国産寝具市場/「説明」「納得」カギに

2002年08月30日 (金曜日)

 日本人全体の保有寝具は現在、約12億枚といわれる。寝具の市場規模は1兆円を超えるとされるが、ここ5~6年、縮小傾向。数量的には減ってはいないが安価な中国産の輸入品増加で単価の下落が著しくなっていることがその背景にある。毎年3000万~4000万枚ほどの寝具生産が続けられているため、供給過多による在庫処分などでさらに価格破壊が生じている。「寝具はやっぱり品質」と消費者が感じ始めたのもそうした供給過多の中での変化だ。売り出す側は品質や寝心地を優先させた、消費者が「納得する商品」企画に力を入れている。

訪・通販に脚光/中高級品商材 増える

 ユニチカテキスタイルが「消費者にも受け入れられてきた」という、同社では高級素材に位置付ける「舞鳳凰」の販売が順調だ。プリント生地で1メートル当たり1万3500円の高級商材で、240単を双糸にして「工芸品」に近い極細糸に仕上げた。差別化が明確なのがウケの要因で、国内でしか生産できない点も売り物。

 差別化品では「リヨセル」で本格展開にする。商品の多様化で、昨年の販売数量は約15万メートルと、当初目標に近い実績を上げた。「年間目標は20万メートルで、これからまだ伸びる商材」(芦田直彦・ホームテキスタイルG課長)とみる。高級商材の売り上げ比は約40%と高め傾向にある。

 清涼感を利用した加工の「キシリナール」や消臭繊維のデオメタフィを利用した「グリーンライフ」などの機能性商材を前面に押し出した寝具素材を展開中のダイワボウは、一方で高級商材を多く有する。中でも「セーラムスビンセレクト」のブランド名で発売している羽毛ふとん側地は最近の注目株。

 インド・セーラム産の超長繊維綿「スビン」を原料に、紡績と製織両技術の限界といわれる経糸245・緯糸300双級の精紡交撚極細糸使いのため、極めて薄く、軽いというのが特徴。同社の生活資材部では「最高級羽毛ふとん側地としてハイクオリティーなファブリックに自信がある」という。

 機能商材の「キシリナール」は月平均20反販売、「グリーンライフ」は従来の原料だけの展開から製品対応に力を入れる。

 専門側地問屋の動きも中級以上の側地に焦点が当てられている。日繊商事の「ノマディアン」がそれ。中国生機使用の国内プリント加工品で、綿花等級1級37ミリ以上の繊維長を持つ新疆綿を100%使っている。このため安定した品質としなやかな風合いなどに特徴がある。10月の展示会では光触媒活性素材の「サンタッチ」でさらに高付加価値をアピールする。

 今シーズンは「無地ライクなものが増加している」という丸ホームテキスタイルは、シリーズ物で「ハピネスクラブ」を打ち出している。今年の4月展ではロココ調やペズリー、和調などのクラシックな柄をそろえた。10月展には同シリーズに新しく「キッズ」対象品を追加する。中学生までが対象でやはり無地ベースになるという。

 コマテキスタイルの永田龍平社長は「輸入品に関係なく価格の正常化は大事な問題」と中・高級品展開以前の問題が業界にあると指摘する。現在、掛け・敷き両ふとんセットで上代5000円以下の商品が市場にあふれる。業者の採算線は最低2万円とされる。

 低価格品セットの多くは一般的には店売り中心。中・高級品は販売先の約半分が訪問販売によるものだ。専門業者によると昨年までは店舗、非店舗比率が半々だったものが、今年に入って非店舗が10ポイント増加しているという。消費者に納得してもらうためにはやはり「商品説明」が不可欠になってきた。