会社の東洋空気調和(東京都新宿区)を含めてフィルター事業を強化します。機能材料部門は食品・化成品事業で新工場を活用した販売拡大を進め、複合材料事業は生産性向上による増産と重工メーカーとの連携による新規開発に取り組みます。不動産・サービス部門のリネンサプライ事業は、壮年者のための国際スポーツ大会「ワールドマスターズゲーム」が来年5月に関西で開催されますので、その波及効果に期待しています。
〈私の今年のベストバイ/タイ料理まで一人で作る〉
学生時代からの自炊派の鈴木さん。現在も台所に立つことが多い。「そこで最近、マルチポットを買いました」。1台で煮る、茹でる、炊く、炒める、揚げる、和えるなど多用途に使える多機能調理ポットだ。「特に米を炊くと土鍋と同等の炊き上がりとなり、非常においしい」とイチ押し。応用編として、マルチポット1台でタイ赴任時代にレシピをマスターしたカオマンガイ(タイの鶏肉炊き込みご飯)まで作ってしまう。機能フル活用でますます料理の腕に磨きがかかる。
【略歴】
すずき・よしひと 1988年シキボウ入社、メルテックス社長、タイシキボウ社長、繊維部門開発技術部長兼グローバル事業推進室長などを経て19年執行役員繊維部門開発技術部長兼営業第一部長兼富山工場長、20年同繊維部門開発技術部長兼シキボウ江南社長、21年同機能材料部門複合材料部長、24年同コーポレート部門副部門長〈経営戦略・中期経営計画担当〉、25年6月から代表取締役社長執行役員





