秋季総合特集Ⅳ(9)/Topインタビュー/コスモテキスタイル 社長 岡田 泰紀 氏/温かみのある開発・提案力/備蓄機能で難局乗り切る
2026年10月29日 (木曜日)
切り売り・資材向けとアパレル向けという2種の生地を開発・販売するコスモテキスタイル(大阪市中央区)の上半期(2026年4~9月)売上高は、前年同期比横ばいだった。厳しい情勢の中、健闘したと言える。海外向け生地販売が好調を続け、両部門が融合した開発・提案も進展してきた。岡田泰紀社長に現況と展望を聞いた。
――貴社にとって攻めの施策とは。
開発力を磨くことです。アパレル向けでは天然繊維ならではの陰影あるシワ感や、独特の落ち感、ビンテージ加工など、スペックシートの数値では測ることのできない「肌触りの心地よさや質感」を極限まで追求し、切り売り・資材向けでは当社の優秀なデザイナーたちが生み出すチャーミングな絵柄を日々創造しています。商談の場で「こだわりの生地を作りました。まずは触ってみてください」「この柄とデザインをじっくりと見てください」とお渡しするだけでも会話が弾むような、人間の直感に訴えかける生地の企画・提案を続けており、今後も続けていきます。
一方で、切り売り・資材向けとアパレル向けという既成の垣根を取り払う努力も続けています。プロのデザイナーが切り売り・資材向けのプリント生地のユニークさに目を輝かせ、個人のクリエイターが本格的な先染め生地で素晴らしい作品を生み出す時代です。国内外の展示会やSNSを通じ、生地を愛する全ての人への境界のない使い方を提案しています。
このほど出展した総合素材展「東京テキスタイルスコープ」(TTS)でも「ファブリック フォー ライフスタイル」をコンセプトに、洋服のためだけではない新たな生地用途を日常の中にある製品とともに新しい提案手法・空間演出を試み、手応えを得ることができました。
――近年は海外市場開拓にも積極的です。
8月の韓国「プレビューインソウル」、10回連続出展となった9月の中国「インターテキスタイル上海」などを通じて実感したのは、国境を越えても「良いテキスタイルで人を喜ばせたい」という情熱は共通だということです。欧米の展示会への継続出展も含め、現地のクリエイターやバイヤーと直接顔を合わせ、オープンで温かみのある商流を広げていきたいと考えています。
――守りの施策は何でしょうか。
売れ筋を絶やさず、寝かせすぎず、を徹底するため、出荷データなどの精緻な分析による定番素材の安定備蓄と、余剰リスクを抑えたトレンド素材の流動的な在庫コントロールを両立させ、筋肉質な運用を進めています。
激動の時代だからこそ、国内の産地企業や染工場との対話を何よりも大切にしています。「コスモさんのこだわりの企画商品だからひと肌脱ぐよ」と言ってもらえるような、温かくも揺るぎない信頼関係こそが、当社の最大の守備力にして、競争力の源泉です。
――上半期(26年4~9月)はいかがでしたか。
切り売り・資材向け、アパレル向けともに前年同期並みに推移し、横ばいでした。国内向けは減りましたが、輸出は増えました。
事業環境は厳しくなっていると思います。気候の不順や原材料・エネルギー費の高騰など、取り巻く環境は予断を許しません。しかし当社が培ってきた天然繊維と特徴のある合繊を中心とするストックオペレーションは、「小ロット・即納・リスク分散」を求める取引先から改めて強い期待をいただく機会が増えています。切り売り・資材とアパレルの両輪で生地を適時準備してきた良さが、不確実な時代の確かな安心感として機能しているのだと思います。
――今後の課題・方針は。
海外展や海外取引先を回る中で確信したことがあります。何かと「分断」が取りざたされる時代ですが、原料から紡績、織り・編み、染色、縫製、そして店頭や手芸ファンの手元まで、私たちの業界は世界中が一本の「糸」で手をつないでいるということです。「繊維は世界で最も平和を体現する産業だ」という誇りと確信を持ち、周囲を巻き込みながら、明るく、楽しく、夢を持って前へ進む提案型コンバーターを目指します。
〈私の今年のベストバイ/「仲間」との楽器演奏〉
「モノで上げるのは難しい。コトで許して」と岡田さんが上げたのは、「時間と経験への投資」として初めて参加した、プロアマ混合の音楽合宿だ。全国各地から集まった初見の人ばかり二十数人と、会場を貸し切って練習した。岡田さんの楽器はバイオリン。職業も性別も年齢もさまざまな人たちと、朝から晩まで十数曲を奏でた。「そこで得られた一体感は素晴らしく、どこか生地作りにも通じるものがあった」という岡田さんは、リフレッシュして帰路についた。
【略歴】
おかだ・やすき 1981年三井物産入社。89年モスクワ支店次長、97年繊維部製品室長、2000年青島事務所長(兼)有限公司総経理、08年コンシューマーサービス本部西日本CS事業部長、09年関西業務部長、12年関西支社副支社長を経て16年に給食委託企業、メフォス専務、18年同社社長。22年6月退任、同年7月からコスモテキスタイル社長





