秋季総合特集Ⅱ(6)/Topインタビュー/大和紡績 副社長 中村 信治 氏/3事業連携で競争力強化/新素材・新加工も一段と重要に

2026年10月27日 (火曜日)

 「大和紡績として独立したことで、明確に〝繊維一本〟でやる体制になっている。グループとしての力を強化するためにも、現在の3事業の連携を進める」――大和紡績の中村信治副社長は強調する。合繊、産業資材、製品・テキスタイルの各事業がそれぞれ得意とする素材、用途、アイテムを組み合わせることで、新たな需要の創出などに取り組む戦略だ。新素材・新加工の重要性も一段と高まった。これらは「〝守り〟であると同時に〝攻め〟でもある」と強調する。

  ――繊維産業にとって〝攻め〟と〝守り〟をどのように考えていますか。

 当社は2024年にダイワボウホールディングスから独立したことで、明確に〝繊維一本でやっていく〟という体制になっています。そこで〝攻める〟ためには、現在の合繊、産業資材、製品・テキスタイルという3事業の連携をさらに強めることでグループとしての競争力を高める必要があります。

 例えば製造会社として見れば、合繊事業のポリプロピレン(PP)繊維や、ダイワボウレーヨンが製造するレーヨンが生産品の軸となります。そこに外部から調達しているポリエステル繊維や綿をどうやって組み合わせて機能などを実現するか。そういった〝ファイバー戦略〟をこれまでも推進してきました。

 素材や用途、領域を縦軸、横軸、さらには斜め軸で組み合わせ、〝攻め〟を組み立てていかなければなりません。例えば合繊事業の素材を産業資材事業や製品・テキスタイル事業で応用するといったことです。既に合繊事業の素材を産業資材事業の建材用途で活用するといった取り組みがあります。

 こうした取り組みは、サステイナビリティーの領域でも重要なテーマとなります。レーヨンやPPはリサイクル性の高い素材ですから、それを生かした商品開発や用途開拓を視野に入れています。例えば子会社のカンボウプラス(大阪市中央区)はポリエステル繊維の基布に塩化ビニル(塩ビ)樹脂を加工したターポリンを扱っていますが、ポリエステルと塩ビの分離は非常に難しく、リサイクルの妨げとなっていました。そこで分離せずにリサイクルする技術などを開発しているのですが、それをさらに発展させ、リサイクル性に優れるPPをテント・膜材でも活用するといった構想もあります。

 産業資材事業のカートリッジフィルターでもリサイクルをどうするのか研究を進めており、そのための投資も実施してきました。そのほか、合繊事業には難燃・防炎レーヨンもあります。これを産業資材事業で活用できないか。こうした研究開発のために、播磨研究所(兵庫県播磨町)などで投資も進めています。

  ――〝守り〟に関しては。

 重要なのは調達でしょう。いかに安定的に原材料を確保できるか。それがなければ当社としての供給責任も果たせません。今回の中東情勢悪化によって、一段と明確になりました。原燃料の高騰だけでなく物流費や人件費も上昇していることから、当社も価格改定を進めましたが、やはり安定供給してきたからこそ、価格改定への理解も得られるのです。もちろん、既存商品の安定供給だけでなく、新素材・新加工による新たな提案も欠かせません。これは〝守り〟であると同時に〝攻め〟でもあります。

  ――2026年度上半期(4~9月)も終わりました。

 価格改定がどこまでできたかがポイントでした。できた事業は収益も順調に確保し、需要も継続しています。例えば産業資材事業はカートリッジフィルターやカンボウプラスの事業などで比較的価格改定が順調に進みました。一方、製品・テキスタイル事業の衣料・寝装分野などコンシューマー向けが多い事業は苦戦です。ただ、コンシューマー向けでも合繊事業のコスメ用途や熱中症対策の冷感シート用途などは好調です。

 産業資材事業は製紙用カンバスが需要の伸び悩みで厳しかった。合繊事業はレーヨンが苦戦です。製品・テキスタイル事業は現段階で計画に近いところまで来ています。

  ――26年度下半期(26年10月~27年3月)に向けた課題や戦略は。

 上半期は中東問題もあって需要家が供給不安を感じていた面があります。このため積極的な調達を進めたケースも少なくありません。このため流通在庫も増えている可能性があり、その影響で下半期は需要が少し落ちるかもしれません。そうした中で生産とのバランスをとることが必要です。また、カンボウプラスは、25年の大阪・関西万博の好影響もあって上半期まで好調だったのですが、その反動が下半期から出てくる可能性があるのが懸念材料です。

 サステ関連領域での事業拡大も今後の重点テーマです。リサイクルやリユースに関連する分野への参入を拡大する。これは製品・テキスタイル事業だけではなく産業資材事業などでも同様です。今後、産業資材の分野でもリサイクルやリユースに関連するニーズが確実に高まります。リサイクルや、その前提となる分別・回収ができる分野や市場との取り組みが重要になるでしょう。

 もう一つ、海外戦略も重要です。こちらも産業資材で成果が上がり始めました。例えばポリエチレンシートの補修などに使う防水・強力粘着テープ「チッパカ」が米国で売れています。補修よりもシートの補強材として使用されています。こういった海外のニーズに応える商材がまだまだあるはずです。例えば防草シートも国内で好調な販売が続いています。これを海外市場に出していくこともできるのではないでしょうか。

〈私の今年のベストバイ/子供に車を持っていかれる〉

 「子供に車を取られてしまって」という中村さん。ミニバンと軽自動車を所有していたが「娘に双子が生まれ、車が必要とミニバンを持っていかれた」。次に息子さんが結婚し、「運転の練習をすると軽自動車を持って行ってしまった」。家にあるのは奥さんの軽自動車1台だけに。これではゴルフにも行けないと、ディーラーに駆け込み、コンパクトミニバンの新古車を実車確認15分で契約。「4台とも名義は私なので、毎年どれかが車検になるので大変」と笑う。

【略歴】

 なかむら・しんじ 1984年カンボウプラス入社。2010年カンボウプラス取締役、12年カンボウプラス常務、17年カンボウプラス社長、25年大和紡績専務、26年10月から代表取締役副社長