ブームの様相/マイナスイオン素材(上)/03春夏、さらに投入拡大

2002年10月17日 (木曜日)

衣料品小売業界で今春夏商戦から表面化した “マイナスイオン・ブーム”が、来年春夏商戦でさらに拡大しそうだ。その発生をうたった衣料素材への発注量が、今春夏商戦向けよりも増えている。ブーム化の様と課題を追った。

 マイナスイオン・ブームの火付け役は、東芝が99年10月に発売したエアコン「プラズマイオン大清快」だ。そのヒットで発生したブームが、今年1月放映のフジテレビ系列の番組『発掘!あるある大事典』であおられ、今春夏商戦で衣料品業界へも飛び火した。小売業界は今も、売れ筋商品のキー・ワードとされる“癒し”を表現するための最適の売り文句として、マイナスイオンに注目している。

 マイナスイオンを発生する繊維や糸、生地は、こするなどの物理的刺激を受けると発生する受動型種と、自発的に常時出す自発型種に大別できる。前者の受動型種のほとんどは、生地への加工によってマイナスイオン発生性を付与したもの。富士紡の「イオンシャワー」、ユニチカテキスタイルの「リライフ」、カネボウ繊維の「イオーネ」、クラボウの「オーラム」など、多くの紡績会社が加工でそれを付与した生地を相次いで商品化した。

 「イオンシャワー」は、珪藻土を主成分とする微粉状セラミックスと、消臭・抗菌材を固着させた生地。今年の春夏商戦で、ドレス・シャツ、婦人下着として小売りされた。今秋冬からは、ふとんカバーや寝間着としても店頭にお目見えする。さらに来年春夏に向けては、婦人外衣の商品化も進行中だ。このような用途の広がりに伴って、「イオンシャワー」の投入量は拡大傾向にある。

 ユニチカテキスタイルの「リライフ」は、微粉状鉱石とフィトンチッドを固着させた生地。ユニチカ通商が、今秋冬向けから開始する同社初の自社商標女子制服にこれを採用した。ユニチカテキスタイルはまた、ロンシャンと組んで、来年春夏婦人服素材としての提案も進めている。

受動型種のほとんどは、生地への加工でマイナスイオン発生性を付与したものだと前述した。が、そうではないものも商品化されている。ダイワボウの「カルサー」や、オーミケンシの「紀州備長炭繊維」がそれだ。

「カルサー」は、受動型種ながらも、糸への加工でその特性を付与しているという点で異なる。天然繊維はすべて一定の水分を含んでいるが、それを鉱石を含む水に置き換える方式で作られている。この糸への需要も急速に拡大した。生産量は、昨年末以降、それまでの3倍の規模で推移している。糸で販売しているため、その投入先は下着、ボトム、パジャマ、ポロシャツ、シーツ市場など多彩だ。最近、タオル市場への投入も決まった。

オーミケンシの「紀州備長炭繊維」は、備長炭をレーヨン短繊維に練り込むことによってマイナスイオン発生性を付与したもの。これへの需要も急増しており、今年上半期の同練り込み繊維の平均月産量は、前年同期の3倍の10トン強に達した。