誕生物語~モノの裏に人あり/シキボウ「アゼック」(上)

2002年07月25日 (木曜日)

“校倉造り”をイメージ

 シキボウの商品開発スタンスは、ヒット商品群の中でも独自の開発技術を提案することにある。涼感快適シャツブームにおける「アゼック」も、そうしたスタンスが生んだものだ。

 「アゼック」の開発は98年。すでに蒸し暑い日本の夏に対応した快適シャツとして、軽量・吸水速乾素材「アキューゼ」を上市していた。さらに、快適性を高めるための開発ミーティングが開かれた。

 「涼しいというのは、通気性。これを高めるには、目を粗くすればいい。しかし、ドレスシャツは透けることを嫌う」。シキボウの清原幹夫衣料第一事業部長は、通気性が良く、かつ透けないドレスシャツをテーマにしていた。

 会議では「通気性がよくて透けて見えないと言えば校倉造りではないか」というアイデアが出た。正倉院に代表される古代倉庫建築のイメージである。校倉造りのドレスシャツ…。イメージは浮かんでも、その具現化が難しかった。

 試行錯誤の中から凹凸をつけて空気を逃がす。「凹凸は太い糸と細い糸で表現する」というコンセプトが作り上げられた。通常、織物は経緯が同じ糸で同じ番手。染め分けのために違う糸を使うこともあるが、番手はそろえる。織りやすさのためである。

 「アゼック」第1号は、経糸が太番の綿100%と細番のポリエステル綿混糸。緯糸は太番のポリエステル100%と細番のポリエステル綿混糸である。この混率、番手の違う糸を最適配置することで、織り組織の間の通気性を向上させた。通常のブロードの通気性が29・4CC/平方センチ/秒に対し、「アゼック」は98・9CC/平方センチ/秒を達成した。

 また、ポリエステルには東レの「アルフィックス」を使用。これは太陽光反射クーリング効果の高い特殊セラミックスを練り込んだもの。UV(紫外線)ケア効果と透け防止効果を発揮する。「イメージで作った第1号だが、通気性、クーリング、着心地をポイントに実験すると高い評価を得られた」。

 当初、満を持して99年4月に発表する予定であったが、ライバル会社が涼感快適シャツを打ち出した。このため、商品発表は1月に早める。「3社三つどもえとなったが、シャツ業界は新しい目玉を欲しがっていた。形態安定加工シャツのようなムード」が市場に生まれた。これをいかに生かすか。清原事業部長は次に販売戦略を練った。