秋季総合特集Ⅲ(7)/Topインタビュー/一村産業 社長 大嶋 秀樹 氏/物流改革、人材育成に全力/上半期は増収も減益に

2026年10月28日 (水曜日)

 生地商社兼北陸産元の一村産業(大阪市北区)の上半期(2026年4~9月)繊維事業は、前年同期比増収減益だった。ユニフォームと繊維資材が増収増益と気を吐いたが、中東情勢の影響で中東民族衣装向けを中心とするポリエステル短繊維事業が大幅減収減益と苦戦した。今後の展望を大嶋秀樹社長に聞いた。

  ――貴社が取り組む攻めの施策とは。

 国内外のサプライチェーンの再構築を進めています。これは攻めの施策と言えます。当社は独自の商品開発力を強みとしていますが、事業環境の変化が著しく、このままでいいとは決して思いません。商品、商流、事業そのものすら変えていく必要があります。東レグループの一員としてグループ連携したサプライチェーンを築く必要もあるでしょうし、やめるもの、伸ばしていくものを見極める必要もあります。事業環境が大きく変化するなか、選択と集中は喫緊の課題です。

 ユニフォーム分野では開発力と販売戦略が発揮できており、仕入れ先とコミットして動けるようになってきました。一体感が生まれています。大口の別注案件を獲得できたのも、これまでの仕込みや種まきが奏功した例です。今期からその刈り取りを本格化させていきます。

  ――他に攻めの戦略はありますか。

 「物流の武器化」に取り組んでいます。物流企画グループを今期から課に昇格させ、「戦う物流」をテーマに動きを強めています。具体的にはパレット化と拠点化の推進です。原反の巻きの状態ですと、コンテナから人力で出し入れする必要があり、労力がかかります。パレットの上に反物を置く形にすれば、フォークリフトで容易に移動ができる。これを日本と海外で推進しています。

 拠点化とは、「顧客に近い港を使う」という意味です。当社は海外でも生地を作っていますが、その生地は日本のさまざまな港に届きます。港の選択肢をもっと広げ、輸送コストや納期などを最適化する取り組みです。新たな港を使うと県から補助金が出るケースもありますし、もっと積極化していきます。

 人材育成も将来を見据えた攻めの施策の一つです。入社半年から30代前半までの社員のスキルアップのために社内外のしかるべき人に講師になってもらい、基礎知識を身に着ける取り組みです。講義のあとにはテストも行い、卒業証書も渡します。第5期が終了し、10月から第6期が始まります。また入社4年目以上の社員に対しては、一年かけて研究したテーマを発表させる取り組みも続けています。

 若手研修制度の充実も図っています。これまでは東レのテキスタイル開発センターで研修していましたが、より実地がいいと判断し、TSD(東麗酒伊織染〈南通〉)での研修に切り替えました。現地の語学学校で3カ月、TSDで一年間というカリキュラムです。最先端の工場を現場で見ることで、若手社員は大きく成長します。北陸の織布工場や染工場での研修も予定しています。

 採用面では、各部署から希望人数だけ聞いていたのを、「どんな人材が必要か」を聞く形に切り替えました。より精度の高い採用を目指します。

  ――守りの施策とは。

 基幹システムの更新ですね。何度か失敗したのですが、本当の効率化に向けて、プロジェクトを組んで取り組んでいます。

 住宅資材事業で先行して導入した業務管理システムを、繊維事業にも導入する予定です。いまだに手書き入力も存在する中で、AIも駆使してマニュアルを作り、効率化を図ります。まだ精査中ですが、相当なマニュアルが組み上がる予定です。新たな営業支援システムも作成中ですし、苦情システムも刷新していきます。

  ――上半期を振り返ってください。

 繊維事業は前年同期比増収減益でした。ユニフォームと繊維資材が増収増益と奮闘しましたが、ポリエステル短繊維事業が中東情勢悪化の影響を大きく受けて大幅減収減益となりました。

 今後はAI(人工知能)活用にも力を入れつつ事業再構築を進め、反転を目指します。

〈私の今年のベストバイ/思考回路が変わる一冊〉

 「『貢献的EQマネジメント』(関野吉記著)という本がベストバイ」と話す大嶋さん。多読派で普段からさまざまな本を読むが、「1600円で購入したが、200万円の価値がある」とこの本を絶賛する。人は知らぬ間に自らにブレーキをかけがち。しかもブレーキをかけたのが自分だと本人は気付いていない……など人間心理の探求が主題。「思考回路がガラッと変わるよ」と絶賛が止まらない大嶋さんは、社内の人材育成にもこのエッセンスを活用していく。

【略歴】

 おおしま・ひでき 1983年一村産業入社。2012年取締役産業資材事業部門長兼優水化成工業取締役、18年常務、22年専務を経て、23年6月から社長