秋季総合特集Ⅳ(4)/Topインタビュー/スタイレム 社長 瀧 隆太 氏/挑戦が新しい何かを生む/日本のサプライチェーン守る

2026年10月29日 (木曜日)

 スタイレム(大阪市浪速区)は時代の変化に対応することで今日まで長い時間、事業を存続、発展させてきた。国内生地販売が厳しいなら海外向けで、生地全般が厳しいなら製品で、といった具合だ。近年も、雑貨製品の売り上げを伸ばしたり、Jリーグチームのスポンサーになったりと、次代への種まきに余念がない。瀧隆太社長に現況と展望を聞いた。

  ――貴社にとって攻めの施策とは。

 今年5月、Jリーグの東京フットボールクラブ(東京都調布市、FC東京)とオフィシャルパートナー契約を結びました。ホームゲームではピッチの看板に当社のロゴも出ます。スポーツ分野の開拓につなげていければと考えています。サッカー以外の競技も研究・検討しています。繊維製品に限らず、チームのグッズ製作にも関わって、ここでも売り上げを作っていきたい。既存事業にはない新しい何かを見つけることができればと考えています。

 海外市場向けの拡大も攻めの施策の一つです。ここ数年の間に地政学的にも、監査・審査の強化という意味でも海外情勢は大きく変化しています。その流れに柔軟に対応しつつ、さらなる拡大を志向していきます。それには人材の育成・成長が必須。10カ所を超える海外拠点それぞれで人材の充実を図っていきます。

  ――逆に、守りの施策とは。

 攻めるための守りと言えますが、日本のモノ作りのサプライチェーンの維持・進化です。ここがなくなってしまえば当社の事業にも多大な損害が生じます。日本の企業であるというアイデンティティーを持ち続けなければ世界に売っていくことはできませんし、そのためにはサプライチェーンを守り、進化させなくてはなりません。なぜスタイレムから買うのか。その理由が必要です。

 広げることよりも深めることを重視しつつ、持続可能なサプライチェーンを作り上げ、攻めに転じたい。それがうまくいけば、若い人も繊維業界にもっと入ってきてくれると思います。

  ――上半期(2026年2~7月)を振り返ってください。

 単体、連結ともに増収になりました。前期と同じく、製品事業が全般的に堅調です。主力の国内向け生地販売は、既存先からの発注は減る傾向なものの、新規分野や新規顧客の開拓は進んでいます。時代の変化に対応することで生き残ってきたのが当社の特徴。その点では一定の奮闘はできているとみています。

 元々の原燃料高に、イラン情勢や円安が加わり、コスト高が著しいですよね。しかしファッション製品の店頭価格は連動して上がっているのかといえばそうではない。食料品などは逆に、店頭価格をどんどん上げています。この違いは何なのか。はっきりと分析できているわけではありませんが、おそらく食料品は生死に関わるが、衣料品はそうではない。その違いなのでしょう。

  ――海外市場向けの進行状況は。

 伸びた所と伸ばせなかった所があります。中東民族衣装向けも思いのほか奮闘しています。北米向けは伸ばせましたが、中国は伸ばせませんでした。中国に関しては、厳しい環境下でも落とさずに奮闘している、とも言えます。欧州の景況悪化は気になりますね。

 日本が良いものを作っても、特に欧州では認証や監査が厳しすぎ、その要件を満たせないケースが頻発しています。監査が通らなければせっかく価値のあるものを作っても門前払いになってしまう。実態とは乖離(かいり)した無理難題を押し付けられている、という印象はありますし、改善に向けて声を上げていくことによって少しでも今の状況を是正していきたいと考えています。それと同時に、なんとか厳しい監査を通るようなモノ作りをサプライチェーン全体で実現し、食らいついていきたいとも考えています。日本は日本で独自のスタンダードを作り上げ、それを欧州に認めさせる。そうしたアプローチも今後必要になってくるでしょう。まずは声を上げることが大事だと思います。

  ――ユニフォーム分野への進出にも力を入れています。

 ファッションで培ってきた価値をユニフォームでも発揮することで、開拓を進めたいと考えています。

〈私の今年のベストバイ/聴く時間のないレコード〉

 「アナログレコードのジャケ(ット)買いは続けています」と瀧さん。24年4月の小欄の「最近のプチ贅沢は?」との問いに「ノンジャンルでのジャケ買い」と答えていた。大学、前職のソニーも影響して基本的にはデジタルなものに興味が向くが、「デジタルを追求していくとアナログに行き着く」のだそう。しかしゆっくり聴く時間はなかなか取れず、所有感だけを得る日々。そのジレンマも当時からずっと続いている。

【略歴】

 たき・りゅうた 1999年ソニー入社。2007年瀧定大阪入社。08年4月から瀧定大阪社長。18年4月から兼スタイレム会長。瀧定大阪とスタイレムの吸収合併・社名変更に伴い21年2月からスタイレム瀧定大阪(現スタイレム)社長