東レセハン/ポリプロSB増設/年4万5000トンに拡大

2002年09月06日 (金曜日)

 東レは韓国TSI(東レセハン)でポリプロピレンSB(スパンボンド不織布)の増設することを明らかにしたが、これに対し日本のポリプロピレンSBメーカー大手である三井化学(年産3万6000トン)、旭化成(同2万6000トン)は平静を装っているものの、TSIが日本への攻勢を強める可能性も高いだけに内心、穏やかとはいえない。

 「仕方ないでしょう」(三井化学、旭化成)と国産2社はTSI増設についてこう語る。

 アジアでの紙おむつの尿漏れギャザー、バックシートなどの需要増を見込んだTSIの増設内容は約50億円を投じて、年産1万3000トンの独ライフェンフォイザー社製SMMS(2層のメルトブロー不織布をSBで挟んだもの)設備を導入、ポリプロピレンSB生産能力を40%増の年4万5000トン(5ライン)に拡大するというもので、03年10月稼働を予定している。

 同社は今年6月、新設備と同じ仕様の4号機を改造、SBの溶融押出し、紡糸機を増やしてSMMSSとすることで、2000トン増の同1万5000トンに能力アップしたばかりだが、5号機も同じ増能力が可能なうえ、ポリプロピレン・ポリエチレン複合SBも生産できるという。

 TSIでは今回の増設によって、04年度、SB売上高を01年度比50%増の120億円まで引き上げる計画だが、問題は増設分の販売先。東レでは「アジア各国で紙おむつの普及率は上昇しており、2010年まで年率10成長が見込める」とし、同工場を拠点にした中国向け輸出の拡大も図る」とするが、目先、中国や韓国、タイですべてを賄えるとは思えない。

そうなれば紙おむつ先進国である日本に頼らざるを得ない。事実、この数年、韓国からの不織布輸入量は急増している。財務省通関統計によると、02年1~7月も前年比28・8%増の8972トンを記録。このうち、60%を占める長繊維不織布の大半がTSI製で、今回の増設で日本への攻勢に拍車がかかる可能性がある。

ライバルの胸の内は…

 これに対し、年末にTSIと同じ新鋭機(年産1万5000トン)をタイで立ち上げる三井化学では「現在でもTSIはコスト的に有利なポジションにあるが、日本の紙おむつ需要も大きな伸びは見込めない中、品質と顧客サービスでシェアは死守するとともに、国産品では差別化を進める」(樹脂加工品事業部・水津博衛生材グループリーダー)ことで対抗する構えを示す。

 一方、昨年夏からSMMS(年産1万3000トン)を立ち上げた旭化成は「ポリプロピレン樹脂の輸入関税引き下げることもあるし、工夫しながらコストダウンを図る一方、3社同じ設備ながら違いを出せるかどうかが決め手になる」(伴義和スパンボンド営業部長)と先発としての強みを生かしていくと言う。

 両社とも仮にTSIが日本に攻勢を強めたとしても「国内価格はすでに国際価格であり、これ以上極端に下がることはない」との見方を示すが、果たしてそう上手くいくかどうか。

 とにかく、ポリプロピレンSBで東レが主導権奪取に動き出したことは確かだろう。