ニュースを読む/東レのフッ素繊維買収
2002年08月19日 (月曜日)
繊維の救世主となるか/「テファイヤー」の処遇は?
東レが先ごろ買収した米デュポンのフッ素繊維。同社にとっては昨年の米AFY(アメリカン・ファイバーズ&ヤーズ)のPPS繊維の営業権取得に次ぐ高機能繊維の買収になる。帝人の繊維事業の稼ぎ頭であるパラ系アラミド繊維「トワロン」も蘭アコーディスグループからの買収だが、果たして「テフロン」買収は収益力低下が著しい東レ繊維事業の救世主になるか。
東レは7月26日、デュポンと契約を結ぶとともに米新会社「トーレ・フロロファイバーズ(アメリカ)(TFA)」を設立、9月末をめどに生産設備や営業権を譲り受けると言う。
新会社の資本金は1500万米ドルで、社長には三輪輝之男氏が就任した。当面はデュポンに生産を委託するが、2年後には米アラバマ州にあるPAN系炭素繊維製販子会社「トーレ・カーボン・ファイバーズ・アメリカ」の隣接地に新工場を建設。設備を移設して製販一貫体制を確立すると言う。03年の売り上げ目標は約3000万米ドル。
同社は4月に経営改革プログラム「NT21」を発表、「環境・安全・アメニティー」を成長3領域に定め、経営資源を重点的に拝聞する考えを明らかにしている。
今回のフッ素繊維買収もその一環。フッ素繊維は耐熱・耐薬品性、低摩擦特性、耐久性などに優れる高機能繊維で、デュポンではフッ素繊維を「テフロン」、ガラス繊維と混綿した焼却炉用バグフィルターを「テファイヤー」の商標で日欧米に展開してきた。
実は東レも子会社の東レ・ファインケミカルで「トヨフロン」のブランドで生産販売していたが、国産では唯一のメーカーであったが、「テフロン」に比べるとその規模は小さかった。
デュポンからのフッ素繊維買収に伴い、東レでは8月1日付で産業資材・機能素材事業部門に、機能素材事業室を新設し、PPS繊維を含めた高機能繊維の販売部門を一本化。「トヨフロン」の営業業務も9月から同室に移管することを決めている。
販売体制も整え、高機能繊維の拡大を狙う同社だが、「テファイヤー」に関してはニードルパンチ不織布大手のフジコー(兵庫県伊丹市)が95年に米デュポンと提携し、日本、アジアにおける「テファイヤー」の独占製造販売権を取得している。
東レのフッ素繊維事業買収はフジコーにとって寝耳に水だっただけに、驚きを隠さないが、フジコーは東レ・ファインケミカルとも商いがあり、恐らく「テファイヤー」の日本、アジアにおける展開は収まるところに収まるのだろう。
とにかく、「テフロン」「テファイヤー」が帝人の「トワロン」のような救世主と言うには少し荷が重いかもしれないが、「テファイヤー」や「トヨフロン」、PPS繊維「トルコン」など豊富なフィルターバグ素材を持つことは環境問題が重視される中で強みになることは間違いない。